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黄色の蓮

作者: 不安定

私の親は花のように美しい心になるようにと、私に『美花』と言う名前をつけてくれた。

だけど私は自分の名前をそうとれなかった。『美花』と言う名前に容姿が負けてると思うようになって行き、どんどん卑屈になって性格も暗くなり、花のように美しくなるように願われた心もだんだんと枯れて、廃れていった。

学生時代はなるべく人に見られたく無いから注目されるような事は避け、休み時間も人目につかないような場所で過ごした。

社会人になって実家は出たが、人の視線が気になることには変わり無く、在宅で出来る仕事をやってたのでほとんど外にも出ないでいた。そんな風に暮らしてきたので恋人はおろか友達もいない。

ある日母親が倒れたと報せがあった。私が慌てて病室にいくとそこには元気そうな母がいた。病気の事などを話していると母が急に、

「今回は大丈夫だったけど、もし私とお父さんが居なくなった時、今のままじゃ本当に貴女一人になるわよ。今はそれが心配だわ。結婚相手とまでは言わないけどいざと言うとき頼れる人を作ってくれたら私もお父さんも安心なんだけど」と言った。

私は笑いながら上手くはぐらかさそうとしたが、そうは行かなかった。母は私にとどめをさすように一言「ねぇ、家の外で仕事をしてみるのできないの」と言った。私は何も答える事ができず

「今日は帰るね」と言い病室を逃げるように去っていった。

私は家に帰るとすぐに鏡を見た。そこにはいつもの醜い私が写っていた。もっと自分が綺麗だったら、せめて名前負けしないぐらいに綺麗だったらなぁと思ったとき、テレビで整形の特集をやっていた。私はなんとなく運命を感じた。今までは越えてはいけない一線と思っていたが、このままでは病室で言われた通りなってしまうと思い私は夢中でテレビを見た。

翌日、私はすぐに美容整形の病院に予約の電話を入れた。予約の日に病院に行き、先生とカウンセリングをした。そのなかで先生に進められたのがプチ整形だった。価格も安く、時間もそんなにかからないらしい。それでも満足出来なかったら本格的な物をすれば良いと言う話になった。私はそれに了承をして日程などを決めて帰った。

家に帰った後私はすぐに、求人情報を調べたり洋服などやメイクの仕方などを勉強した。

そしてついにその日がやって来た。手術事態は私が思っていたよりもかなり早く終わり、休憩室のような所で休んだ後帰った。

それからはまるで変身したみたいに全く違う人間になった気がした。後、周囲の環境がかなり変わった。近所の人や普段行っているお店の人が優しくなった気がした。新しい仕事場の人間関係も極めて良好。友達もでき家にいる時間の方が短くなった。

「美花くーん!」上司が私の名前を呼んだ。

私は、「はい!」と返事をした。ようやく私は自分の名前になれた気がした。

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