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あやかの家庭事情

「お母様、こないだ話した麻里子さんです。ジョセフィーヌが迷い込んだ家の人で、勉強を教えてもらっているんです。」


ワンワン!!


ジョセフィーヌは麻里子の足に擦り寄る。

「あやかちゃんと仲良くさせて頂いてます。梶原麻里子と申します。」

麻里子が母親に挨拶する。

「貴女いくつ?」

母親はいきなり麻里子に年齢を聞いてくる。

「あの?」

「いくつって聞いてるの!!」

「41です」

「41?私と同い年じゃない!!いい年して恥ずかしくないのですか?女子中学生自宅に連れ込んで!!」

「ちょっと、お母様!!麻里子お姉様は女性ですよ。」 「あやかは黙っていなさい!!」

「貴女が勉強なんて教えるからうちの子は学校に行かないのよ!!」

「分かりました。もう娘さんとは関わりませんので。失礼します。」

麻里子が部屋を出ようとする。

「ちょっと、待って下さい。」

あやかが後を追う。





「麻里子お姉様!!」

帰路へと向かう麻里子の後をあやかが追ってくる。

「あの、先ほどはお母様がすみませんでした。」

あやかが頭を下げる。

「別に構わないわ。」

「あの、もう私に関わらないなんて嘘ですよね?!」

麻里子は黙って微笑む。

「あやかちゃん」

数秒の沈黙の後麻里子が口を開く。

「学校に行ってきちんと勉強しなさい。私と会うのは

今日限りにしましょう。その代わり借金は私がなんとかするから。」

「学校ってもうえりかお姉様が通っていた頃のような女学校はないんです。」

「過去の夢は栄華ばかり見ていたらいつか私みたいになってしまうわ。」

「麻里子お姉様は素敵な方です。美しくて優しくて勉強も教えてくれる。」

「あやかちゃん」

麻里子は突然あやかを抱き締める。

「元気でね。」

そう言ってあやかを離すと帰路を歩いていく。


 あやかが家に戻ると母親はみすぼらしいモンペから赤いドレスに着替え化粧もしていた。

「お金テーブルに置いてあるから。」

いつもの事だ。母親はあやかの夕食代をテーブルに置いて夜の店の仕事に行くのだ。

「分かった。」

「それから」

いつもは夕食代の事だけ言って家を出るが今日は違った。

「あの人はもう帰ったの?」

あの人とは麻里子の事だろう。

「はい、お母様。」

「それならいいわ。もう二度と会わないでしょうけど。」

「お母様までどうして?」

「そのお母様って言うのもいい加減やめなさい!!」

「お母様、今日はおかしいですわ。」   

「貴女が学校に行かないで知らない人の家に上がってるって噂を聞いて私がどんな目で見られてるか考えた事があるの?!」

「だって学校はもう私の理想の世界はないの!!でも麻里子お姉様は違う!!」

「もう私達は戦争が始まる前の暮らしには戻れないの!!貴女も少しは分かりなさい!!」

母親はそのまま仕事に行ってしまった。





 その頃家に帰った麻里子は引き出しの奥から拳銃を取り出し中に銃弾を入れる。次に箪笥の扉を開けると簪を取り着物の帯を解く。

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