67-2 記憶の中の妹
妹が部屋から出ていくと、俺は起き上がって部屋の中を一回りする。
しっかりと覚えている……部屋の傷や家具の配置、服や本……そして…………エッチな本の隠し場所も。
何故だか何度か変える羽目になった……それが何故だか思い出せない。
綺麗さっぱり人の事が思い出せない、自分の事が思い出せない。
でもこの家だったり、モノだったり、読んだ本だったり、過去に行った場所景色そういった人物以外の事は思い出せる。
不思議な感覚だった。
旅行の景色は思い出せるのに、隣に誰がいたか全くわからない……。
俺は何かヒントが無いか本棚を見ると、一冊あまり記憶に無い分厚いファイルが目に入った。
そっとそれを取り出すとベッドに腰掛けファイルを開く。
そこには何百枚もの妹の写真が……。
小さな頃の妹の写真……何故だか妹ばかり写っているアルバム……。
まるで誰かが仕込んだ様な妹の写真集の様なアルバム……。
小さな頃から美月と同じくらいの超絶美幼女、そのまま美少女になり最近撮ったと思われる写真迄ある。
所々に俺らしき男の子と写っている物もあるが……あまり仲のよい感じはしない。
でも逆にそれを見て改めて思った。思わされた。やはり俺はあの超絶美少女と兄妹なのだ……と。
でもなんだろう、この緊張感は、まるで初夜を迎える前の様な、恋人と初めて一夜を共にするような、そんな緊張感が俺を襲う。
「いやいやいやいや、まてまて……そんなわけ無いだろ?」
自分にそう言い聞かせる。彼女はこのアルバム通り正真正銘妹なのだ。
恋愛感情なんてお互いあるわけ無い、俺はあいつの兄貴なんだ!
でも、美月が、俺のいとこが帰り際に言っていた言葉が引っ掛かる。
「変な事って……なんだろうか?」
変な事しちゃ駄目……まあ、そのままの意味なら……エッチな事なのだろうけど、相手は小学生だ。そういう事は知らないだろう……知らないのか?
「と、とりあえず……いつも通りの生活をするって言ってたし……いつも通り……」
いつも通りって俺はどんな生活をしていたのか? なんか普通最高って思いが頭に浮かんだけど……それは普通では無い生活をしていたのでは?
そもそもなんだったんだ、あの生徒会は……アイドルグループ顔負けの面子だった。
超絶美少女達に囲まれて旅行とか……なんなの俺って、端から見たら死ねば良いのに、爆死確定の存在だろう……。
ひょっとして、俺ってナンパ野郎なのか?
まさか……あの中の誰かと……、まさか……全員と?
「ハーレムじゃんか……いやいやいやいや」
焦るなそんなナイスボートの終わりしか無い事を俺がやるんだろうか?
そもそも婚約者がいたし、ただそれは茜以外全員が否定していた。
こんな漫画やラノベみたいな事、早々あるわけ無い。
「たまたまだよな……たまたま俺の妹が超絶美少女でいとこが超絶美幼女で、たまたま生徒会が全員美少女で、たまたま婚約者を名乗る大金持ちな美少女がいて……たまたま?」
「お兄ちゃん! お風呂の準備が出来たよ!」
唐突に扉が開き、満面の笑みを浮かべてで美少女妹が俺の部屋に飛び込んでくる。
「うわ!」
「あーーー、私のアルバムやっと見てくれた、えへへへへ」
「……あ、これって……栞が?」
一瞬呼び捨てにして良いのか一瞬戸惑うが、妹ならば問題無い筈だ。
「そうそう私の可愛い写真集、あ、最初の方にちゃんとお風呂とかの写真があるから見てね」
「……それってヤバい奴なのでは?」
ロリコンは犯罪という記憶はあるぞ、児童なんちゃら法があるって記憶も……。
「あはははただの家族旅行の時の写真でしょ~~、それよりもお風呂の準備が出来たから、あはあああぁぁ、今日はお兄ちゃんと久しぶりの二人きり……嬉しいいいい!」
異常なまでのハイテンションの妹……やっべ可愛すぎる。
そんな妹を見てドキドキとまた心臓が高鳴り出す。
こんな美少女と二人きりという言葉に思わずときめいてしまう。
妹だから! 彼女は俺の妹だから、妹に恋なんてするわけ無い!
向こうだってそうだ、俺に恋愛感情なんて抱いているわけ無い。
兄妹なんだ、兄妹なんだ……俺達は兄妹なんだ!
お経のように何度も何度も頭の中で自分に言い聞かせる。
頭の怪我もあってか、いやそれ以外に他意はない……そんな兄貴思いの優しい妹は俺にピッタリと寄り添い、お風呂場に向かう。
脱衣場も浴室も、ちゃんと覚えている。
「ありがとう、大丈夫だから」
俺はそう言うと、脱衣場で服を……。
「えっと大丈夫だから」
そう言って服を………………。
「いやいやいやいや、待って、だから待てって」
俺の目の前で妹が服を脱ぎ始める。
俺は慌てて目を背けそう言って制止を促した。
今、下着姿の妹が一瞬見えてしまう、そして俺の脳裏に焼き付いてしまう。
「ん? だっていつも通りの生活をしろって弥生さんが言ってたし」
そう言いつつ俺の制止を無視するかの様に、衣擦れの音がする。妹は、栞はそう言いながら俺に構わず脱いでいる!?
「い、いつも……通り?!」
「うん、兄妹でいつも入っていたから、ね? お兄ちゃん!」
妹はそう言うと、ピタピタと足音を鳴らし俺の元に近寄ると、徐に……俺の履いていたズボンを……ズルりと下ろした。
「…………うきゃああああああああああああ、くぁwせdrftgyふじこlp」
俺と妹の……普通のいつも通りの生活が始まる……。