調査報告
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特別緊急依頼
この書類を発見した者はこれ以上の探索を即刻中止し、直ちにダンジョン『底無しの穴蔵』からの離脱、及び王国騎士団へ報告の上、この書類を提出して欲しい。
これは王国法に則った正式な緊急依頼となるため、発見者、及びそのパーティに相応の報酬を約束するものとする。
140階層にて、ユニークモンスター『意志を継ぐ者』(仮称)との戦闘により、我々『王国騎士団特別調査隊 第17番隊』は壊滅状態となった。
ユニークモンスターとの遭遇、そして部隊の壊滅という緊急事態により、我々調査隊は調査の続行より情報を持ち帰る事が優先と判断、地上へ帰還する事とする。
以降、我々が何らかの影響により全滅した場合を想定し、この依頼書を遺す。
依頼主
王国騎士団特別調査隊 第17番隊 隊長 オルク・マザラン
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調査報告
140階層探索中、突如として遠くに異様な魔力反応(以降Xと表記する)が出現。恐らく階層を移動してきたものと予想される。
魔力反応からの推察により、Xの危険度をランクBと想定。
『底無しの穴蔵』で出現するモンスターのランクはE〜Gであり、階層を移動する能力を持つユニークモンスターの進行を阻止しなければ甚大な被害が出ると想定されるため、我々は討伐の必要があると判断した。
出現後、半刻ほど動く気配の無かったXはゆっくりと移動を開始。
我々のいる方向から距離を取るように進行するXに対し、我々は接近しつつ、向かい打つ準備を整える。
魔力反応から推察するに、Xは階層内のモンスターと戦闘を繰り返しながら進行するタイプのようだった。
我々との接敵を避けるように移動する様子から、何らかの索敵能力と知能があるタイプと判断。危険度をB+へと修正。
隠密能力に長けた隊員による偵察によりXの存在を目視確認し、対象はリビングアーマー1体であると判明。
広めの空間に陣取り、Xを迎え討つこととする。
接敵目前でXは半刻ほど進行を停止していたが、その内に進行を再開。我々の前に姿を現した。
Xの見た目は主要な部分が金属、接合部が皮でできたプレートアーマーであり、ヘルムの全面が空いていることから、スケルトンではないことが窺える。
このダンジョンを探索するには過剰な、しかし深い階層に潜る冒険者にしては安っぽい見た目をしており、妙なチグハグさがある。
しかし、王国建国以前からこのダンジョンが存在し続けており、我々が第17番隊であるように、このユニークモンスターが王国建国初期の頃の調査隊の成れの果てである可能性も否めない。
これほどの深層にいるのだ。生前は相当な手練であった事は間違いないだろう。
また、会敵しても直ぐに襲いかかってくる様子がない事から、知性のあるタイプで間違い無い。
リビングアーマーに話が通じるとは聞いた事がないが、一部のオーガやサキュバス、ドラゴンのように言葉が通じるモンスターもいる。
一応通例に習い誰何の声をかけるも、返答は無し。Xが武器を構え戦闘の意思を見せたため意思の疎通は断念。
戦闘を開始。激闘の末、討伐には成功したが結果は散々たるものだった。
Xの扱う剣に刃が付いておらず、なまくらであったため奇跡的に死者は出なかったものの、もし刃が付いている剣であったならば我々調査隊の全滅は免れない状況であった。
また驚くべき事に、Xは魔法で火、氷、岩、風、光、闇を操っており、全属性の魔法を使える事が判明。
結果として我々8名は3人が軽傷、2名が重傷、3名が瀕死の重傷を負い、戦闘後にヒーラーが素早く復帰出来たこともあり、奇跡的に死者を出さずにXを討伐することが出来た。
以上のことを踏まえ、最終的な危険度はA相当と想定。
戦闘途中、不利な状況を察したXが後方ではなく、我々を飛び越えた先の上層方向へ逃走を図ったことから、強い帰巣本能を持っている可能性有り。
今まで報告事例の無い行動であり、また過去の調査隊の成れの果てと思しきリビングアーマーであったことから、Xを暫定的にユニークモンスター『意志を継ぐ者』と呼称する事とする。
また、討伐の際に最終手段として熔熱の炎剣を使用した為、『意志を継ぐ者』は身体の殆どが蒸発。
唯一蒸発を免れた「左腕」を討伐証明として持ち帰ることとし、隊員の回復を並行しながら速やかに帰還する事とする。
尚、開示済みの140階層以外の調査報告は機密事項となっているため、封を開けてはならない。
追伸:
130階層に到着 ダンジョン内に異変なし
ユニークモンスター出現によるダンジョンの変容を危惧していたが、今の所変わった様子は見られない。
120階層に到着 ダンジョン内に異変なし
110階層に到着 ダンジョン内に異変なし
100階層に到着 ダンジョン内に異変なし
しかし、討伐証明として持ち出した『意志を継ぐ者』の「左腕」に変化あり。戦闘により潰れ、ボロボロになったプレートに付いていた細かい傷が無くなっていることが判明。いつ変化があったのかは不明。
90階層に到着 ダンジョン内に異変なし
『意志を継ぐ者』の「左腕」の潰れ具合が若干軽減されている事を確認。リビングアーマーの復活を疑ったが、魔力反応から現時点ではこの「左腕」が魔物である可能性は極めて低いと判断。引き続き注視していく。
70階層に到着 ダンジョン内に異変なし
「左腕」の潰れ具合が更に軽減。少しサイズが縮んでいる模様。魔力反応に異常は無し。
50階層に到着 ダンジョン内に異変なし
「左腕」の潰れ具合が更に軽減。指先の潰れが完全に修復。腕の部分が更に縮みガントレットの形を形成している模様。時折指先がひとりでに動くが、魔力反応に異常は無し。
30階層に到着 ダンジョン内に異変なし
「左腕」がガントレットの形に完全に修復。ダンジョン産の装備に似た魔力反応のため装備品になったのだと思われる。時折ひとりでに動く指先のさす方向に毎回宝箱がある事が判明。
15階層に到着 ダンジョン内に異変なし
冒険者に遭遇、ここしばらくダンジョン内に変わった様子は無いとの報告を得る。
ダンジョンを出るも「左腕」に変化なし
ダンジョンを出てから「左腕」がひとりでに動くことが無くなったため、ダンジョン内の宝箱の位置を示していたのだろうと思われる。
王城へ帰還。
その後、「左腕」について判明した事柄をここに記録として残しておく。
検査の結果、呪いの痕跡は無し。
ダンジョン産の宝箱が近くにある場合、そちらを指し示す機能あり。
自動修復の機能はダンジョン外でも適応されるが、修復速度は遅い。
全属性に対する抵抗力を持ち、装着者の魔法の発動を全属性で若干補助し、威力を上げる効果があることが判明。
国の宝具として認定。
アイテム名:意志を継ぐ左手




