第19話、阿蘇へ行く(前)
参考までに。
Wikipedia国道57号の項。
https://ja.wikipedia.org/wiki/国道57号
Wikipedia阿蘇山の項
https://ja.wikipedia.org/wiki/阿蘇山
翌日の朝。
僕達は、伯父さんの車で阿蘇に向かう。
車で走り始めて、ふと気付いた。
「何か、変な曲がり角が多いなぁ」
「ああ、熊本は城下町やけんね」
運転席の伯父さんの話だと。
熊本の中心部は、城下町特有の、敵が侵入しても待ち構えられるように。
見通しが悪かったり、変な形の曲がり角が多い。
そんな歴史的経緯がある為、複雑な道が残っている訳である。
だから、よその人間が、初めて車で熊本市内に来た時。
迷う事が多いそうだ。
それに、市電が走っている事も、その状況を加速させていた。
昔は、市内を走っている時は退屈だったので、隣の姉さんと話をしていた事が多かったから。
そんな事まで、気付かなかったなあ。
・・・
しばらく走ったら、変な曲がり角が無くなり。
更に行くと、道の両サイドにショッピングモール、大型店など。
郊外型の店が目立ち始めた。
今走っているのが、阿蘇に向かう国道57号線である。
「早めに出たつもりやったとに、混んどる《混んでいる》なあ」
運転している伯父さんが、そうボヤいた。
市内周辺は、道の整備に車の台数が追いつかず。
朝夕は、すぐに渋滞してしまうそうである。
特に57号線は、平日は通勤、休日は阿蘇への観光客で。
一年中混みやすいんだとか。
「ま〜くん、今日は天気が良かね」
「うん、晴れて良かったね」
そんな伯父さんをよそに。
後ろの方で、僕と姉さんは呑気に話をしていた。
*********
57号線を走って行くと、次第に民家が少なくなり。
そして、山に入って行く。
阿蘇の外輪山を走行しているのだ。
そして、しばらく山の中を走ったら。
今度は、一転して平地に出ていた。
伯父さんが、阿蘇のカルデラに出たと言った。
確かに、目の前には薄っすらと、煙が出ている山が見え。
周囲を、屏風の様にそり立った山が取り囲んでいる。
車はカルデラの中を走り、まずは大観望に行く予定である。
カルデラの中は結構広く。
火山の中にいる事を思わず、忘れてしまう位である。
・・・
もう一度外輪山を登り、大観望に到着した。
大観望には、沢山のアンテナが立っていて、遠くからでも場所が分かった。
「姉さん、足場が悪いから気を付けてね」
「ま〜くん、ありがとう」
地面に降りると、足場が石ころだらけで悪い。
姉さんは一応、山に行く事を考慮して。
踵が無く、シッカリとしたシューズを履いていたけど。
念のため、注意した。
ちなみに今日の服装は、涼しげな花柄のワンピースの上に。
ミリタリーシャツを羽織っている。
その可愛らしい格好に、思わず抱き締めたくなった。
「二人で見に行かんね」
伯母さんが、何かを含んだ様な笑顔を見せながら。
そう言って、僕たちを行かせた。
一方の伯父さんは、まだ先があるので。
車で一旦、休憩するそうだ。
そう言う訳で、二人だけで風景を観に行った。
*********
「うわ〜」
僕は、その光景に驚きの声を上げる。
目の前に、雄大な阿蘇の風景が広がっていたのだ。
遠くには、煙を上げている山が見えていた。
それらの美しさに、僕は思わず声が出たのである。
「うふふ、どぎゃんかね」
「うん、とても綺麗だね」
姉さんの言葉に、そう返事をする。
「ねえ、ま〜くん。
阿蘇って、外輪山ば含めるか、もしくは阿蘇五岳の総称で、阿蘇って単独の山は無かとばい」
「へえ〜」
「でね、根子岳、高岳、中岳、烏帽子岳、杵島岳が阿蘇五岳で。
高岳が一番高こうて[高くて]、標高は1592mで”肥後の国”で覚えられるけん」
「はははっ、なるほど」
「それ|と、五岳ば見よると、何んか人が寝よる姿に見えんね?」
「確かに見えるね」
「だけん、あれば、涅槃仏に例えよるとたい」
などなど、姉さんが薀蓄を傾けていた。
・・・
そうやって、熱心に話す姉さんがとっても可愛い。
そう思っていると、さっきの服装を見た時の事を思いだし。
より一層、姉さんを抱き締めたくなる衝動に駈られてしまう。
「あれ、ま〜くん?」
僕は自然と体が動き、姉さんの後ろに廻り、そして。
「……ま〜くん」
姉さんを抱き締めていた。
「姉さん、嫌だった」
僕がそう言うと、姉さんが首を横に振る。
僕は姉さんが嫌がってないのを確認してから。
姉さんの頭に、自分の頬を乗せる。
そして姉さんも、僕の手に自分の手を沿えた。
「……ま〜くんは、いつも温か[温かい]ね」
姉さんが、僕の手を軽く握りながら、ポツリと呟く。
・・・
僕は姉さんを抱き締めたまま、風景を眺めている。
強い風が吹いて、僕達に当たるが。
その中にいると、まるで二人だけの世界にいるみたいだ。
姉さんの方も、僕の感触を確かめるかの様に、手を撫でながら。
同じ方向を見ている。
そして二人はその状態のまま、同じ風景を眺めていたのであった。
(※今回の写真も、Wikipediaからの転載です)
大観望の項
https://ja.wikipedia.org/wiki/大観峰
http://e-kumamoto.info/db/one/317.html
阿蘇五岳の項
https://kotobank.jp/word/阿蘇五岳-676524
正直な所、外輪山付近の風景はイマイチ印象が薄い為。
山の中と言う記憶しかなく、表現がカナリいい加減です。