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76-1 所信表明


 俺は部屋に戻り持ってきたコーヒーを机に置くと、そのままベッドに倒れ込んだ。

 そしてボーッと天井を見上げる。


「知らない天井だ」

 いや知ってるけどついつい言ってしまう。


 リビングでは今頃栞と委員長の相談会が開かれている。

 会話の内容が気にならないわけでは無いが、俺がそれを聞いていることがバレたら栞の信用が崩れてしまいかねない。


 いや、まあ……バレない様に聞く方法が無いわけでは無いが、今はそれどころでは無い。

 どこかふわふわした感覚に戸惑う自分がいた。


 そう、今日俺は初めて告白をしてしまったのだ。


 生まれて初めての女子への告白……まあ以前に手紙で告白めいた事を書いた事はあったけど。


 思えば俺はませていた……子供の頃から女の子の事に興味津々だった。

 先生に興味を持ったのもそんな事からだろう。


 そして、それが栞への、いや女子への好奇心に繋がったのだろう。

 同じ年齢とはいえ、少女に対してのあるまじき行為、成長と共にその罪の深さに気付いた俺は記憶を自ら消し去ったのだ。


 それ以来俺にとって栞はトラウマの様な存在になった。

 栞が俺の事を優しすぎると言ったのには、それが起因していたのだろう。


 その心の中に潜んでいる罪の重さから、俺は栞を精一杯可愛がった。

 常に優しくあり続けた……そう、異常な位に。


 それとは別に、大人になるのにつれ自分の中のトラウマが原因で、俺はどんどん内向的になって行った。

 中学に入ってからはあまり友達も作らず、家で本ばかり読む様な状態になってしまったのだ。


 それが原因なのか、反対に栞は兄らしくない俺に恋心を抱く様になってしまった……のかも知れない。


 そうなのだ。俺は今でも栞の頼みを断れない。

 

 それが原因で去年栞の告白を受け入れる事になった。


 そしてそれから1年……俺はずっと悩んでいた。

 このままで良いのだろうか? って……。


 その理由はただ一つ……俺も栞を妹の事をどんどん好きになってしまっていたから。


 妹なのだから、そんな気持ちになるわけがない……初めはそう思っていた。

 そして妹が俺の事を好きだという気持ちも一過性の物だってそう思っていた。


 しかし妹は1年間ずっと俺の事を好きで居続けてくれた。


 そして俺も……。


 顔、容姿、性格、その全てが完璧、料理も家事も全てこなし、頭も良く友達も多い。

 まさに物語に出てくる様な理想のヒロインそのものだった。



 そのトラウマのせいで恋愛に臆病になっていた俺。

 

 自分の欲に怯え、人を傷付ける事に臆病になっていた俺にとって、去年の告白で栞と付き合うと言うのはまたとないチャンスとなったのだ。


 正式に付き合う事の無いお試し的な付き合い。

 妹のおままごと、遊びに付き合う様な、そんな軽い気持ちで俺は返事をした。


 しかし妹の気持ちは真剣そのものだった。

 そして……俺の気持ちもどんどん栞に傾いて行った。


 過去に取った妹に対する行い。

 そして真剣な妹の気持ちを軽い気持ちで蔑ろにした行い。


 そんな自分に悔やみ、そして妹に対して懺悔の気持ちを持った。


 そして俺はずっと考えていた。


 なぜ人は人を好きになるんだろうか?

 良く皆が言う、好きな気持ちは色々あると。


 家族を好きになる。友人を好きになる。動物を好きになる。子供を好きになる。

 家族愛、友愛、動物愛、母性愛。


 好きという気持ちは愛にも変換出来る。


 じゃあ、恋は?

 家族に恋する、友人に恋をする、動物を恋する、子供を恋する。

 どれも使う事はあまり無い。


 恋をするとは主に異性に対して使う言葉。

 つまり……恋とはそこに性的な意味が含まれていると、俺は考えた。


 これは俺の勝手な解釈なのだが、しかしそう考えると自然と府に落ちる。

 恋という字は下心が含まれている。

 恋愛とは恋から愛に変えていく作業。


 恋人から家族と変わって行く過程。

 結婚というのはつまりそういう事なのだ。


 俺は栞を愛している。


 そう、始めから家族に、家族愛になってしまっているのだ。

 

 でも俺は……やっぱり恋がしたい、


 栞に対してその気持ちは今の所俺の中には……無い。


 あのトラウマがブレーキをかけてしまっている。

 いや、そもそも妹という事で、ブレーキが掛かってしまっているのだ。


 女子に対する興味が人一倍強い俺だが、過去のトラウマからそれを表に出さずにいた。


 でもこのままじゃ駄目だ。

 俺は栞と恋がしたい。


 それには、今までと違う思いで栞と接しなければならない。

 ドキドキした感情で、始めからやり直さなければならない。


 それが出来るのだろうか?


 俺らの間にはもう既に繋がりがある。

 他人と違って恋人関係を解消しても縁が延々と残り続ける。


 子供がいる夫婦が離婚しても、子供との関係が残る以上、全くの他人にならないのと同じだ。


 いや、わかるよ家族でも他人の様に接している家庭も勿論あるし、子供と完全に縁を切ってしまう夫婦もいる事を俺は理解している。


 俺達だって本気で付き合って、ああ、やっぱり駄目だってなった時、元の兄妹には戻れないだろうし。

 その覚悟が出来ているかと聞かれれば、今の状況に満足している為に出来ていないというのが正直な所だ。


 だからこそ一気に関係を進めずに、もう少しゆっくり、少しずつ理想に近付けて行くのが一番なのだ、


 俺は今そう結論付けていた。



 






 

 

 

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    こちら作品の完全改稿版を書きました         
  超絶コミュ力の妹と陰キャの俺、そんな妹に突然告白され、俺の高校生活がとんでもない事になった。           
  もしよろしかったら読み直してくださいませ(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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