表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/24

第2話、ひさしぶりだね



(カタン……、カタン……)




 微風だが、まるでドライヤーの様な熱風が吹く中で。

ここでの色々な思い出を思い出している内に。

むこうから、電車がやって来るのが見えた。


 そして電車が着き。

中から乗車していた人間が、反対側のホームに出てくる。




「(ん?)」




 電車が去った人混みの中に、一際目立つ人の影を見つけた。


 それは、高校生くらいの女の子である。


 背中までの黒髪を、前髪で切り揃た髪型で。

白地に花柄の上品で涼しげなワンピースを着ていて。

それが、全体にスラリとした体型に良く似合っていた。


 足元は、素足にグレイの色をした、(かかと)が有るサンダルを履いていて。

太くなく、かと言って細過ぎない足にフィットしている。


 顔は垂れた目元が特徴的な、整った顔の清楚な美人である。


 そんな娘がワンピースをヒラヒラさせながら、こちらのホームに来たのだ。


 そうなると当然、周囲の男達の目が、その娘に集まる。




「(あれ?)」




 僕も、その娘に目が向くが。

“しかし、どこかで見た様な顔だな……”と思っていた。


 その娘は、こちらのホームに来ると、キョロキョロと周囲を確認し出す。


 その娘が電車待ちの人の中を探している内に、自然と僕と目が合った。


 僕を見た、その娘が一瞬、嬉しそうな顔になるが。

次の瞬間、自信なさげ顔に変わった。


 しかしそれでも、その娘は僕の方に近付いて来る。


 そして僕の前に立ち止まると。




「あの……、ひょっとして、古閑 雅人さんですか……」




 遠慮がちに尋ねてきた。




「はい、そうですが?」




 僕がそう答えると。




「やっぱり、ま〜くんやったんや(だったんだ)ね。ひさしぶり」




 姉さんが、満面の笑みを見せるながら、そう言った。




「やっぱり、姉さんだったの?」


(なん)ね[何よ]〜、私の事()忘れたとね()〜」


「ち、違うよ、姉さんが、とても綺麗になってたから……」


「そ、そぎゃんか(そんな)なかと(ないよ)……」




 最初、僕が姉さんを、分からなかった事を()め出したので。

僕が弁解すると。

その言葉を聞いて、姉さんが顔を(うつむ)かせた。




そぎゃんかこと(そういう事を)言う、ま〜くんこそ。

しばらく()ん[見ない]内に、()か[良い]男になったけん。

最初、分からんかったとよ(分からなかったんだよ)……」




 俯かせた顔を覗き込むように上げて、姉さんがそう言った。




「しかも、こぎゃん(こんなに)(おお)きゅう[大きく]なってしもうて……」




 次に、少しでも僕の目線に合わせようと、背伸びをしてきた。

そして、(わず)かに近づいた、姉さんの顔を見る。


 目の前に、性格を表すかのように少し目尻が垂れている。

綺麗で整った顔が、接近しようとしていたのである。




「姉さん、近いよ、近い」


「あっ!」



 僕は、綺麗な姉さんの顔が接近したので、姉さんにそう言うと。

姉さんがそれに気付き、慌てて一歩下がる。




「どうしたの姉さん?」


「ま〜くんが、良か(良い)男になったけん(から)……」




 僕以上に、過剰反応している姉さんに尋ねても。

先ほどと、似た答えが返ってきた。


 そして、一歩下がったその場所で、姉さんは再び俯いてしまった。



 ・・・


  

 しばらくの間。

お互い、無言で向かい合っていたら。




(……カタン、カタン)




 向こうの方から、電車が来る音が聞こえる。


 姉さんが来た、反対側の方から電車が。

丁度、電停に到着しようとした所であった。


 周囲で、少しバラけていた乗客達が。

一ヶ所に集まり出していた。




「あっ! 電車が来たごたる(みたい)

ま〜くん、(はよ)う[早く]、行かんと(行かないと)




 それまで俯き加減だった、姉さんが。

電車が来たのに気付き、顔を上げる。


 それと同時に、早く行かないと、余裕のある場所を取れないので。

姉さんが、急ぐように()かし出す。


 僕も、荷物を持つと、姉さんと共に列に並ぶ。


 電車が到着し、ドアが開くと同時に。

並んだ人の列が、次々と、電車に流れ込んで行く。


 僕達も、その列の流れに乗って、電車に乗り込んだのであった。



熊本弁に関しては、参考のため。

Wikipediaの熊本弁の項を上げておきます。

https://ja.wikipedia.org/wiki/熊本弁

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これらの作品も、熊本を舞台にした作品です。
・思い出の海と山と彼女
・変わらない仲と変わった思い

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ