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21センチ目「犯人像を探れ」

 俺は雄治の一件について話し合うため、春菜とともに大学の学食に来ていた。


 意見を出し合うため、今回はクリアとゴンタにも人間態で参加してもらうことにした。

 そして、なぜかイリスも一緒にいる。


「植物のツタかぁ」


「物体に魂を宿したものがツクモだろ? でも、植物っていったら完全に生物なんだよなぁ」


「植物を操るスキル……? でも、そんなピンポイントなスキルなんてあるのかな」


「うーん、分からん!」


「イリスさんはなにか思い当たることありますか?」


 イリスはこちらをちらりと見ると、相変わらずの無表情で答える。


「ノーコメントです。天使が持ち主に対して必要以上に情報を与えることは、規則に反しますから」


「じゃあ、なんで来たんだよ!」


「ここの食堂のアイス、美味しいので」


「なんだよそれ……」


 澄まし顔でアイスを口に運ぶイリスに、俺はがっくりと肩を落とした。


 しかも問題は、敵の能力だけではない。犯人が一体どこの誰かということだ。

 このまま放っておけば、さらに被害が増えるばかりだ。それは自分たちだって例外ではない。


「何か犯人の手がかりになるようなものはないの?」


「一つだけ、ある」


 俺はリュックの中から真空パックに入った欠片を取り出した。


「これ、犯人が操るツタに生えてた葉っぱ。調べれば何か分かるかもしれないと思って、雄治からもらってきた」


「おお、なるほど。植物の種類が分かれば、地域や所有者が特定できるかも」


「なあ、知り合いに理系の友達とかいないか? 上手いこと調べてくれそうな感じの」


「いちおう聞いてみるね。でも、あんまり期待しないで」


「ありがとう」


 そのとき、クリアが恐る恐る手を挙げた。


「どうした、クリア? なにか思いついたのか?」


「植物って、全部生きてるの?」


「んっ……?」


 意味が分からずに聞き返した俺に、クリアは再び純粋な疑問をぶつける。


「生きてない植物って、ないの?」


「そりゃ、植物である時点でそいつは生きてるだろうな」


「枯れた植物っていう可能性はいちおうあるけど、一度生まれてから死んでるわけで、百パーセント生きてないとは言えないかも……?」


 俺たち二人に否定され、クリアは申し訳なさそうに首を垂れた。


「……ごめんねクウ、ハルナ。わたし、難しい話、あんまり分からなくて」


「大丈夫だぜ、クリア。オレも全然分かんないから」


 ゴンタはクリアの肩を抱き寄せながら、ケタケタと笑った。清々しいほどの割り切りの良さだ。


 だが確かに、分からないことを「分からない」と言えるのは、大切なことだ。常識を疑った先に、隠された真実が見えてくることもある。


 俺はクリアの質問を真正面から捉えてみた。

 本当に、生きていない植物というのは存在しないのか?


「植物ねぇ」


 ゴンタはテーブルの近くに置かれている背の高い観葉植物を手でいじりながら呟いた。


「ちょっとゴンタ、お行儀悪いよ」


「いいじゃんちょっとくらい。減るもんじゃなし」


「変にいじって、枯れたらどうするの。放しなさい」


「ちぇっ」


 ゴンタはぶーたれながら、手を放す。その衝撃で、観葉植物の葉がゆらゆらと揺れた。


 生きていない植物。減るもんじゃなし。枯れたらどうするの。


 そのとき、俺の脳裏に閃きが走った。


「あった」


「えっ?」


「あったんだよ、生きていない植物が! 行くぞ、クリア!」


「えっ、うん」


「ちょっと、空くん! どこに行くの!?」


 俺はリュックを担いで早足で歩き出した。

 向かった先は、大学のそばにあるショッピングモールだ。


「確か、この建物の中に……あった」


 俺はクリアを連れて、一階にある百円ショップに足を踏み入れた。

 目的の商品は、入口のすぐ近くに置かれていた。


「空くん! 歩くの早いって!」


 春菜は息を切らしながら追いついてきた。一方、ゴンタは(いぶか)しげに俺を見つめている。

 俺は手のひらを掲げて商品を指し示した。


「見てくれ。これがその『生きていない植物』だ」


「ウォールグリーン……?」


 店の壁にかけられているのは、小さな鉢に入った観葉植物だった。


「そう。一見すると植物に見えるけど、紛れもなく人工物だ」


「なるほど! これならツクモになってもおかしくない!」


「よくやったな、クリア。お手柄だ」


「ほんと!? やったぁ!」


 クリアは喜びのあまり、俺に抱きついてきた。気恥ずかしさに、俺の心拍数が少し上昇する。


「つまり、犯人は人工植物のツクモ、ってことか」


 ゴンタは腕を組みながら話をまとめた。俺はこくりとうなずく。

 犯人像に一歩近づけたことに、俺たちは大きな手応えを感じていた。

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