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第134話

 リントヴェルムのお陰で様々なことが明らかになっていく。

 ゼクスは次に感じた疑問をリントヴェルムに投げかけた。


「リントヴェルムがこの時代に目覚めたのは何故だ? ドラゴンの誕生を待っていた、というならそういう兆しを感じたからか?」

『大きな力を感じた。ドラゴンが誕生したわけではなかったようだ』


 奏はドキリとする。大きな力に心当たりがあった。というか犯人とグルだった。


「あ、それイソラだ」

「……神が言っていた余計なこととは、カナデを召喚にねじ込んで邪魔したことだ、と思っていた」

「いやぁ、それがねぇ。私に加護をつけたせいで刺激しちゃったんだって。イソラって過保護だから!」


 奏は頭を掻きながら能天気に暴露した。

 なんとなくゼクスを怒らせそうで怖かったため、言い出すことを渋っていた。

 故意に黙っていたことは誤魔化せただろうか。


「隠し事が上手いな、カナデ」

「それほどでも」


 ゼクスにガッと頭を掴まれた。ギリギリと絞められる。

 ゼクスの怒りのお仕置きは、何度も体験したいものではない。


「次は容赦しないと忠告したはずだが、この頭は中身がつまっていないらしい」

「い! い、いたたたたた、だあぁぁぁ! 離してぇ! 許してぇ!」


 頭を掴まれたままシェイクされた。そして、突き飛ばされる。


「別の仕置きを考えておく。覚悟しておけ」

「うううううっ……」


 痛みに悶えているとリントヴェルムが心配そうに言う。


『カナデは弱いのだから少し手加減を』

「異世界には『愛のムチ』という言葉がある。カナデに必要なことだ」

『そ、そうか。死なぬならよいが……』


 ゼクスは「愛のムチ」の使い方を間違っている。

 ゼクスから愛のない冷たい視線を浴びせられて、奏は打ちひしがれた。


「カナデはそこで反省していろ。リントヴェルムもこんなのを花嫁にしなくて良かっただろう」

『そこまで言わなくても。カナデは可愛いではないか』

「……シェリルに見惚れていたくせに」


 奏はボソッと言った。リントヴェルムが慌てる。


『た、たしかに美人ではあったが、私はカナデが欲しかった!』

「シェリルが駄目だから、私で手を打ったんじゃないの……」


 結局は二番手扱いだ。奏はいじけた。


『違う! カナデが弱いから、死なせてしまうのではないかと遠慮しただけだ!』

「二人も花嫁にするとか、イヤらしい……」


 あっちもこっちもが許されるなんて思わないで欲しいものだ。


『それはカナデに子供を生ませるのは無理だと判断してだな』


 リントヴェルムが焦りながら言い訳をする。


「……そこまでにしろ。リントヴェルムもカナデにいちいち付き合う必要はない。遊ばれているだけだ」


ゼクスが奏の底意地の悪さを咎めた。


『……』


 リントヴェルムが黙った。まさか、からかわれただけとは思わず絶句している。


「カナデが反省していないことはわかった」

「王様が酷いこというからでしょ!」

「事実をいったまでだ。スリーの苦労がしのばれるな」


 ゼクスが遠くで騎士達と話し込んでいるスリーを哀れみのこもった目で見た。


「……話を戻す。リントヴェルムの覚醒時期は決まっていなかったんだな?」


 咳払いをしたゼクスが話しを再開する。

 絶句して固まっていたリントヴェルムがパチリと目をしばたたく。落ち着きを取り戻してゼクスの疑問に答える。


『ドラゴンの存在を感じなければ、この時代で目覚めることはなかっただろう』

「王族に伝えられていた数百年に一度の覚醒は事実ではないわけか。そうなると王族に伝わっている伝承が本当にあったかどうかも疑わしいな。ドラゴンは人間を襲うことはないというがそれは間違いないか?」

『……ドラゴンは弱い者を好む。それは愛でるという意味合いが大きい。人間をむやみに襲うことはまずないが、それは絶対とは言えない』

「人間に恨みを抱いていれば人間を殺すこともあるか?」

『恨みは殺す動機になる』


 ドラゴンであれ人間であれ、恨みという負の感情は破壊を生む。

 ゼクスは伝承が本当にあったことなのか疑念を持ったが、伝承で殺戮を行ったドラゴンは恨みによって行動していたことを考えると、やはり事実ではないかと考えざるを得なかった。

 王族に伝えられているドラゴンの情報は、疑念を生む間違いではあったが、少なくともドラゴンに恐れを抱くような事件があったことは確かなのだろう。


「リントヴェルム。ドラゴンは使役可能か?」

『……それは伝承のドラゴンの背景を知りたいということか。昔、使役されていたドラゴンがいたと聞いたことはあるが、それ以上のことは知らない』

「伝承についてもわからず仕舞いだな。頭を切り替えるべきか」

『少し休憩をしたほうがいいだろう』


 リントヴェルムと話し始めてかなりの時間が経っていた。洞窟は薄暗く時間の経過が分かり難いが、おそらくもう日は暮れているだろう。


グウゥゥ!


 奏の腹の虫が鳴った。

 奏はリントヴェルムに照れ笑いを残して、遅い夕食の準備に取り掛かっている騎士達を手伝いに駆け出した。

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