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もう1人のえりか

まさみから聞かされたのは衝撃の事実だった。女学校はなくなりこれからは女の子も中学で男の子と学ぶと。しかしあやかが襲撃を受けたのはそれだけではなかった。

あやかはテニス倶楽部に入部した。そこで出会ったのはが2つ上の先輩だ。彼女の名前はえりか。姉と同じ名前だった。あやかの指導係にもあたり意気投合した。優しく指導してくれる事と姉と同じ名前。あやかが惹かれるまでに時間がかからなかった。

えりかとは帰りに一緒になる事も多く、その度妹の話をしてくれた。

「私2つ下の妹がいたのよ。あなたみたいにいつも私の後をくっついてきて、可愛かったわ。」

「何組ですか?」

えりかより2つ下ならあやかと同い年だ。同じ学校にいるだろう。

「もう、この世にはいないわ。」

えりかは俯く。えりかの妹は戦争中空襲でなくなったという。

「ごめんなさい。」

「いえ、いいのよ。あなたが妹と被ったから。聞いてもらいたかっただけ。」

 翌日あやかはえりかの下駄箱に一通の手紙を入れる。姉のえりかが教えてくれたのだ。上級生のお姉様にエスを申し込む時はお姉様の下駄箱に手紙を入れるのだと。昨晩お気に入りのピンク色の封筒に手紙を書いた。自分も姉を戦争になくしてる事、同じえりかという名である事、そして最後に自分のお姉様になってほしいと。

 あやかは倶楽部活動の時間を楽しみにしていた。えりかは自分に良くしてくれる。それに妹が自分と被ると言っていた。だからきっといい返事をもらえると思ってた。

 しかし倶楽部活動の後えりかから帰って来たのは予想に反する答えだった。

「あやかちゃん、何か勘違いさせたようでごめんなさい。これ返すわ。」

あやかが渡されたのは今朝えりかの下駄箱に入れた封筒だった。封は切られていない。つまり読まれてないのだ。

「あの、えりか先輩。」

あやかはえりかを呼び止めようとする。

「やっぱり本当だったのね。」

突然まさみが覗き込んでくる。

「何ですの?」

「もっぱらの噂よ。貴女がえりか先輩に恋文渡したって。えりか先輩は3年生の先輩と付き合ってるのよ。」  「私そんなつもりじゃ。ただお姉様になってほしくて。私言ってくるわ。」

「何よ?お姉様って」

「えっとエスって言って女学校で上級生と下級生が」

あやかはえりかお姉様が教えてくれた話をまさみにもする。

「また女学校の話?!」

まさみは若干呆れてる。

「白川さん、女学校はもうなくなったのよ。エスだか何か知らないけどそんな物はないのよ。」




昭和23年

「それからです。私が学校に行かなくなったのは。戦争が消した物は家やえりかお姉様だけではなかったのです。華やかな女学校への憧れ、それまでも消し去ってしまったのです。」

あやかは淡々と麻里子に話す。

あやかは学校に行くのをやめたが進学を諦めた訳じゃない。私立の学校ならまだ女子校があると知った。姉が通っていて自身が初等部にいたミッション系の学校は女子校で寮もあり成績優秀者は学費が免除される制度もある事を知った。今はその女子校に入るために勉強してるのだ。全ては憧れを取り戻すために。

「辛かったわね。」

麻里子があやかの手を握る。

「私もね、戦争でいろんなものを亡くしてしまったのよ。」

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