最終回 乙女のオアシス
「あやかちゃん、君はもう僕と関わっちゃいけない。僕は誰からも必要とされてない、負の遺産のようなものだ。」
麻里子があやかの手を振り払う。
「なんでそんな事言うんですか?!」
あやかが麻里子の背中にしがみつく。
「私は麻里子さんに救われました。私の話を聞いてくれたのも理解してくれたのも麻里子さんだけなんです!!麻里子さんは私のオアシスです。私が麻里子さんを必要とします。だからもう関わらないでなんて言わないで下さい!!時代が麻里子さんを必要としないなら私が麻里子さんの居場所を作ります。」
「あやかちゃん」
麻里子はあやかの手を離す。
「分かったから。あやかちゃんの気持ち。だからもうそんな顔しないで。」
麻里子は軍服の内ポケットからハンケチを取り出し涙を拭く。
数日後。霊園にて。
「えりかお姉様、今日は紹介したい人連れてきましたわ。お姉様がいつも雑誌で見てた初恋の人ですわ。」
あやかは麻里子を連れて姉のお墓へと来てた。墓石の前で花を供え手を合わせる。
あやかは隣で手を合わせる黒いスーツ姿の麻里子の横顔を見つめ頬を赤く染める。
「どうしたの?僕の顔に何かついてる?」
「いえ、ついてません。私分からなかったのです。なぜえりかお姉様が麻里子さんに夢中になったのか。女性を好きになったって一緒になれる訳ないのに。エスも女学生の内だけで卒業して殿方と結婚してしまえば関係はそれまでだ、一時期の夢だって時折話してました。」
「でもあやかちゃんはその一時期の夢に憧れていた。」
「はい。不思議ですよね。いずれは終わるのに惹かれるなんて。」
「人間ってそういうものだろう。僕が建国した満洲国も13年しか続かなかった幻の国になってしまった。そして僕が産まれた清王朝も終わりがある物に人は惹かれるのかもしれないな。あやかちゃん、大丈夫か?」
あやかは俯き加減にどこか寂しそうに麻里子の方を見る。
「私と麻里子さんの関係もいずれ終わってしまうんじゃないかと思ったら。」
「それは分からない。でも今は一緒にいれる。それでいいだろ?」
「はい、」
あやかの顔に笑顔が戻る。
「じゃあ、また私のお姉様になってくれますか?」
あやかは麻里子に拒絶されたと思いお姉様と呼ぶのを躊躇っていた。
「駄目。」
麻里子から返ってきたのは予想外の答えだった。
「本当はお姉様じゃなくてお兄ちゃんって呼んでほしかったんだ。こんな格好だし。駄目か?」
「麻里子さんがお望みならいいですよ。お兄様。」
芳子様の偽名麻里子は小説「男装の麗人」の名前から取りました。
次回後日談も少しあります。




