第13話:欲望の残響
紙様と神の影を倒した遊佐麻呂、筋川世之介、嘉門なでこの三人。
街には少しずつ活気が戻りつつあったが、麻呂のメガネが捉える世界には、まだ微かな歪みが残る。
なでこのアジトで、三人は一息つきながらも警戒を解かない。
「やっと終わったかと思ったけど…なんか嫌な予感がするんだよな」
麻呂はひびの消えたメガネを手に呟く。
30年のエロ動画鑑賞で鍛えた視力は、進化したメガネを通じて何か新しい気配を捉えていた。
世之介はテンガを握り、ニヤリ。
「ゆさまろ、ビビってんじゃねえ! 俺のテンガ魂はまだ燃えてるぜ!」
なでこはパソコンを叩き、ネットの情報を確認。
「紙様は倒したけど、掲示板に妙な噂が流れてる。
『欲望の残響』って呼ばれてる現象…蚊は消えたのに、
人々の欲望が不安定になってるらしい。性欲や生きる気力が暴走してるケースも…」
「暴走!? それ、めっちゃヤバくね!?」
麻呂が叫ぶ。
その時、アジトの外で爆音が響き、窓から紫色の霧が流れ込む。
霧の中から現れたのは、蚊とは異なる新種の敵――「欲望の精霊」とでも呼ぶべき、半透明の幽霊のような存在だ。
そいつは人間の形を模し、目がギラギラと輝いている。
「なんだこれ! 紙様の残党か!?」
世之介がバイブレードを構えるが、精霊は実体を持たず、刃がすり抜ける。
麻呂のメガネが精霊の動きを捉えるが、視界が再び乱れ始める。
「くそっ、また妨害か!? 紙様の仕業じゃねえよな!?」
なでこが叫ぶ。
「これは紙様の欲望エネルギーの残骸! 人間の欲望が暴走して実体化したんだ! 私のバイブで…!」
彼女はバイブを起動し、バイブレードを輝かせるが、精霊は振動にも反応せず、麻呂たちに襲いかかる。
精霊の触手が触れた瞬間、麻呂の頭にエロい幻覚が洪水のように押し寄せ、意識が朦朧とする。
「うわっ、なんだこれ! 30年のエロ魂が…暴走してる!?」
絶体絶命の中、なでこが叫ぶ。
「ゆさまろ、テンガマン、魂を一つに! 欲望を制御するの!」
麻呂はメガネを握り、世之介はテンガを、なでこはバイブを掲げる。
三人の道具が共鳴し、魂刃が再び輝く。
麻呂のメガネが精霊の核を捉え、「そこだ、テンガマン! 精霊の中心!」
世之介が魂刃を振り下ろし、精霊を一刀両断。
紫の霧が晴れ、街に静寂が戻る。
だが、麻呂は息を切らし、「…これ、紙様の残したトラップか? まだ何かありそう…」と呟く。
なでこが頷く。
「欲望の残響は、神の意志の欠片。完全に消すには、もっと深い秘密を解く必要があるかも…」




