第10話、昔の夢
「さて、そろそろ寝るかな」
深夜になり、TVをみながらゴロゴロしていたら。
かなり眠くなってきた。
昼、結構昼寝をしたんだけど。
完全には疲れは取れなかったみたいだ。
寝る事に決めた僕は、客間に畳んである布団を敷き。
寝間着代わりのTシャツと、短パンに着替え、部屋の電気を消してから。
そのまま布団に入る。
そして、仰向けに寝ると、目を閉じていった。
*********
・・・
僕は夢を見ていた。
昔の夢だ。
「お姉ちゃん〜!」
「ま〜くん〜!」
ぼくは、お姉ちゃんを見つけると。
お姉ちゃんに、駆け寄り抱き付いた。
お姉ちゃんは、いつもの様に。
ぼくを抱き止めつつ、頭を撫でてくれる。
「ま〜くん、ドコさんか遊びに行こう」
「うん!」
お姉ちゃんがそう言って。
ぼくに手を差し出してくれた。
ぼくも、返事をすると。
お姉ちゃんの差し出した手を握った。
「ま〜くんは、ドコさん行きたかとね〜」
「ぼく、お姉ちゃんとだったら、ドコでも良いよ〜」
「う〜ん、じゃあ、近くの公園さん行こうかね〜」
「うん、それでも良いよ〜」
ぼくがそう返事をすると、二人、手を振りながら。
元気良く、公園と歩いて行ったのだった。
・・・
ある日、二人だけでTVを見ていた。
その日は、伯父さん達とウチの両親とで、どこかに行くことになり。
ぼくとお姉ちゃん、二人だけでお留守番することになった。
そうして、二人でTVを見ていると。
「(キャーーーーッ!)」
「きゃっ!」
「こわい〜!」
TVから聞こえる声に、思わず驚いてしまう。
たまたまTVでは、夏休み恒例の、心霊特集をやっていた。
それをぼくとお姉ちゃんは、怖い癖に見ていたのである。
「……ねえ、ま〜くん、怖〜なかね[怖くない]?」
「うん、怖いけど、おねえちゃんがいるから平気だよ……」
「そ、そぎゃんね……」
ぼくは、怖くてどうしようも無かったが。
お姉ちゃんの手を握っているから、何とか平気でいられた。
「お姉ちゃんは、怖くないの……?」
「……わ、私は、お姉ちゃんだから、怖〜なかよ[怖くないよ]。
だ、だけん、ま〜くんは安心して良かよ……」
そう言う、お姉ちゃんの手は震えていた。
ぼくのために、無理をしてくれていたのだ。
(ギュッ!)
しかし、それでも、ぼくの手をシッカリ握っていてくれた。
だから、ぼくは、怖くても安心する事が出来た。
・・・
(バタバタバタ、コケッ!)
「びえ〜〜〜〜ん!」
そして、ある日。
ぼくが、お姉ちゃんの所に行こうとして、転んでしまった。
ぼくは転んで、その場で泣き出してしまう。
「ま〜くん〜!」
それを見た、お姉ちゃんが慌てて、ぼくの方に駆け寄って来た。
「ま〜くん、大丈夫ね?」
「うっ、ぐすっ……」
そして、お姉ちゃんが、ぼくを抱え起こしてくれたけど。
ぼくは、まだぐずっていた。
「ほ〜ら〜、ま〜くんは男の子やけん、もう泣かんと」
「うっ……、うっ……」
そう言って、なおもぐずる、ぼくの頭を優しく撫でていた。
お姉ちゃんが、頭を撫でる感触が気持ち良くて。
ぼくは、次第に泣き止んでいった。
「そんじゃあ、ま〜くん行こうか」
そう言いながら、お姉ちゃんは、ぼくの手を握ってくれる。
転んだ所がまだ痛いけど、お姉ちゃんと手を繋いでいると。
何だか嬉しくて、そんな事を忘れてしまう。
「ま〜くん、お姉ちゃんがおるけん、安心せんね〜」
お姉ちゃんは、手を繋ぎながら、そう言ってくれた。
・・・
*********
・・・
「……ん?」
何かだか、目の前がが明るい。
思わず、目を開けると。
「あ、もう朝か……」
空は明るく、太陽が既に出ていた。
カーテンの隙間から、陽の光が差し込んでいる。
「しかし、懐かしい夢を見たなあ……」
僕は、先ほど見た夢の内容を、反芻していた。
でもなぜ、今頃、あんな夢を見たのかな。
ここに来ているからなのか?
いや、それだけでは無い。
多分、昨日、姉さんと手を繋いでいたからでは無いか?
そんな事を思いながら。
僕は、布団で寝ながら、天井を眺めていたのであった。