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エピソード4~あのあと~


 (…………ここは?)


 瞼に当たる強い光に、目を覚ます。そこは、見たことのない部屋だった。いや、確か、最近見た。


 (そうだ、ここはチェリアさんの。あの後、どうなったんだ?)

 「あ、ヤゲツ君。起きた?」

 「チェリアさん」


 扉を開いて、チェリアさんが入ってくる。俺は、あの後どうなったのかを聞いた。


 「チェリアさん、あの後、どうなったんですか?最後の一体を斬ったところまでは覚えてるんですけど」

 「あの後、か。ヤゲツ君が倒れちゃったからね。ヤゲツ君を安全なところに隠した後、魔石とドロップアイテムを回収したんだ。で、その後君を背負ってホームまで連れてきたの。ごめんね?治療室は訳あって使えないから、私の部屋に寝かせちゃった」

 「いえ、それはいいんですけど………」


 かなりチェリアさんに迷惑をかけてしまったな。チェリアさんに大きな貸しが出来てしまった。

 だが、俺はさっきの会話で、大きな違和感を覚えていた。


 (何だろう、何かが違う…………そうだ、口調だ!)

 「チェリアさん。その喋り方、どうしたんですか?」

 「ん?ああ、その事?教育係として、君に歩み寄った方が良いかなー、と思ったから変えてみたんだ」


 そうだったのか…………あんな事をしたから、心配させてしまったのかもな。これからは気を付けなければ。ばれないように。


 「あ、そうそう。ヤゲツ君、死ぬ寸前だったから、治癒魔法を使える人に傷治してもらったんだよ」

 「そうなんですか。そういえば、傷無くなってますね」


 体からは、昨日の事はなかったかのように、傷跡すら残っていなかった。治癒魔法って凄いな。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 自分の体を感心したように見ているゼヤゲツ君。彼の体からは、全ての傷が跡形もなく消えていた。

 私は嘘をついた。治癒魔法を使ってもらったのは本当だ。だけど…………………


 私は、昨日の事を思い出していた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 私は、ヤゲツ君を背負ってホームに向かっていた。


 「はぁ、はぁ……………(急がないと……………死んじゃう)」


 その傷は、既に死んでいてもおかしくない程のものだった。生きているのが不思議なくらいだ。

 だけど、ふと彼を見た私は気づいてしまった。


 (あれ…………傷、治ってる?)


 完全に治っていた訳ではない。ほんの少しだけ、傷が浅くなっていたのだ。流れ出る血の量も、少しだけ減った気がする。

 気になったが、依然としてヤゲツ君が死にかけている事に変わりはない。私は、急いでホームに向かった。


 ホームの前には、私の教育係だったアルマさんが立っていた。忙しい筈のアルマさんが、どうして?

 私達を見つけたアルマさんが、走ってくる。


 「チェリア、どうした?何かあったのか?」

 「いえ、私は…………ただ、この子が」

 「何?っ!これは…………」


 ゼアル君の傷を見て、アルマさんが直ぐに治癒魔法を使う。


 『癒やし治す純白の光よ』

 『我は癒やしを求める者、癒やしを願う者』

 『我が意思に従い、この者に癒やしを』

 『ピュアライトヒーリング』


 アルマさんが魔法名を唱えると同時に、ヤゲツ君にかざした手から白い光が出てきて、ヤゲツ君を包み込んだ。ヤゲツ君の傷がどんどん塞がり、完治すると光は消えた。

 相変わらず、アルマさんの回復魔法は凄い。こんな魔法をあっさり使えるのは、異常級(イレギュラークラス)であるからこそだ。


 「チェリア、こいつは何者だ?何故あんな傷を負った相手を、お前がここまで連れてきた?」

 「実は………………」


 私は、ダンジョンであった事を全て詳細に伝えた。帰りに気づいた事も。

 それを聞いたアルマさんは、信じられないような顔をしていたが、直ぐに何かに気づいたように顔を上げる。


 「そんな事が……………?…………いや、まさか!?だが、それしか…………」

 「アルマさん?」

 「あ、ああ、済まない。お前は、こいつをお前の部屋に寝かせてやれ。治療室は使えないし、こいつの部屋はまだ準備できてないからな」

 「わ、わかりました」


 アルマさんの指示に従って、私の部屋に向かう。途中で何人かすれちがった人が居たが、その人達は血塗れのヤゲツ君を見て驚いていた。

 そんな事があったが無事部屋に着き、ヤゲツ君をベッドに寝かせる。

 そこで、扉からノックの音が聴こえてきた。


 「チェリアー、ちょっと話があるから、一緒に来てくれない?」

 「その声は、ミレメ?でも、今は………………大事な話なの?」

 「うん、だからお願い!」

 「………わかった、今行くね。ちょっと行ってくるね」


 私は気を失っているヤゲツ君にそう声をかけてから、部屋から出ていった。



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