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第2話
「これ死んでいるのか?」
どこからか聞こえてきた声に奏の意識がわずかに戻る。
「死にかけているな……」
男の声のようだ。
奏は、急に聞こえた声の主がとても近くにいる気配に、身じろぎもできずに思考を巡らす。
(とうとう迎えがやってきたの?)
「……いや、迎えじゃない」
こんな一人暮らしの女の寝室に無断で忍びこんで、どうしようというのだろうか。
奏は急浮上した意識で色々な可能性を脳裏に浮かべる。
(強盗とか?)
「強盗のわけない」
(死にかけているから何でも盗めるのに。だったら、あとは変質──)
「おい、変質者ってなんだ!」
奏の思考を遮り、男が慌てたように大声を上げる。
襲うなら今が絶好のチャンスだ。もう死ぬのだから後腐れもないだろう。それとも死んでからがいいのだろうか。
「助けを呼んだのは、お前じゃないのか……」
相手をするのが疲れたとでも言いたげな声音だ。
奏は侵入者に助けを求めた覚えはない。ただ、いるかもわからない神様に縋った覚えはある。
「だから、俺が来た」
それが本当ならこの男は神様ということになる。にわかに信じがたいことである。