表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【短編】意外な結末

牛乳ミルク探偵は、手始めに牛乳をかける

作者: 丸井まご

※1000文字以下の短編企画『なろうラジオ大賞2』参加作品です。

選択キーワード:『牛乳』

「ご依頼を受けて参りました、牛乳ミルク探偵です」


 白いマフラーに、白衣の姿。


 玄関で出迎える依頼主の女性は、心なしか顔が引きつっている。


「どうぞ」

 部屋に案内し、コーヒーを振る舞う依頼主。


「苦いのは苦手でして。牛乳を頂けると嬉しいのですがね」

「わ、分かりました」


「お電話で伺った話から察するに、

 そちらは亡くなられたご主人の指輪でしょうか?」


 本棚に飾られた夫婦の写真。

 手前の真珠の指輪が光を放っている。


「この白い輝き。さぞ大切にされているのでしょうね」



「はい……どうぞ牛乳です」


凛々(りり)しい牛乳ですね。

 しかし、どこか不安げな味がする。それとも……あっ」


 カップを置こうとして倒してしまう。


「これは失礼しました。すぐに拭かなければ」

「いえ、お気になさらず」




「ところで──


 ()()()依頼主さんはどこへ?」



「な……何ですか突然?」


「最初に私を見て微妙な反応をしたのは、

 まぁ私の服装が問題だとして。

 お電話で牛乳が飲みたいと懇願したのに、

 コーヒーを出されたことも今は忘れましょう」


「……汗ですよ。


 人は極度な緊張状態にあると、冷や汗をかく。

 私は牛乳の味に敏感でしてね。


 不思議なことに、あなたが入れた牛乳は

 私を見てひどく緊張していたようだ」


「そ、それはあなたがインターホンを連打してきて驚いたからで──」


「牛乳に混じる異物を私は見逃さない。

 床にこぼされた牛乳も同様です。


 見えるんですよ、土足の跡が。

 私は欧米の住宅街に迷い込んでしまったのでしょうかねぇ?」


「くっ!」




 偽者の依頼主がチラリと本棚へ視線を向けると、突然。

『ボゥッ』という音とともに炎が上がり始めた。


 続いて、白い煙がモウモウと立ち込める。

 偽者が立っていた場所からだ。


(発火装置に煙玉……逃げるために準備していたのか。

 だが──)

「白い世界は、私にとってはオールクリアなのですよ」


 偽者めがけてマフラーを勢いよくしならせ、気絶させる。

 そして、すぐさま消火器で十分に消火した。



 探偵は縛られていた本物の依頼主を解放し、

「この偽者を警察に連行します」と一時の別れを告げた。


**

 安堵した依頼主が一休みしていると。

 唐突に、インターホンが鳴り響いた。


「ごきげんよう」

 コーヒー片手に黒いドレスで日傘を差した女性は、


「窃盗事件の犯人について、聞き込みをしておりますの」


 警察手帳を見せながら。




「牛乳ミルク探偵と名乗る


 男なんですけど」



 消火器の真っ白な粉末で覆われた本棚から、真珠の指輪が消えていた。

お読み下さりありがとうございました。

ラストの女性はコーヒーメイドお嬢様と呼ばれているそうです。


下部のほうに他の短編集のリンクを貼っておりますので、ご興味がありましたらぜひ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ