第16話
地震の被害状況が徐々に分かってきた。
騎士達と合流したフレイは城下を探索していたが、地震の規模に比べて被害が少ないことに安堵していた。
壁が崩れるなどの被害が少なからずあったが、人的被害は特になかったことは幸いだ。
(カナデは部屋でちゃんと大人しくしているんだろうな)
日も暮れはじめて、修繕は明日行うことで騎士達が解散すると、フレイは途端にカナデのことが気になりはじめた。
後ろ髪を引かれている様子でフレイを見送っていた。だから、どうしても部屋で大人しくしているイメージが持てない。
(……状況ぐらい教えてやるか)
正直疲れていたから明日でいいような気はしていたが、奏の事を考えると何となく落ち着かない。気にしているくらいならとフレイは奏の部屋を訪ねることに決める。
流石に女性の部屋と尋ねるのだからと、汗で湿った服を着替えていたせいで遅い時間になってしまった。
フレイは、訪問は短時間で済ませようと足早に奏の部屋へと向かっていた。部屋の前まできて人気のなさを不審に思う。
(護衛の一人もいないのか?)
奏は召喚された重要人物で護衛対象のはずだ。地震があったばかりで仕方がないとはいえ、不用心な奏の部屋にフレイは顔をしかめる。
「カナデ、いるか?」
「フレイ様? お待ちください」
扉越しに声をかけるとリゼットがすぐに答えた。奏はちゃんと部屋にいるようだ。
「フレイ! どうしたの?」
リゼットに続いて部屋の奥へ行くと、奏が出迎えてくれた。フレイの訪問の理由に思い当たらないようで不思議そうな顔をしている。
「被害状況を気にしていたみたいだから知らせに来たんだが、必要なかったか?」
「どうだったの!?」
「ああ、大した被害はなかった。多少は修繕が必要だが、それは明日行うから特に問題はないだろうな」
「本当! 良かった!」
ほっと安堵した奏の顔を見て、フレイは微笑んだ。わざわざ来た甲斐があった。