第11話、二人で遊びに行く
「雅人くん、起きたね〜」
布団に仰向けのまま、ボンヤリとしていたら。
起こしに来た、伯母さんの声が聞こえた。
僕は返事をすると、布団から起き上がる。
寝床から出て、布団を畳んだ後。
服を着替えてから、顔を洗いに洗面所へ向かった。
*********
「ま〜くんは、納豆が苦手やったんやね……」
市電に乗って、移動している最中。
突然、姉さんが、そんな事を言って来た。
・・・
朝食が済んだ後。
しばらくして姉さんが、熊本城に一緒に行こうと誘ってきたのだ。
それで、二人で熊本城に向かっている所である。
今日乗った電車は、白い二両編成の新型の車両で。
床が低いので、乗る時とても乗りやすかった。
そして僕達は、電車の中で、つり革を持って立ちながら会話をしていた。
「えっ! どうして、分かったの?」
「……うん、 食べとる時、何か、一口一口の間が妙に長かったけん」
「うん……、食べられない事は無いけど。
何か、匂いがダメなんだな……」
朝食の時、食卓に納豆があった。
僕は、納豆が苦手だが、出された食事は食べないとイケナイと思い。
意を決して、食べたのである。
しかし、姉さんには気付かれたみたいだ。
「でも確か、こっちの方は良く、納豆を食べるんだったね」
「そぎゃんたいね……、熊本ん者[の人間]は、納豆が結構好きやけんね」
何かで聞いたことがある。
西日本の方は、基本的に納豆は余り食べないのだけど。
熊本だけは、例外的に納豆を良く食べるとか。
*********
「でも伯父さんは、今日も仕事だったね」
「うん、何〜んか[何か]、朝早う、電話が掛かってきて。
慌てて飛び出して行ったもんね……」
伯父さんは、どうやらまた工場の工事でトラブルが起きたらしく。
今日もまた、休日出勤して行った。
「だけんがら、私が代わりに連れてってあげるけんが……」
姉さんは、伯父さんの代わりに、僕を色々案内しようとしている様だ。
ちなみに、伯母さんは、
「二人だけで、どこさんか行かんね」
意味ありげな笑みを浮かべながら、僕たちを見送ったのである。
「……ねえ、ま〜くん、今日の服はどぎゃんね?」
僕が、出かける前の事を思い出していたら。
姉さんが急に、そう言って来た。
今日の姉さんの服装は、一見すると。
上は、短くて膨らんだ袖に、丸い襟の飾りの多い、白いブラウスで。
下は、ダークブルーのミニスカであり。
肩には、茶色いトートバッグを掛けていた
また足元は、白い小さなリボンの付いたサンダルである。
しかし、困った事に、タダでさえ襟元を開けている上。
豊かな胸が、それを押し上げている為。
上から見ると開いた胸元から、その・・・、谷間が見えるのだ・・・。
しかも姉さんは、妙に僕に接近するものだから。
その深い谷間が、ハッキリ見えるのである。
「ねえ〜、ま〜くん……?」
「えっ!」
僕が、姉さんの胸元に気を取られていたら。
姉さんが、伺うような視線で、僕に尋ねてきた。
僕は、今日の服の感想を求められているのに気付き。
姉さんに答えた。
「きょ、今日は、姉さんらしくて、とても清楚で可愛いよ……」
「うふふ、ま〜くん、ありがとう〜♪」
慌てて答えたけど。
それでも、姉さんは満足したみたいで、上機嫌になった。
あ〜、ビックリしたなあ〜。
イキナリ、姉さんが聞いてくるから……。
僕は、自分が姉さんの胸元を見ている事に、気付かれていないのに安心する。
「ねえ〜、ま〜くん、何ばボ〜としとると〜」
「い、いや、何でもないよ〜」
「?」
虚を付く、再びの姉さんの声に。
またビックリした僕は、慌てて答えるが。
それを聞いた姉さんが、不思議そうな顔をした。
・・・
その後も、意識しない様にしていたが。
どうしても、姉さんの胸元に目が行ってしまう。
だって、健康的な高校生男子だから……。
なので、見ない様に、少し距離を取ろうとすると。
今度は、姉さんが近づくので、意味が無くなるのだ。
そんな、甘い拷問を受けつつ。
姉さんと一緒に、目的の電停へと向かったのであった。