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姉の初恋

あやかの自宅は荒らされた後だった。窓ガラスは割れ

座布団からは羽が飛び出ている。きっと先ほどの男達が来てやったのだろう。

「塵取りと箒はどこかしら?」

麻里子に尋ねるとあやかは無言で廊下まで取りに行く。居間に戻ると散らばったガラスの破片や座布団の羽を箒で一纏めにする。

「あやかちゃん」

麻里子が声をかけるが返事がない。やはり先ほど男口調で声をあげて怖がらせてしまったのか。

「ごめんなさい。貴女を怖がらせるつもりはなかったわ。だけどああでもしなければ貴女の事を守れなかったの。」

言い訳に聞こえるが麻里子があやかを助けたくて必死だった。

「お姉様」

あやかが要約口を開く。

「違うんです、借金取りを追い払う麻里子お姉様の顔つきが瓜二つで」

あやかは引き出しから少女雑誌を取り出し頁を開くと麻里子に見せる。

(!!)

「えりかお姉様が好きだった方です。」 

少女雑誌はえりかの形見だ。





昭和11年

「お姉様、何を読んでらっしゃるの?」 

居間で少女雑誌を読むえりかに幼いあやかが話しかける。

「少女の友ですわ、級の方もお姉様も皆読んでるのよ。」 

えりかはあやかにも見せてくれる。雑誌には女学校を舞台にした小説や可愛い女の子とお花の挿し絵、華族令嬢や少女歌劇の娘役の袴やドレスのすなっぷ写真が掲載されている。

「あやか、この方素敵だと思わない?」

えりかが見せたのは過去の特集の頁だ。昭和6年12月号掲載のスナップ写真と書いてある。

「お姉様、顔赤いですよ。」

「ちょっとからかわないで。私はこれから宿題をしなきゃ。」

えりかは雑誌を閉じ自分の部屋へと戻っていった。






「その方がきっとえりかお姉様の初恋の人だったのでしょう。でも不思議ですよね。戦前、それも私が生まれる前の少女雑誌に男性が載ってるなんて。」

戦争が終わるまで女学生が異性に熱をあげるなんて不良のする事とされていた。だから代替え手段として少女歌劇の男役に夢中になる事が多かった。

「ふふふ」

麻里子は再び笑い出す。

「麻里子お姉様、今度は何がおかしいんですか?」

「あやかちゃん、やっぱり面白いわね。」

「ふふふ」

何が面白いのか。あやかには分からないが麻里子の笑顔を見てると自分もつられて笑ってしまう。


「あやか、いるの?」


玄関の方から女性の声がする。

「お母様だわ。」

あやかが玄関に向かおうとする。

「待って、私も行くわ。」

麻里子も着いて行こうとする。

「あやか、いるなら返事しなさい。」

あやかと麻里子が玄関に着くより早く母がやって来る。モンペ姿に髪を一纏めにした女性だ。


「あら?お客さん?」


母は麻里子の視線を向ける。

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