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暗がり
独り法師の暗がりに
凍へて眼を凝らしてみれば
浮かび上がりし薄紐が
不気味に漂い滲むやふ
独り法師の暗がりに
震へて足を進むれば
冷やりと吸ひ付く床板に
ちくりと突き立つ針小石
独り法師の暗がりに
怯へて手指を探れども
ぼやけて映りし輪郭は
撫ぜる間もなくすり抜ける
独り法師の暗がりに
備へて明かりを灯すとて
目蓋の裏の暗闇が
逃すまいと追い掛ける
独り法師の暗がりに
堪へて耳を澄ますなら
夜闇に潜みし閑けさに
衣擦れのみが響くなり
独り法師の暗がりが
昇りし日射しに失せるとき
寒さや震へも失せるとて
胸中残るは其の暗さ




