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72-7 シスコンの兄


『え? エ? 江? 絵? ゑ? ええええええええ!!』

 お兄ちゃんが! お兄ちゃんが! お兄ちゃんが!


 遂に、遂にい~~!


 苦節一年、ううん、十数年、この時を! この時を待っていた!


 どうすれば良い? このままじっとしてる?

 こういうのなんて言うんだっけ? なんかお兄ちゃんのエッチな本にこんなのあったよね?

 寝ている時にって奴……そっかそっか、お兄ちゃんってそんな性癖が。


 でも大丈夫、例えお兄ちゃんがどんな趣味でも私は受け入れられる準備がある。


 さあ! ドンと来い!

 私は再び目をつむりお兄ちゃんにされるがままに……………。


 いや、ちょっと待って、そう言えば今お兄ちゃんは小学生な筈。


 小学生でこんな経験はまずいのでは? 

 過激過ぎるよね? 高校生のお兄ちゃんならいざ知らず。


 でもでも、今起きたら、それはそれでまずいのでは?

 私に知られないようにやっているんだから、目を覚ましてるのがバレたらお兄ちゃんショックだろうし。


 ああ、どうしたら良いの? ってそう悩んでいると……お兄ちゃんの息遣いがどんどん荒くなって来る。


 そして……暫くの間の後、私のパジャマの裾を持つお兄ちゃんの手に力がこもったその時!


「お姉ちゃま! わかったよ!」

 そう言いながら美月ちゃんが部屋の扉を開けた。


「ひゃう!」

「ひ! ひいい!」


「お兄ちゃま?」

 廊下から光が射し込みちょうどお兄ちゃんをスポットライトで照らしたように写し出す。


「……ご、ごめんなさい! ごめんなさい!!」

 美月ちゃんに見られ、私にも見られ、お兄ちゃんは慌ててパジャマから手を離すとそのまま後ベッドの隅迄後退りした。

 そして、顔を真っ赤にして、謝りながらポロポロと泣き始める。


 これは……。

 

「──思春期……だね」

 美月ちゃんがそう言った。


「お兄ちゃんが……思春期?」

 美月ちゃんにそう言われ、今やっていたお兄ちゃんの行動がどういう事か気付いた。

 ぴーーぴーーと親に怒られた子供の様に泣くお兄ちゃん。

 そんなお兄ちゃんを驚かせない様にゆっくりと近付き、その可愛い可愛い頭を思いっきり抱きしめた。


「いいんだよ、大丈夫だよ……」

 私はお兄ちゃんにそう言うと、自分の胸にお兄ちゃんの顔を埋め……るほど無いけど……うっさいな。


「ごめんなしゃい、栞ちゃんごめんなさい」

 私の胸でお兄ちゃんが必死に謝る。

 おそらく好奇心からしてしまったのだろう。


「大丈夫だから、大丈夫だから……ね」

 そう言ってお兄ちゃんをしっかりと抱きしめながら背中をゆっくりとさすった。

 

「さっきお風呂でお姉ちゃまを全然見なかったのは、こういう事だったのね」

 そんなお兄ちゃんを見て美月ちゃんはそう言った。


「え? むしろ逆では?」

 興味があるなら見る筈だよね?


「ううん、お兄ちゃまは記憶を遡ってるの、多分小5位の時に性に目覚めたんじゃ無いかな?」

 私は『ピーンピーン』と可愛く泣くお兄ちゃんの背中を擦りながら美月ちゃんの話を真剣に聞く。

 そして自分の中にあるお兄ちゃんの記憶を探した。


「そっか……そういえばエッチな本を見始めたのも確かそれくらいだった」

 ごく普通のちょっとエッチな漫画、今持っている凄いのではなく、普通の漫画だけどエッチなシーンがある物を買い始めこそこそと読んでいたのがその頃だった。

 

「多分だけど……お兄ちゃまは、その頃お姉ちゃまの事を意識したのかも」


「……え?! い、意識?!」


「まあ、厳密には女の子の身体にって感じだと思うけど」


「なんだ……ああ、でもそういえば、お風呂に一緒に入るのを嫌がり始めたのがその頃だったな」


「それね、そこからお姉ちゃまが無理に入って行ったんでしょ? お兄ちゃまはずっと見るのを我慢してたって事……妹の裸をなるだけ見ないようにって」


「……」


「お兄ちゃまはそれがトラウマになっていたのかも、自分はおかしいって、妹の体に興味を持つなんてって。

 お姉ちゃまが成長期に入って身体がどんどん変わっていった時、お兄ちゃまも思春期を迎えたの、お姉ちゃまの胸が膨らみ始めたりした事にお兄ちゃまは興味をそそられた、ひょっとしたらさっきみたいにそっと覗いていたのかも知れない、そしてそんな自分が許せなかったんじゃないかな?」


「そんな……全然良いのに」


「お姉ちゃまが良くてもお兄ちゃまはそう思わなかったんだと思う。今回の件もその時の事を後悔していたのが原因だと思う、だからお兄ちゃまは自ら今の状態に自分を追い込んで行ったの」


「お兄ちゃんが……私に興味を……え、えへへ」


「もう、悦んでいる場合じゃないよ! 要するにここが折り返し地点なんだから、これ以上お兄ちゃまが子供にならないようにしなくちゃ駄目」


「そ、そっか……」

 私は美月ちゃんにそう言われ、どうしたらお兄ちゃんのトラウマを解消出来るか考えた。

 そして……一つの結論が私の中で出た。


「よし! お、お兄ちゃん……えっと……私の胸が見たいの、えへへへ、じゃあ見ていいよ」

 興味があるならいくらでも! そう思った私は泣いてるお兄ちゃんに明るく笑顔でそう言った。


「ちがああああああうう!」

 私の行動に美月ちゃんが大声で否定する。


「えええええ?!」

 ち、違う?


「それじゃ益々お兄ちゃまのトラウマが重くなっちゃうでしょ? 傷口抉ってどうするのお姉ちゃま!」


「だ、だってえええ」


「だってじゃないよ!」


「じゃ、じゃあどうすれば?」


「えっとねえ…………そう、ちょうどここに今のお兄ちゃまと同じ年齢の子供がいるんだから、美月がお兄ちゃまの為に一肌脱げば」

 美月ちゃんはそう言うと着ていたシャツを脱ごうとする。


「却下却下却下?! そんな事したらお兄ちゃんがロリコンになるでしょ!」


「もう既にロリコンでしょ!?」


「そもそも美月ちゃん胸なんて全然無いじゃん!」


「お兄ちゃんまはそれがいいんでしょ!」


「私はあったもん!」


「はいダウト!」

 

「違うもん! あったもん! その証拠にお兄ちゃんが私の身体に興味持ったんでしょ! さっき美月ちゃんも言ったじゃない!」


「膨らむ前だから興味持ったのかも知れないじゃない! お兄ちゃまロリコンだし」


「そんな事ありませーーん」


「口だけならなんとでも言えまーーす」

 一歩も引かない美月ちゃん。

 そして言い争う事10分……。


「と、とりあえず……今はお兄ちゃんを戻さないと」

「そ、そうだね……」

 はあはあと息を切らし美月ちゃんと停戦協定を結ぶ。

 

 そして未だにメソメソ泣いているお兄ちゃんを二人で見つめる。


 私と美月ちゃんは顔を見合せ頷く。

 さあ、お兄ちゃんのトラウマの解呪の儀を始めよう!

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    こちら作品の完全改稿版を書きました         
  超絶コミュ力の妹と陰キャの俺、そんな妹に突然告白され、俺の高校生活がとんでもない事になった。           
  もしよろしかったら読み直してくださいませ(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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