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リビングヒーローアーマー  作者: 望月優志


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6/6

相棒

 一斉に駆け寄ってくる剣士、大剣使い、盾持ちの3人。


 最初と似た様な戦いになるのかと思いきや、意外にも先手を打ったのは俺の身体のほうだった。


 体内で練っていた魔力が、今まで感じたことの無い動きを見せる。


 これは…なんの魔法を使う気だ?火でも水でも、風でも土でもない…


 薄い魔力をここにいる全員を包むほどの範囲に広げ、魔法を発動する。


 途端に周囲が薄暗くなり、剣士たちは警戒した様子で足を止めた。


 ダンジョンの壁際に掲げてある松明が灯りをともしているはずなのに、薄暗い。


 これはなんの魔法だ?なんの効果がある?


 警戒する剣士たちを他所に、俺の中で再び魔力がぎゅるりとうねりを上げるように変化し、またもや知らない色に染まる。


 今度は何だ!!何が起きる!?


 俺の身体は駆け出すのと同時に剣先に大量の魔力を集めたかと思うと、次の瞬間。


 ビガッッ!!!


 唐突に目を焼くほどの眩しい光が発せられ、辺りを強烈な光が包み込んだ。


 目がっ!?目がぁ!?!?


 …幸いな事に、俺に目は無い。


 なので目が焼けることはなく、見えなくなる事もなかったが…突然の光に襲われる衝撃だけは凄まじかった。


 そして光が収まらないうちに再び魔力がぎゅるりとうねりを上げて変化し、先程周囲を暗くした魔法を使った色に染まり、それを近くに居た剣士の足元に伸ばす。


 強烈な光は影を生み、その影を遠くまで伸ばす。


 剣士の影を伝って進んだ暗い魔力は後方に位置していたヒーラーの足元に辿り着き、その影を浮き上がらせ。


 ここからでもハッキリと見えるほど暗いその塊は大きな槌の形を作り、ヒーラーの首元を狙って背後から振り下ろされた。


 光が収まると同時に、どさりと音を立てて倒れるヒーラー。


 …まずは1人。


 突然の目眩しに、後方からの悲鳴と倒れる音。


 怒号が飛び交う中、前衛の目が怯んでいるうちに間を駆け抜け、中間地点にいた弓使いを左手の盾で横殴りにし、斥候に剣を振り下ろす。



 待ってくれ!!殺すのは!!嫌だ!!



 これは命の奪い合い。殺そうとしてくる相手に手加減などしていられない。


 この期に及んで殺さないでくれと頼むのは、虫のいい話かもしれない。


 それでも俺は…どうしても嫌だった。



 やめろぉぉぉ!!!



 …斥候に剣が当たる直前、剣の刃が横を向き、斥候に強烈な打撃を与える。


 …これで3人。


 斥候は勢いのまま地面に叩きつけられ、ドゴンと鈍い音と共に口から血を吹き出しているが…叩き斬られるよりは生き延びる確率は高い…と、思う…


 もしかして、身体に…俺の心の声が届いているんだろうか?


 …いや、それは無いか。


 今まで散々声を掛けてきたが、答えてくれたことは無いんだ。


 俺の声が聞こえたと言うより、この身体が、元から人を殺す気がないのかもしれない。


 今まで魔物相手の時は、初手から急所を狙いに行っていた。


 それなのに今回は、何度もとどめを刺すチャンスがあったはずなのに追い打ちもせず、相手の致命傷を避けるような戦い方をしている。


 この階層に来て彼等の魔力を感知してから出会うまでの道程も、彼等を避けるようなルートを選んでいた。


 俺の身体にも、人だった頃の記憶があるんだろうか。


 俺がそんなことを考えている間にも、身体は弓使いと斥候を倒した勢いのまま、後衛の魔法使い達に迫る。


 先程の強烈な光も後衛までは効きが悪かったようで、2人はふらつきながらもこちらを睨み付けていた。


 女魔法使いが氷の壁を作り、男魔法使いが何か魔法を使っている。


 後ろから音が聞こえて振り返ると、どうやら負傷した弓使いと斥候を地面を動かすことで壁際に退避させていたらしい。


 仲間思いな奴だ、などと感心してはいられない。


 退避させたという事は、そばに居ては巻き込む恐れのある魔法を使おうとしているという事だ。


 前には氷壁、避ける先は横か後ろか…


 俺が悩む間もなく、身体は前に向かって猛烈に速度を上げて走り出した。


 次の瞬間、両側と後ろに棘付きの岩壁がせり上がり、倒れ込んでくる。


 俺の身体は魔法で氷壁の下の地面を隆起させ、氷壁を作った女魔法使いまで一直線のトンネルを作り、足元と背中で風魔法を爆発させてそこに突っ込む。


 自身を守っていた壁に突如として隙間が開き、驚き目を見開く女魔法使いに強烈なタックルをかました。


 …これで、4人。


 タックルの勢いが強すぎて、男魔法使いからだいぶ距離が離れてしまったな。


 ………


 …女魔法使いは…死んでないよね??なんか…ピクリとも動かないんだけど…


 俺の心配などお構い無しに、男魔法使いが火を矢のように飛ばしてくる。ファイアアローと言うやつだ。


 でも…おいおい、こっちには女魔法使いがいるんだぞ!?巻き込んだらどうするんだ!?


 俺の身体も女魔法使いを心配しているのかその場から動かず、ファイアアローを数回剣で弾き飛ばしたものの、如何せん相手の手数が多い。


 魔力を練り上げて分厚い氷の壁を作り出し、雨のように降り注ぐファイアアローを凌ぐ。


 氷が炎によりジュージューと音を立てながら溶け、蒸気が辺りに充満することで視界が一気に悪くなった。


 ………


 今まで魔力を大量に使った戦闘など経験がなくて分からなかったが、どうやら魔力は無限にあるものじゃないらしい。


 身体の中に注意を向けてみると、戦闘前はあれほど満ち満ちていた魔力の感覚が今ではとても薄く、魔力が残り少ないことが分かる。


 残る敵は、4人。


 剣士、盾持ち、大剣使い、男魔法使い。


 左手の盾も魔法で維持している以上、魔力が切れれば形を保っていられないだろうな。


 どう戦えば切り抜けられる?


 俺が考えても意味は無いかもしれないが、今の俺には考えることしかできないから。



 未だにファイアアローが降り注ぐ中、俺の身体がしゃがみ込み、足元の女魔法使いに近付く。


 な、何をするつもりだ??


 まさか…人質にして逃げ道を確保する…とか…


 …この盤面を上手く切り抜けるには、それくらいしか手がないような気も…いや、だけど…


 悩む俺の事など知らないとばかりに、身体の中で魔力が動き、先程強烈な光を放った時と同じような形に色を変えていく。


 その魔力は先程は攻撃的な雰囲気だったが、今回は優しげな雰囲気を纏っていて…


 女魔法使いの首元に手を当て、優しくて小さな光と共に魔力を流し込んでいく。


 これは…さっきヒーラーが使っていたような、治癒の魔法…なのか?


 やっぱりお前は…人を…


 ………


 …というか、ポーションあるだろポーション。身体の中から取り出せるの知ってるぞ?こんなに残りの魔力が少ないってのに、何でこんな時に治癒魔法なんか…


 そう思った途端に身体は治癒魔法をやめ、顔のある場所から低級のポーションを取り出して女魔法使いに振り掛けた。



 ………


 …ははっ。


 …俺達の旅もここが最後になりそうだから、使える魔法の大盤振る舞いをしてくれたってことか?


 …ありがとう。いい思い出になった。



 俺の身体は治癒魔法のために手放していた剣を再び取って立ち上がり、残り少ない体内の魔力を練り直す。


 …女魔法使いも治癒魔法とポーションで少しは回復したとは思うが、戦闘に巻き込まれてはひとたまりもないだろうな。


 そう思うや否や、俺の身体は女魔法使いに剣の腹を押し当て、後方にポイッと投げ飛ばした。



 …いやいやいや!?傷口開くだろ!?



 俺のツッコミなど気にもせず氷壁のバリケードから勢いよく飛び出し、男魔法使いの方へ風の玉を打ち出す。



 …本当、お前ってぶっ飛んだ奴だよな。


 …お前の事、もっと知りたかったよ。


 …今まで俺ばっかり話してたじゃないか。



 風の玉で霧が薄れ、相手の位置がはっきりと見えるようになった。


 隠れている時間が長かったからか前衛と男魔法使いが合流しており、陣を組んでいる。厄介だな。



 …なぁ。


 …俺の声、ずっと聞こえていたんだろう?


 …お前は何処から来て、どこに向かっていたんだ?



 盾持ちと剣士が前に出てきて、大剣使いと魔法使いが後ろに控えているのは何かの準備をしているんだろうか?


 突っ込んでくる剣士の剣を盾でいなし、カウンターを決めようとした所で盾持ちのちょっかいが入る。


 さっきは力技で押し切ったが、片手が使えない以上、同じ手は使えない。



 …お前、ずっと上を目指してただろ?


 …何が目的だったんだ?



 こちらの剣を盾で防がれ、相手の剣を盾で防ぐ。


 一見拮抗しているように見えるが、盾で防ぐ度に表面の氷が剥がれ、徐々に氷の生成が追いつかなくなっている。


 このままじゃジリ貧か。



 …ダンジョン探索で何が楽しかった?


 …好きな事とかあるのか?



 盾持ちの突進のタイミングをバックステップでズラす。バランスを崩した所を狙い、左手の盾を残りの魔力全てを込めて勢い良く射出する。


 まさか手と一体化している盾が飛んでくるとは思わなかったのだろう。顔面に岩の塊をもろに食らい、盾持ちがダウンした。


 残り、3人。



 …やっぱり宝箱開ける時とか、お前もワクワクしてたのか?


 …ポーション以外には興味なかったのか?色々出てきてただろ?



 盾が無くなり、魔力が無くなり。それでも、多少動きは鈍くなったが、疲れを知らない身体と剣技が残っている。


 剣士と剣を交え、躱し、弾き、首に一撃を入れる。1対1なら容易いものだ。


 残り、2人。



 …弓矢とか、ハンマーとか。鎖鎌なんか面白そうだったじゃんか。どうやって使うかは知らないけどさ。


 …何でもかんでも出たそばからすぐポイ捨てしやがって。


 …集めてたポーションだって、最後の最後、ついさっきたった1個使っただけでさ。残りのポーションどうするんだよ。



 残るは今まで後ろに控えていた大剣使いと、男魔法使い…のハズだったが、男魔法使いは既に倒れていた。


 代わりに大剣使いの大剣がごうごうと燃え上がり、男魔法使いはあれのために全ての魔力を使い果たしたのだろう。


 残り、1人。



 …最後の最後まで、何も言わないんだな。


 …でも…まぁ、ありがとう。



 大剣使いは燃える刀身に自身も焼かれながら、大きな大剣を振りかぶり、勢いよく燃える刀身を振り下ろす。


 大振りな一撃だ。避けて、反撃を入れる。それで…俺達の勝ちだ。



 …前世の事はほとんど覚えていないけど、ここでの出来事は前世じゃ体験できない事ばかりだったと思う。


 …ここ最近は似た様な景色ばかりだったけどさ。火山を歩き、空を飛んで、遺跡を進み。胸躍る景色に沢山出会えた。



 大剣を避けようとした足が、動かなかった。


 戦闘不能だと思い込んでいた男魔法使いが、岩で俺の足周りをガッチリ固めていたらしい。


 咄嗟に剣筋を逸らすために掲げた剣が、大剣に触れた傍から瞬時に蒸発していく。


 ああ、これはダメだな。



 …お前のおかげで、今まで楽しかったよ。



 …じゃあな、相棒。

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