表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
甘露の革命 ―泥に堕ちた聖パティシエは、光の結晶で世界を溶かす―  作者: 時空院 閃


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/31

第21話:泥の街の近代化と、星降るハニーサブレ

いつも本作『甘露の革命 ―泥に堕ちた聖パティシエは、光の結晶で世界を溶かす―』を応援いただき、誠にありがとうございます!


皆様の熱いブックマークや感想の一つ一つが、泥だらけの村を「美食の要塞」へと変えていくルカの情熱、そして何より執筆の大きな活力となっております。


 物語はいよいよ、泥だらけの辺境が「帝都を超える近代都市」へと猛スピードで脱皮を始める、怒涛の第21話へと突入します。

 前話では、たった一切れのカステラが、帝都の圧政から逃れてきた超一流の技術者たちの魂を救いました。最強の「武力(山の民)」と「兵糧(酪農)」に加え、ついに「頭脳」と「技術」を手に入れたルカ。彼の「きれいな場所でお菓子を作りたい」という純粋すぎるエゴが、村の景色を劇的に塗り替えていきます。


 第21話の最大の見どころは、「最高位の魔導」と「失われた職人技」が、お菓子のために贅沢に使い潰される圧倒的なカタルシスです。  かつて帝都を揺るがしたノエの火力が、ルカの指示一つで「下水管の大量生産」へと投入され、ミリ単位の狂いもないセラミック排水管が地中に敷き詰められていく光景は、もはや魔法の無駄遣いという名の革命です。


 そして、パティシエ・ルカの「科学的な狂気」が、伝説の鍛冶師ゴードンをも動かします。  彼が作り上げた精密な『星型の口金くちがね』。そこから生み出されるのは、サクサクとホロホロが共存する究極の食感――『星降るハニーサブレ』です。


 ただ可愛いだけではない、表面積と熱伝導を計算し尽くした「力学的お菓子」の衝撃に、帝都のインフラを支えてきた職人たちが涙を流してひれ伏す瞬間を、ぜひその目でお確かめください。


 一方で、この光景を見つめる女商人ヴィクトリアの「戦慄」も最高潮に達します。

 無邪気に笑う七歳の少年が、「極上の甘み」という名の劇薬を使って、大人たちを狂乱の忠誠へと導き、限界を超えて酷使する支配者に見え始める彼女の絶望的な深読みも、本作の醍醐味です。


 泥の道が石畳に変わり、甘美な香りが近代的な街並みを包み込む。

 美食という名の燃料で加速する、辺境の爆進劇。

 それでは、第21話「泥の街の近代化と、星降るハニーサブレ」、開幕です!


泥の村は、まさに前代未聞の「大革命」の真っ只中にあった。


「いいか、勾配(傾斜)は絶対に狂わせるな! 汚水が滞留すれば悪臭と病の元になるぞ!」


元・宮廷水利技術士のドノバンが、血走った目で叫びながら図面を指差す。

その視線の先では、かつて帝都を揺るがした元大魔導師ノエが、泥だらけの地面に向かって杖を振り下ろしていた。


「灼けろ!!」


ゴオオオオッ! と紫の魔法炎が吹き荒れる。

ノエの魔法は、地面の泥から不純物を弾き出して極限まで圧縮し、一瞬にして超高温で焼き固める。土煙が晴れた後には、鉄よりも硬く、表面がガラスのように滑らかな『高強度セラミック排水管』が、地中深くにピタリとミリ単位の狂いもなく連結されて完成していた。


「……あり得ん。帝国軍の切り札たる大魔導師の絶大なる火力を、ただの『下水管の大量生産』に使い潰すなど……!」

ドノバンは、震える手で自身の常識が崩壊するのを押さえ込んでいた。


その横では、山の民の戦士たちが怪力で運んできた巨大な岩山を、ノエが魔法の刃で均一なブロック状に切り出し、元・石畳職人たちが狂ったようなスピードで地面に敷き詰めていく。

ドロドロだった村の地面が、美しく水はけの良い「近代的な石畳の街並み」へと、恐ろしい速度で変貌を遂げていた。


「おい、ルカの坊主! できたぜ!」


活気あふれる広場に、しわがれた大声が響いた。

やってきたのは、帝都を追放された偏屈な元・宮廷鍛冶師のゴードンだ。彼の無骨な手には、ピカピカに磨き上げられた『純銅の平鍋』と、親指の先ほどの小さな『銀色の金具』が握られていた。


「坊主の描いた図面通り、先端に細いギザギザの切り込みを6つ入れた。寸法は髪の毛一本分の狂いもねぇぞ。……だが、こんな小さなラッパみたいな鉄くずで、一体何をするってんだ?」


ルカはその小さな金具を受け取ると、太陽の光にかざして内側を覗き込んだ。

寸分の狂いもない、完璧な美しい星型。


「すごい! 完璧だよ、ゴードンおじさん! これはね、お菓子に『魔法をかける』ための道具なんだよ!」


ルカはパッと花が咲いたように笑うと、さっそく準備しておいた食材の入ったボウルに向かった。

黄金のバターをたっぷりと練り、そこにカイル草の琥珀シロップと、黄金の蜂蜜ハニーを加えて白っぽくなるまで混ぜ合わせる。野鳥の卵黄を少しだけ加え、最後に魔法の石臼で挽いた純白の米粉マイプンをサックリと合わせる。


出来上がったのは、カステラの時のようなトロトロの液状ではなく、耳たぶほどの柔らかさを持った、黄色く滑らかな『クッキー生地』だ。


「さあ、おじさんが作ってくれたこの『星型の口金くちがね』を、バルカスおじさんが縫ってくれた丈夫な布袋(絞り袋)の先にセットして……」


ルカは絞り袋の中に生地をたっぷりと詰め込むと、両手でギュッと袋を握りしめ、ノエが熱した鉄板の上へと押し出した。


「いくよ、くるくるっ、と!」


ルカの手首が鮮やかなスナップを描く。

絞り袋から押し出された生地は、星型の口金を通ることで、表面に何本もの美しい「溝(筋)」が刻み込まれながら、鉄板の上に花びらのような、あるいは小さな星のような形(ロゼッタ型)を描いて並んでいった。


「おお……! ただの丸い団子が、一瞬にして芸術品のような花の形に……!」

ゴードンが目を丸くする。


「ただ可愛いだけじゃないんだよ。ノエ、焼いて!」

「……お菓子作りの時だけ、私を顎で使うのはやめろ。まあいい」


ノエが石窯の温度を完璧に調整し、鉄板を入れる。

数分後。石窯の煙突から、バターと蜂蜜が極限まで焦げてキャラメル化する、脳髄がとろけそうなほどに香ばしい匂いが噴き出した。


「焼けたよ! 『特製・米粉のハニーサブレ(絞り出しクッキー)』だよ!」


鉄板の上には、こんがりと黄金色に焼き上がった、可愛らしい星型のクッキーがずらりと並んでいた。

ルカはそれをカゴに山盛りにすると、泥と汗にまみれて石畳を敷いていた職人たちや、山の民の戦士たちのもとへ走った。


「みんな、休憩! お茶の時間だよ!」


疲労困憊だった大人たちが、その悪魔的な香ばしい匂いに吸い寄せられるように集まってくる。

ドノバンもゴードンも、そしてガロウも、ルカからその小さな星形のお菓子を受け取り、熱々のまま口に放り込んだ。


サクッ……。ホロッ……。


「――――ッ!!」


瞬間、職人たちの屈強な体が、同時にビクリと震えた。


「な、なんだこの食感は……!?」

ゴードンが、自分の作った口金を見つめて叫んだ。

「カステラのようなもっちり感じゃない! 歯を立てた瞬間に小気味よく崩れ、お口の中の水分を吸って、雪のようにホロホロと儚く溶けていく……! それに、この焼けたバターと蜂蜜の狂おしいまでの香ばしさ……!」


「美味い……! 疲れが、体の芯から消し飛んでいくようだ……っ!」

ドノバンも、涙を流しながら二個目、三個目とサブレを口に放り込んでいる。


「えへへ、ゴードンおじさんの口金のおかげだよ!」

ルカは得意げに胸を張った。


「星型の口金で生地に『深い溝』をつけるとね、火が当たる表面積が大きくなって、サクサクに焼き上がるんだ。それに、溝があるおかげでお口の中で崩れやすくなって、究極の『口どけ』が生まれるんだよ!」


「なっ……!?」


ルカのその解説に、宮廷のインフラを設計してきたドノバンやゴードンは、文字通り度肝を抜かれた。

ただのお菓子に、火の通り方や、口の中で崩れる力学的な計算――すなわち『完璧な建築設計』が施されていたのだ。


「お、恐ろしい子供だ……。たった一口の菓子に、ここまでの技術と計算を注ぎ込むとは……っ!」

職人たちは、最高のお菓子の味と、ルカの底知れぬ知識に完全に平伏し、涙を流しながら拝むようにサブレを味わっていた。


そして。

その光景を建物の陰から見ていた女商人ヴィクトリアは、膝の震えを必死に手で押さえていた。


(あ、あり得ない……! あれほどの過酷な大土木工事をさせておきながら、職人や獣人どもは一切の不満を漏らすどころか、ルカ坊に狂信的なまでの忠誠を誓って、歓喜の涙を流しながら石を運んでいる……!)


ヴィクトリアの目には、サブレを配る天使のようなルカの笑顔が、もはや『恐怖の飴玉で労働者を洗脳し、限界を超えて酷使する、冷徹なる悪魔の支配者』にしか見えなくなっていた。


(このお菓子は、労働者の疲労を麻痺させ、死ぬまで働かせるための『最恐の劇薬』……! ルカ坊は、この劇薬を使って、たった数日でこの村を帝都顔負けの『絶対要塞』へと作り変える気なんだわ……!)


「みんな、サブレを食べたら、もう一息頑張ろうね! 道が綺麗になったら、次は『最高のアイスクリーム』を作ってあげるから!」

「「「「おおおおおっ!! ルカ様のために、石畳を死ぬ気で敷き詰めるぞ!!」」」」


もはやルカを「様」付けで呼び、狂乱の歓声を上げる職人たち。


ヴィクトリアは一人、その恐るべき統率力と、逆らうことのできない「極上の甘み」の前に、ただただ戦慄するしかなかった。

泥の村の近代化は、ルカの「美味しいお菓子」を燃料にして、帝都の常識を遥かに超える速度で爆進していくのだった。


 『甘露の革命 ―泥に堕ちた聖パティシエは、光の結晶で世界を溶かす―』

 第21話「泥の街の近代化と、星降るハニーサブレ」を最後までお読みいただき、ありがとうございます!


 物語はついに、泥だらけの辺境を「帝都を超える近代都市」へと作り変える怒涛の展開を迎えました。


 今回の最大の見どころは、なんといっても「お菓子作りのための贅沢すぎる技術投入」です。


 かつて帝国を揺るがした大魔導師ノエの絶大な火力が、ルカの指示一つで「セラミック排水管の大量生産」へと注ぎ込まれる様子には、元宮廷水利技術士のドノバンでなくとも度肝を抜かれたことでしょう。

 また、ルカの設計図を完璧に具現化した「星型の口金」から生み出される「星降るハニーサブレ」も登場しました。


  表面に美しい溝を刻むことで、火の通り方や口どけを力学的に計算し、究極の食感を実現するという点に、ルカのパティシエとしての底知れぬ狂気と技術が凝縮されています。


 一方で、そんな光景を見守る女商人ヴィクトリアの「戦慄」も加速しています。


 彼女の目には、無邪気にお菓子を配るルカが、「極上の甘み」という劇薬を使って労働者を洗脳し、限界を超えて酷使する冷徹な支配者に映り始めています。


 このルカの純粋な執念と、周囲の大人たちによる「絶望的な深読み」のギャップも、本作の醍醐味として楽しんでいただければ幸いです。


 次話、第22話では、美しく舗装された石畳の街並みで、ついに待望の**「最高のアイスクリーム」**作りが始まります!


  ノエの氷魔法を活用した「冷たい奇跡」が、泥の村にさらなる衝撃を与えることになります。


 もし「サブレが食べたくなった!」「職人たちの変わりっぷりが面白い」と思っていただけましたら、ブックマークや評価、感想などをいただけますと、執筆の大きな活力エネルギーになります!


 次回、第22話「氷の魔術と、帝都からの監視の影」にて、皆様とまたお会いできるのを楽しみにしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ