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35-2 裕と栞と美月

 

 えっと、撤回します、ここは観光地でした……

 美月が俺と来たいと言った場所は羽田空港国際線ターミナル


 は? 空港? って思ったけど羽田空港はちょっとしたデパート並の店があり、レストランの種類も多岐にわたる。


 そして国際線ターミナルは更に、江戸の町並みを再現した江戸小路、総檜造りの日本橋、様々なキャラクターグッズ販売、プラネタリウムカフェ、展望デッキ、ちょっとしたテーマパークとなっていた。


「へーー、こういうのがあるんだ、美月知ってたの?」


「うん!でも写真で見ただけ、結構凄いねー」

 いつもの通りにゴスロリの格好をした美月が日本橋を再現した橋の欄干に掴まり下を見下ろす、落ちるなよ~~


「お兄ちゃま、ここから何処かに行きたいね」

 日本橋が道路の起点だった、つまり道路のスタート地点、そしてここは羽田空港全国に行ける、更に国際線世界に行ける。

 全ての起点か……

 ただ、俺は……飛行機が超苦手なんだけどね…………


 その後昼過ぎまでお店を一通り周る。


「美月、何か食べるか?」


「美月うどんが食べたい~有名なうどん屋さんがあるの~」

 ああ、なんかさっき歩いた江戸小路にあったな……でも結構並んでた


「さっき見たとき、かなり並んでたけど良いのか?」


「うん、お兄ちゃまとおしゃべりしてれば、すぐだよ」


 美月と二人たわいもない話しをして並んでいると、30分位だろうか、ようやく店内に入れた。


「美月このカルボナーラのおうどんが食べたい」

 美月がメニューを指差す、う……そこそこの値段……

 しかし、美月に出させる訳にはいかない……


「じゃ、じゃあ俺はキツネで……」

 一番安いうどんを頼むと店員さんがうどんの量はと聞いてくる……量?

 どうやら3玉まで増量できるとの事だった、そこそこの値段を少しでも回収しようと3玉頼む


「お兄ちゃま、お腹減ってたの?」

 正直そこまででは無かったが、頼んでしまった……そして後悔する……


「うわ……なにこのデカイ丼」

 美月の丼も同じ大きさだけど、中身が全然違う……俺のは丼に対して適量……、美月のは全然少ない……


「お兄ちゃま、食べきれる?」

 俺のうどんを見て心配そうな顔をする美月……


「ああ、大丈夫、美味しそうだな、さあ食べよう……」

 旨いけど、旨いんだけど、失敗したあああああああああ



 ###




「お兄ちゃま……大丈夫?」


「あ、うん……何とか……」

 食べ過ぎで動けなくなった俺は、風に当たれば少しは楽になるかと、展望デッキに来ていた……情けない……


「あはははは、お兄ちゃま可愛いね、でもちょっとケチかな?」


「ケチって、ははは、バレてたか」


「うん、少しでも取り返そうとしたんでしょ、美月お世話になってるんだから自分の分くらい出すのに……」

 やはり何でも分かるんだな、そして気を使っている事まで……でもお世話にって……


 展望デッキの端のベンチから海外に飛んでいくであろう飛行機を眺めている。

 今日は比較的涼しいので良かった、でもやはり少し暑い、夏の香りとジェット燃料の燃える香りがする。

 美月は持っていたヒラヒラの日傘を差してくれている。


「お兄ちゃま、昨日の花火の事、ごめんなさい……」

 俺の横に座っている美月が浮いている足をぷらぷらさせながら、昨日の事を話し始める。


「折角お兄ちゃまが美月を紹介しようとしてくれたのに……ごめんなさい……」

 美月は俺を見つめる、余計な事をするなと言う目では無かった、本当にすまなさそうな目で見ているようだった。


「お兄ちゃまモテるから少し意地悪したくなっちゃった……、でも美智瑠ちゃんも麻紗美ちゃんもいい人だった……お兄ちゃまの事大好きみたいだし……だから焼きもち焼いちゃったの」

 美月はそう言うと空を見上げる、そして目を瞑り少し考えてから俺を見る。




「……お兄ちゃま、弥生ちゃまから美月の事を聞いたんだね……」

 俺を見つめている目が少し潤んでいる。


「うん……」

 俺は返事だけした、まず美月に話しをさせたかった、美月の話しを聞きたかった、でもやはり俺の意図していた事くらいじゃ美月に直ぐに分かってしまう……


「そうか……バレちゃったか……だから今日誘ってくれたんだね……、栞姉ちゃまにも気を使わせちゃったんだね」


「お兄ちゃま……美月は大丈夫だよ、もうそろそろ帰るし、学校にもなるべく行くから心配しないで……」

 そう言うと笑顔で俺を見る……その瞬間、その笑顔をみた瞬間に分かった……美月の裏の顔が今頃分かった。

 冷えきっている、心がすっかり冷めてそして覚めてしまってるんだ……そしてそれを見せないようにしている。

 月の裏側を月が自ら皆に見せないように、自分から隠し続けているんだ……

 そしてこの喪服の様なゴスロリ姿でしか外出しない、周りを拒絶するように…………



 くっそ!、ロリコンだよ俺は、もう何とでも言ってくれ……



 俺は周りも気にせずに美月を抱き締めた……


「ふええええええ」

 美月が妙な声をあげる、俺は構わずに強く抱き締める。

 美月が手を離し傘が俺達の上に被さるように落ちる。


「美月!!我慢何てするな!行きたくないなら行くな!!帰りたくないなら帰るな!!!大丈夫じゃないならちゃんと大丈夫じゃないって言え!!!」

 美月が震える、俺の腕の中で震えた。


「なんでそんなに大人になろうとしてるんだ、もっと子供でいていいんだ、もっとわがままを言っていいんだ、もっと自分の思いを、想いをぶつけていいんだよ、美月はまだ9歳なんだ」

 美月は俺の腕の中から俺を見上げる、そしてその大きな瞳から涙が溢れる……



「でも……、でもおぉ、皆が美月の事を怖いって、何か言うと、何で考えてる事が分かるのって……先生も美月を怖がってる、質問されない様に聞かれない様に避けるの、それでも聞くと小学生が聞くことじゃないって怒るの……美月は何もするなって……クラスのバランスが崩れるからって……」


「美月だって美月だって、……友達なんていらないって言ったけど、いらないけど……でも、でももう…………一人はやだよおおお、寂しいよおおおおお、お兄ちゃまああああああああふえええええええええええん」


 美月が泣き始める、俺と別れるのが辛いと言った時より激しく、一人は辛いと寂しいと……


「そんな奴等の言うことなんて気にしなくていいんだ、美月は何も悪くない、そんな教師の事を気にする必要なんかない、そんな学校になんて行かなくていい、寂しかったら俺が一緒に居てやる、俺と栞は美月の兄と姉と思ってる、この間そう言ったんだよ栞も俺も、俺たちは家族だよ、だから俺たちは帰れなんて絶対に言わない、美月はただいまって家に入ればいい、俺たちはお帰りって言うだけだよ」


「うわああああああああんんんんんん、お兄ちゃまああああああああああああああ」


 傘で隠れていたが、大泣きし始める美月、デッキの端とはいえ注目されるかも知れない、しかしそんなの関係ないとばかりに抱き締めた、美月も俺の背中に手を回しかきむしる様に抱きつく、そして子供の様に号泣した。


「美月……よく我慢したね、もう大丈夫だよ……」

 分かってしまえば簡単な事だった、美月は負けたくなかったんだ、皆にも先生にも栞にもそして弥生さんにも……俺だけ違った、ライバルじゃなかった、美月は天才と言っていたが、逆だ、相手にするほどでもない存在、薬にも毒にもならない、競争する存在じゃない、だからこそこうして打ち明けてくれたんだろう……俺はそう思っている。



 暫く泣くと少し落ち着いた美月が俺を見て不安そうな顔で言う。

「お兄ちゃま、本当に美月のお兄ちゃんになってくれるの?」


「もう前からずっとお兄ちゃまって呼んでるだろ、ずっと前から美月は俺の妹だよ」


 それを聞いた美月は満面な笑みを見せる、凄く可愛い笑顔で俺はドキドキしてしまう、ハイハイロリロリ


 しかし、その後美月はニヤリと笑い小悪魔的な表情に変わった……そして……


「じゃあ、栞お姉ちゃまと同じように、美月とも付き合ってね、お兄ちゃまは妹と付き合ってるんだから、美月とも付き合うって事だよね、お兄ちゃま、大好き!!」

 そう言うと俺の首に抱きつきほっぺにキスをする!!傘が下に落ち日差しを浴びる、その光を浴びた美月が天使に見えた……二人目の妹からの告白…………


 いやそうじゃない、ていうかなんで知ってる!!!


「み、美月!!な、なぜ知ってる、俺が妹と、栞と付き合っている事をなぜ!!」


「なぜだろうね~~?どう?美月の事怖くなった??」

 美月は挑戦的な目で俺を見つめる……、前言撤回、俺はまだ美月の裏側を見ていない、美月はそんな簡単な子じゃなかった。

 天使じゃない、その黒い衣装の通り美月は……堕天使?


「とりあえず、今日はほっぺにしといてあげる、唇は栞姉ちゃまと競争するの、お兄ちゃまからどっちが先にしてもらえるか勝負だね、ちなみに3歳の時は美月がお兄ちゃまの寝ている時に奪ったんだ~~~えへへへへ」


 3歳の時に奪うって感覚があったって言った?今とんでもないことを言ったよね……


  俺はこの可愛い堕天使の同級生と担任にほんの少しだけ同情した…………




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    こちら作品の完全改稿版を書きました         
  超絶コミュ力の妹と陰キャの俺、そんな妹に突然告白され、俺の高校生活がとんでもない事になった。           
  もしよろしかったら読み直してくださいませ(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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