牢屋
「起きろ健二」
と声がした
健二は目を開けた
健二がいるのは牢屋だった
牢の外は明るい大きな部屋だった
いくつものデスクやソファ-が並んでいた
部屋の中では
メガネをかけた色黒の痩せた小男が
大きな椅子に座っていた
健二はその男を知っていた
中学、高校時代の同級生「田中」である
健二は訳が分からなかった
「なぜだ」
と健二は言った
「ここから出してくれ」
「条件を飲んだら出してやろう」
と田中は言った
健二はおびえた
田中は昔から悪かった
部屋には田中のほかに
背の高いメガネの男と、太った男がいた
背の高い男は険しい顔をしていた
さっきまで車の運転をしていた太った男は
対照的に、ぼんやりとした表情をしていた
背の高い男が健二にスマホを渡した
「ライアンにここに来るように電話しろ」
と田中
「そしてお前の代わりに牢に入ると約束させろ」
と田中は言った
「そんなことはしない」
と健二は言った
「ではそこで暮らすこととなる」
と田中は言った
「なぜだ」
と健二は言った
「私は昔からライアンが好きだった」
と田中は言った
「心配するな、ライアンの面倒は私が見てやる」
と田中は言った




