第6話、眠れない夜
風呂から上がると、僕は客間にある。
エアコンの前で涼んでいた。
火照った体に当たる、エアコンの冷風は気持ちが良い。
「はあ〜、良い湯だったなあ」
僕は、さっき入った、風呂のお湯に満足していた。
さすが、ミネラルウオーターが、蛇口から出る所だけはあるな。
何だかいつもと違う、お湯の感触に、そんな事を思った。
ちなみに、市内の水道水は。
阿蘇からの地下水を、汲み上げているそうである。
・・・
お風呂から上がり、TVを見ながら荷物の整理をしたりと。
それから色々としている内に、客間に掛かっている時計が、10時を指していた。
「ふわ〜あ〜」
僕が時計を見ていたら、不意にアクビが出てしまった。
普段は、まだ起きている時間であるが。
今日は、熊本まで移動したので、結構疲れたのだろう。
「……今日は、早く寝るか」
今日は、早めに寝ようと思い。
客間の隅に、畳んであった布団を広げる。
そして、布団を広げると。
電気を消し、そのまま布団の中に入った。
*********
「……」
僕は、布団の中で今日一日の事を思い起こしていた。
駅で再会した姉さん。
最初見たときは、昔の面影を残してはいたけど。
余りにも綺麗に変わってしまっていて、言われるまでは分からなかった。
しかも会うと、なぜか姉さんは、僕を意識して、ぎこちなかった。
姉さんは、恥ずかしがっている様な、照れている様な、そんな感じだった。
ーーま〜くんが、良か男になったけん……。
そして、その度毎に、姉さんはそう言う。
「そんなに、僕は変わったのかな?」
僕は、そう思った。
しかも僕は、学校でも十人前で、取り立ててモテる様な顔ではない。
だから、そんなに反応する姉さんが分からない。
「むしろ、姉さんの方が変わったんだけどな……」
それよりも、姉さんの変わり具合の方が大きいと思う。
多分、姉さんがテンパってなければ、僕の方がそう言う反応をしていたかもしれない。
それくらいに姉さんは、想像以上に綺麗になっていたのだ。
・・・
「姉さんは、柔らかかったな……」
そして、電車の中での、姉さんの事を思い出した。
こんな暑いのに、汗臭さを感じない。
それどころか、良い匂いもしていた。
僕は、姉さんの匂いを思い出す。
姉さんの匂いは甘くて、まるでキャラメルの様な匂いだった。
それに、あれだけ当たっても、衝撃を感じない軽い体重。
そして、柔らかい体……。
姉さんが、僕に倒れた込んだ時。
その柔らかさに、鼓動が高鳴ってしまった。
ーー何なら、一緒に入ってみん?
こん娘、昔より成長しとるけんね、特に胸が。
伯母さんが、からかう様に言った、その言葉が。
電車での感触を、思い出させたのだ。
「姉さん、着ヤセするタチなんだ……」
姉さんが、電車で僕に身を任せていた時。
姉さんの二つの膨らみが、僕に当たっていたのである。
それも、外見から予想もしない、大きな物が。
だが、そんな事を思い出していたら、何だか落ち着かなくなってしまった。
「疲れているから、早く寝ないと」
そう呟くと、僕は横に寝返りを打った。
落ち着けようと、別の事を考えようとするけど。
目の前には、綺麗になっていた姉さんの顔が。
鼻先には、甘い姉さんの匂いが。
そして、腕や体には、姉さんの柔らかい感触、特に見かけより大きな膨らみが。
それらが、必死で考えないようにしていた、僕の脳裏に蘇ってくる。
・・・
「ダメだ、眠れない!」
何度やっても、目の前に姉さんの姿が現れ。
それと同時に、姉さんの感触が再現される。
そして、その度毎に、僕は落ち着かなくなってしまった。
やればやるほど、返って目が冴えてしまったのだ。
それから僕は、冴えた目のまま。
眠れない夜を、送らなければならなかったのである。