表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リビングヒーローアーマー  作者: 望月優志


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/6

この階層には、ナニか、いる

「ギャッギャッ…ギッ!?」

「グギャ!?」

「ギャー!?」


 すれ違いざまに撫で斬りにし、複数のゴブリンを一瞬で片付ける。


 ダンジョンを進んでどのくらい経ったのだろうか。


 出現する敵が徐々に弱くなっていき、今ではもう出てくる魔物はザコばかり。


 全くもって面白みのない、歯ごたえのない敵にしか遭遇しなくなってしまった。


 魔法も長らく使っていない。


 崖のある階層など、移動が面倒な時にたまーに使うくらい。


 そんな特殊なフィールドも、最初の頃に比べると当たる確率が随分と減ってきた気がする。


 火山、永遠に吹雪の止まない雪原、海の中など、生身の人間ならどうやって攻略すればいいのか頭を抱えてしまうようなフィールドなんかは完全に出なくなった。


 何階層進んだのかちゃんと数えていないけれど、かれこれ200階層くらいは出てないんじゃないか?


 …暇だなぁ。


 ………


 ……


 …


 階層を上がっても新しい景色はなく、弱い敵しか出なくなり、宝箱しか楽しみが無くなってから一体どれくらい時が過ぎたのか。


 うつらうつらと覚醒と睡眠を繰り返す日々。


 どうせ次の階層も何も無いんだろうなとぼんやりとした諦観を覚えながら上がった先で、何やら違和感を感じた。


 それは俺の勘違いではないようで、今まで俺の意思とは無関係に勝手に動き続けていた身体も何かを感じ取ろうとしているのか立ち止まり、周囲の様子を伺っているようだ。


 ………


 階層自体は普通だ。


 よくある迷宮型。


 所々レンガや木材で補強されているものの、岩肌が剥き出しの壁に、それなりに整えられた地面。


 5人ほど並べば肩がぶつかるくらいの坑道が迷路のように分岐している、ダンジョンらしい階層。


 だが…何かがおかしい。


 空気がピリついている?


 何だかそわそわしてしまうような、今まで感じたことの無い雰囲気だ。


 そうこう考えているうちに身体が歩みを始めてしまったが、今までの気安い歩みとは違い、警戒するような足取りをしている。


 俺も違和感の正体がわからないままではおちおち寝てもいられず、ずっと周囲を警戒しながら進む。


 …なんだか最初の頃を思い出すな。


 あの頃は今と違い、目に映る全てが目新しかった。


 出現する魔物も強かった。


 突然、空や天井、地中から奇襲してくる敵に驚いたり、剣で倒せない相手には魔法を駆使して戦っていたっけ。


 俺ではなく、俺の身体が、だが。


 そんな俺の身体は奇襲に驚く俺とは裏腹に、全てを予見していたかのように奇襲を躱したり、逆に奇襲を仕掛けたりしていた。


 何故曲がり角を曲がった先に敵がいる事がわかったのか。


 最初は不思議でたまらなかったが、何度も身体が魔法を使う事で自身の魔力について感じ取ってきた今ならわかる。


 この身体は常に周囲に魔力を伸ばし、奇襲を受ける前に敵の位置や行動を把握していたのだ。


 視界だけに頼らず、感覚で…


 ………


 そうか。


 この階層に入ってからずっと感じている違和感の正体はこれか。


 この階層には、ナニか、いる。


 遠すぎてそれがなんなのかわからないが、遠くても感じ取れるほどに、ヤバそうな何かがある事はわかる。


 周囲を警戒し、襲ってくるコボルトやゴーレムを倒しながら進んでいく。


 敵は相変わらず弱く戦闘は一瞬で終わるが、ヒリついた空気は変わらない。


 カシャリ。カシャリ。


 いつもより控えめな足音が響くダンジョンを黙々と進んでいくと、探索の魔法に大きな魔力の反応が引っかかった。


 俺の身体も一瞬歩みを止めたが、また直ぐに足を動かし始める。


 向かう先は魔力の反応がある前方…ではなく、左の横道に入っていく。


 どうやら魔力を感じる場所を迂回しつつ進もうとしているらしい。


 大きな魔力の正体は分からないものの、今まで遭遇してこなかったボス部屋だったりするのかもしれない。


 ダンジョンにはボス部屋があるのが定番だと、薄っすら記憶の中にある。


 俺達の目的は上に進んでいくことだし、わざわざ強敵に挑む必要は無いのだ。


 …あれ?


 そういえば目的なんか知らないな…気が付いた時には上へ上へと進み続けていたし、この身体はどこを目指して進み続けているんだろう。


 今までの行動に目的のヒントが無いか思い返しながら魔力の反応する場所を索敵範囲ギリギリに捉えつつ迂回して進んでいると、大きな魔力の反応が動いた。


 …ゆっくり、こちらの方に近付いてきている?


 今まで動く気配がなかったからすっかりボス部屋だと決め付けていたが、どうやら違ったらしい。


 それとも、階層内を徘徊するタイプのボスなんだろうか。


 このまま進むと俺達と丁度ぶつかるような方向に、大きな魔力も移動している。


 偶然俺達の方向に来ているだけ。考えすぎであって欲しいと願っていたが…願い虚しく。


 いよいよ近付いてきた際、俺の身体が進む方向を変えたのだが…魔力の反応もそちらに移動し、俺達を待ち構えるような、絶対に逃がさないという強い意志を感じる動きをしている。



 それと、もう一つ。


 ここまで近付くと魔力の反応がより鮮明に感じ取れるようになった。


 まだ相手の姿も見えていないのに、今まで相手をしてきたどんな魔物よりも圧を感じる。


 そしてどうやら魔力の反応は1つではなく、複数が集まっているためにとても大きな反応として感じられたようだ。


 俺の身体が今まで使ってきた火、水、風、土に似た魔力の雰囲気や、今まで感じたことの無い魔力も複数ある。


 これは…


 ………


 ここはダンジョンだ。魔物が闊歩し、お宝も出る。それを目当てに冒険者が潜るというのが定番で…


 …つまり、この複数の反応は…冒険者、か?


 ………


 いよいよこのまま進めば5分もしないうちに接敵するような場所で、魔力の反応が動きを止めた。


 俺の身体も立ち止まり、何かを考えているようだ。


 ………


 冒険者。


 できれば出会いたくない相手だ。


 今でこそ俺は魔物のリビングアーマーだが、前世の、人間だった記憶が朧気ながらある。


 本当なら仲良くしたいし、できることなら人殺しなんかしたくない。


 こっちも冒険者のフリをしてすれ違えないかとも考えたが…無理だろうな。何せ、俺のヘルメットは前面がポッカリと空いている。


 頭はないけど健全な冒険者ですよ、なんて言い訳は通用しなさそうだ。


 俺の身体は…どうするんだろう…


 戦うのか、逃げるのか。


 ………


 ……


 …


 そして、俺の身体は歩みを進める。


 ………


 …そうだよな。


 逃げるなら、近付く前にとっくに逃げてるよな。


 コイツには、前に進み続けなくちゃいけない理由があるのかもしれない。


 ここまで一緒にやってきたんだ。どんな結果になろうとも、最後まで付き合うさ。


 …まぁ、俺は自分の意思じゃ動けないだけなんだけどね。


 自分で動くことが出来たなら魔法を駆使しながらでも全速力で逃げていたのに。


 あーあ、どんな結果になっても嫌だなぁ…仕方ないんだろうけど…嫌だなぁ…


 きっと俺の身体もそんなふうに思っているに違いない。


 全然意思疎通ができないからわからないけどね。


 途中の宝箱で出たボウガンやら弓矢やら持ってきていれば先制攻撃もできたのに、ポーション以外は全てポイ捨てするからなぁ。


 はぁ。


 頭の中でどうでもいい事を考えていると、遠くにようやく相手の姿が見えてきた。


 相手は…


 やはり、人間か。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ