第1話:メガネが映す真実
遊佐麻呂、45歳、無職。
人生の半分以上をエロ動画鑑賞に費やしてきた男だ。
彼の相棒は、30年間使い続けた“エロ専用メガネ”。
このメガネを通して見る世界は、いつも刺激的で、麻呂にとってはまさに“真実”そのものだった。
その日も、いつものようにAV鑑賞でセルフバーニングを終えた麻呂は、コンビニへ向かうために外へ出た。
東京の雑踏、汗と喧騒が入り混じる街並み。
いつもと変わらない日常のはずだった。
だが、ふと視界に異変が飛び込んできた。
「…なんだ、あれ?」
麻呂のメガネ越しに見えたのは、街ゆく男女の背中に張り付く、30センチほどの巨大な蚊だった。
キーキーと不気味な音を立て、ストロー状の口を頭に突き刺し、何かをチューチュー吸っている。
子供や老人にはついていない。
大人の男女だけだ。
「は? 何これ、ホラー映画かよ!」
慌ててメガネを外す。
すると、蚊の姿は消え、街はいつも通りの喧騒に戻る。
もう一度メガネをかけると、またあの蚊が!
空を見上げると、小型UFOのようなものが浮かんでいて、
蚊はそこに吸い取った“何か”を運んでいるようだ。
UFOの上には、細長くてマッチ棒のような異形の存在が仁王立ちしている。
背には小さな羽、尻には鼠のような尻尾。
人間とは思えない。
「やべえ…俺のメガネ、ただのエロ用じゃなかったのか…?」
混乱する麻呂の目の前で、さらなる異変が起きた。
ぶよぶよしたミシュランマンのような巨漢が現れ、蚊を次々と叩き潰し始めたのだ。
そいつの動きは鈍そうに見えて、意外に素早い。
蚊が群がっても、豪快に弾き飛ばし、拳で粉砕していく。
「あのデブ、なんなんだ!?」
UFOの上のマッチ棒男が鋭い声を上げ、蚊に攻撃を命じる。
蚊の大群が巨漢に襲いかかるが、巨漢は怯まず次々と撃破。
ついにUFOが姿を消すと、巨漢もどこかへ消えた。
麻呂は呆然と立ち尽くす。
メガネ越しに見た世界は、現実とは思えない異常な光景だった。
「俺…何を見ちまったんだ…?」
だが、この瞬間、麻呂の人生は大きく動き始めていた。




