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第八王女と軍師

「コーメイ様!コーメイ様!どこにおられるか!第八王女がお呼びです。軍議の時間ですぞ!!」


俺の名前は諸田光明もろたみつあき28歳、童貞、元ニートで、今は「軍師」をやらされている。ちなみに童貞もまだやっている。


数少ないオタク友達は俺のことをコーメイと呼んでくれていた。


そんなこんなで、ここでもコーメイと呼ばれている。


この城じゃ俺は、いつの間にか“第八王女付きの最強軍師”ってことになっている。


誰が言い出した。俺だって聞きたい。


会議場に入った俺に、上座、まあいわゆるお誕生日席から声がかかる。


「コーメイ殿、軍議の時間になっても現れぬから心配してハンゾーに探させたのじゃ」


高いというより幼い声色から想像できない、尊大な言い回しでその主は語り掛ける。


この方は、俺のこの世界での上司、王位継承戦じゃ最下位同然の第八王女の、のじゃロリ(違法)様だ。


8歳としては異常なほど頭がよく、論理的な思考をもっている。


「エイテ様、申し訳ございません。今後策を考えており、時間を失念しておりました」


「先ほどはどうも逃げようとしておりませんでしたかな?」


「ハンゾーさん、姫を置いてそんなことするわけないじゃないですか、ははは…」


ハンゾーは姫付きの執事だ。じつは忍者なんじゃないかと疑っている。


「今日の議題は、商家についてじゃ。この一手で、継承戦の“資金”が決まる。姉上たちの陣営に先を越されたら終わりじゃ」


「実際に今いくつかの小さい商家から我が陣営に、参加したいと打診が来ておる。


私自身が言うのもなんじゃが、我が陣営は弱小故、味方は多い方がよい。


そこですべての商家に参陣を許可しようと思うがどうじゃ?」


「エイテ様、私は賛成でございます」


イエスマンじじいことハンゾーが言った。こいつは姫が死ねといったら食い気味に死ぬ。


ひっじょーに面倒ではあるが、しっかり進言をしないとより厄介な状況になってしまう。


無意識に吐きそうになった溜息を殺し、発言をする。


「エイテ様、資料拝見いたしました。こちらのゼンニーン商会以外はお断りしてください。」


俺は手元の資料をひらひらさせながら進言をする。


これは進研ゼミでやった問題だ。


「ゼンニーン商会以外は、ほかの王女の派閥の息がかかっている裏工作です。」


「特にフォス様、こちらのアクニーン商会はあなたの手先の紹介ですよね!どういうトラップですか!?」


俺は会議室の一角に使用人を侍らせ、ニヤニヤと俺のほうを見ているエイテ様と同腹の姉君フォス様(19)を追求する。


「あらあら、やはりコーメイ様には敵いませんわ。今すぐにでも私と婚姻してくださいませ。」


目が本気すぎてこわい。


会議室の全員が引いているぞ。


「……姉上、お戯れはこれくらいにしていただきたいのじゃ。それに我が陣営を支援してくれるお約束ではなかったのかの?」


「あらあら、ほんのお遊びだったのですよ、ごめんなさいね。それにね、コーメイ様の雄姿を見たかったの」


優しげな眼もと、流れるような御髪、そして巨乳。


性格が異常で怖いことを除けばすぐにでも結婚したい人材といっても過言ではない。


ゲームのときも人気投票では上位に常連のキャラクターであった。


その時、会議場の重厚なつくりの扉がバンと勢いよく開く。怪力で開けられると、重厚な扉も一瞬ベニヤみたいに見える。


「エイテ様!!!大変です!ご相談があった商家の内偵を進めておりましたが、不正の証拠が出るわ出るわ!!


あいつらエイテ様に不遜な真似をしやがって、今すぐ討伐します。出陣のご下知をください!!!!!」


この歩く騒音発生器は女騎士レイア。当代最強格の剣士(24)だ。


炎のように赤いショートヘアと意志のこもった瞳、怪力のわりにスタイルの良いからだ、胸もちょうどいい大きさ。


ゲームの時はお気に入りのキャラで、こいつがいればたいていの死亡フラグは切り伏せられる。


そんな打算から、俺はこの陣営にいる。まあいろいろと計算違いはあるんで、それはおいおい説明する。


レイアのこの性格も計算違いの一つだ。


こいつゲームの時、こんな闘牛と暴走列車を足して2をかけたような性格だったか……?


「レイア落ち着くのじゃ、ゼンニーン商会についてはどうであった?」


「ゼンニーン商会ですか?あの者たちは完全に白です。善人の集まりですよ。そんなことより!」


「レイアもうよい。それにしても、また、我が軍師は神のごとき洞察であったな」


「これはもう、資金管理についてもお任せしてしまうのがよろしいかもしれませんぞ」


「ハンゾー余計なこと言うな」


「確かにハンゾーの言う通りじゃ。商家の件含め、資金繰りについてもコーメイ殿に権限を授ける。次からも頼むぞ」


「はぁ」


特大の溜息をひとつ。


溜息つくと幸せが逃げるのではない、幸せが逃げているから溜息をつくのだ。


今回もゲームで出てきた似たようなイベントの応用で、何とか軍議を乗り切ることができた。


こんな感じで、ゲーム知識を使って今日までやってきたんだけど、


気づいたら役職が軍師にはなるわ、なんやかんや権限は増えていくわ、


怖いお姉さまに好かれるわで、あんまり生きた心地がしない。


王位継承戦って、もっと静かな殴り合いだと思ってた。


違った。この城は政治劇の皮をかぶったコントだ。 しかも、ミスるとゲームオーバーだ。


実際に選択肢を間違えたら、処刑されるか、王位継承戦の敵陣営に殺されるか、どちらにせよ長生きはできない未来が待っていることは確実だろう。


察しているとは思うが、気づいたときには俺はなぜか(多分、小説投稿サイト特有の謎の強力引力によって、)


前世で好きだったゲーム「魔法の国のロイヤルバラージ」略して、【マホロバ】の世界に転生していた。


今は、細かいことを省くけど、このゲームは超自由度と数えきれないくらいの死亡フラグが乱立する死にゲーなんだ。


この物語は、絶対に童貞のまま死にたくない俺が、死にゲー世界をゲーム知識を使って何とか波風立てず生き残るためのお話だ。


そんな俺の気も知らず、何とか逃げ延びるたびに、俺の肩書きが増える。


そして肩書きが増えるほど、継承戦から降りられなくなって――波風の中心に引き寄せられるんだ。


助けてくれ。

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