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70-3 大イベント


 妹が俺の誕生日を二人きりで祝いたいと言ってくる。


 美月のことが心配だったがそこは押し切られた。

 というか、どうやら妹と美月の間に密約があるようだ。


 とにかく今度の土日は妹と美月と二人きりで過ごすという、俺にとって期待と不安が入り混じるボーナスステージとなるようで、今からドキドキしている。


 まあ、ドキドキしているのはそのことだけではないんだが……。


「えっと……栞? 一体どうしたんだ」


「ん? なにがお兄ちゃん?」


「いや、一緒に登校するのはいつも通りなんだけど……なぜ腕を組んでいる?」


「好きだから?」


「いやいやいやいや、皆見てるんだけど」


「見せつけてやろうぜ!」


「ぜ! って……いや、なんかいいセリフみたいに言ってるけど……」

 妹は俺と家を出るなり俺の腕に自分の腕を絡めがっちりとホールドするように腕を組み始めた。

 栞の胸がぐいぐいと俺の腕に食い込んでいる。

 周囲は始めバカップルを見るかのように呆れてみていたが、それが直ぐに栞とわかると驚きの表情に変わり、その相手が栞の兄である俺だとわかると不思議な表情に変わる。


 まあ、そうだよな……実の兄と実の妹が並んで歩くだけでもなんか微妙なのに、その二人が腕を組んでいたとなると……そんな顔するよな……。


 そしてごく一部の生徒達は、何かほんわかした視線を送って来るのはなぜだろうか?


 有名人(声●)とその兄が今日お兄ちゃんとデートしたとかSNSで発信したりするけど、それは隠れ蓑で実はお兄ちゃんではなく、彼氏ってのがお決まりのパターンだ。


 でも実際本当にお兄ちゃんとデートしてたら、それはそれでなんかじわるよね?


 まあ、自他ともに認めるブラコンの妹、最近隠す様子は一切ないので、周囲も変に騒ぎ立てることは無いんだけど……。



「いい、お兄ちゃん約束した事忘れないでよ!」


「いや、忘れないけど、泊まりはどうかなって、そもそも高校生同士で宿泊って出来るのか?」


「何を今さら、前に長野で泊まったじゃない」


「いやあれはどっかの誰かが考えなしだったからじゃ?」


「なに言ってるのお兄ちゃん、ちゃんと私がお母さんから許可貰ってるから」


「は? そ、そうなの?!」


「同意書送って貰ってるから」


「マジか……」

 いつの間に……。


「それさえあれば兄妹だからなんの問題も無い~~ラッキー」


「いやラッキーって……母さんになんて言ったんだ?」


「え? 普通にお兄ちゃんの誕生日祝いするからよろって」


「……母さんはなんて」


「あらいいわねって」


「……本当相変わらずなんも考えてねえな……」

 いい加減の極みだな母ちゃん……。


「もう外堀は埋めた……後はあいつだけ……」


「あら? あいつって誰かしら?」


「うお!」

 その時唐突に後ろから声がかかる。

 俺はその声と妹の腕の力が強まったことで思わず声をあげてしまう。


「あらあら朝からイチャイチャと」


「し、してねえ」


「ええ、お兄ちゃんと私はラブラブですから!!」

 妹は構わす大きな声でそう言った。


「お、おい」

 周囲が俺たちを凝視する。

 俺は思わず●●しそうになる……。


「ふふふ、まあいいわ、ああ、ダーリンお誕生日のお祝いは当日届けさせるから」


「当日? 届けさせる?」


「そ、私今日からスイスに行くから、しばらく会えないのよ」


「へ?」


「だからとりあえずキスでもしておこうかなって来たのだけど」


「がるるるるるる」

 妹が虎のようにそう声をあげ俺の腕を思い切り引っ張り茜から引き離す。


「あらあら、豚さんがお守りしてたら出来ないわね」


「誰が豚よ! 豚って言った方が豚なんだから! ブーブー」

 うーーん、相変わらず何故か俺が絡むと語彙が小学生になる妹……。


「あははは、まあ…………今回は妹さんに譲ってあげるわ、じゃあ……時間だから」

 茜はそう言うと手を軽く上に上げた。

 するとどこからか音もたてずに高級車が茜の前に近寄りゆっくりと停車する。

 運転席からスーツを来た女性が降りてくると、扉を開け茜に軽く会釈する。


 茜は何も言わずに車に乗り込み、そして一度だけ俺をチラリと見ると、美しい姿勢で前を向く。

 そしてそのままゆっくりと車は発進していった。


 俺はあの茜の言葉の間、が凄く気になっていた。

 しかしそれを確認する手だてはない。

 そしてそれを深く考える状況でも無かった。


 何故なら……。


「いいいい、いやったあああああああああああ!!」

 妹は今まで見た事の無いぐらいの満面に笑みで、そう大きな声を張り上げ昨夜以上の勢いでバレリーナいや、プリマ・バレリーナ・アッソルータように俺の隣で踊り始めたのだ。


「お、おい! ぱ、パンツが見えるって!」

 爪先だけでくるくると回る妹のスカートが遠心力で上にせりあがる。


「だーーいーーじょううぶーーお兄ちゃん以外には見せないからああ」

 適当に踊っているように見えて、計算しつくされた踊りらしく妹は俺に向かってそう言う。


 いや、そんな下らない事でその頭のリソースを使うなよ。

 ついでにそのとんでもない運動神経も……。


 栞の頭は美月と並ぶくら賢い。

 しかしその天賦の才のリソースの殆んどを俺に向けているせいで、正直生かしきれていない。

 そんな事に使っていないでもっと社会貢献や世界平和に使えばこの世の中も、もっと暮らしやすなるのに……と俺は思わすため息をついてしまう。


 


 そして、俺はこの時まだ気付いていなかった。


 俺たち兄妹を止める者がいなくなった事に……俺は全く気付いていなかった。





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    こちら作品の完全改稿版を書きました         
  超絶コミュ力の妹と陰キャの俺、そんな妹に突然告白され、俺の高校生活がとんでもない事になった。           
  もしよろしかったら読み直してくださいませ(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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