第4話:バイブレディ、暗躍
数日後、麻呂と世之介はいつものコンビニ前で作戦会議を開いていた。
蚊の襲撃は頻度を増し、街の男女は目に見えて活気を失っている。
麻呂のメガネが捉える光景は、まるで欲望が枯れていく街そのものだった。
「ゆさまろ、俺のテンガが警告してんだ。敵はもっとでかい動きを計画してるぞ」
世之介が真剣な顔で言う。
麻呂は眉をひそめる。
「でかい動きって何だよ? てか、お前のテンガ、ほんとに喋るのか?」
「疑うなら触ってみな! 魂の振動が分かるぜ!」
世之介がテンガを差し出すが、麻呂は全力で拒否。
「いや、遠慮するわ! キモい!」
その時、背後から奇妙な音が聞こえた。
ブーン…ブーン…。
低く、しかし力強い振動音。
麻呂が振り返ると、そこには若い女が立っていた。
25歳くらい、長い黒髪に鋭い目つき。
彼女の手には、ピンク色に光るバイブが握られている。
「お前…何だ、そのバイブ!?」
麻呂が叫ぶと、女は冷ややかな視線を返す。
「あんたたちがテンガマンとメガネね。私、嘉門なでこ。
このバイブは母の形見よ。…そして、あんたたちと同じ敵と戦ってる」
「な、なでこ!? バイブ!? 形見!?」
麻呂は混乱の極み。
世之介は目を輝かせる。
「おお、仲間か! バイブに魂が宿ってるタイプだろ? 俺のテンガと話が合いそうだ!」
なでこは鼻で笑い、バイブを掲げる。
「このバイブは30年、母を支えた神聖な道具。蚊の存在に気づかせてくれた。
でも、私には戦う力はない。だから…これをあんたに預ける、テンガマン」
彼女がバイブを投げると、それは光を放ちながら巨大化。
世之介の手には、まるでハンマーのような巨大バイブが握られていた。
「す、すげえ! これがバイブパワーか!」
世之介が興奮する中、蚊の大群が再び襲来。
麻呂が叫ぶ。
「テンガマン、UFOは正面! マッチ棒が三体いる!」
世之介は巨大バイブを振り回し、蚊を一掃。
なでこが冷静に言う。
「そのバイブは武器として使えるけど、使いすぎると充電が必要よ。私が…その、使うことでね」
彼女の頬がわずかに赤らむ。
麻呂は目を丸くし、世之介はニヤニヤ。
戦闘後、なでこは二人に告げる。
「私は蚊のことをネットで調べ続けてきた。あんたたちの戦いを見て、協力しようと決めたの。
敵の首領は《紙様》って呼ばれてるらしい。神の使者で、人間の欲望を奪って種を滅ぼそうとしてる」
「神!? 紙様!? 何それ、マジやべえじゃん!」
麻呂の声が裏返る。
なでこは静かに続ける。
「これから私がサポートする。バイブレディとしてね」
こうして、三人の奇妙なチームが結成された。
だが、なでこのバイブが秘める真の力は、まだ誰も知らない。