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麻里子の正体

「麻里子お姉様、どうしてお姉様が母の借金を肩代わりしてくれたのですか?」

麻里子は自分にはよくしてくれる、しかし母親とは何の関わりもない。それに簡単に返せる額ではない。

「あやかちゃんのお母さんがというより、お姉さんの為だな。」

「えりかお姉様とお知り合いだったのですか?!」

「以前話してくれただろ?君のお姉さんが雑誌の僕の事を初恋だって。嬉しかったんだ。」

「その方と麻里子お姉様はどう関係があるんですか?!」

「それが若き日の僕なんだ。」

「はい?」

あやかは麻里子の言う事が理解できずにいた。

「ちょっと待って下さい。」

あやかは姉の形見の少女雑誌を取り出し例の頁を見せる。そこには今の麻里子とどこか似ている軍服姿の女性が白馬に跨がっている。見出しには「男装王女、川島芳子特集」と書かれている。

「この方は今年の3月に中国で処刑された方ですよ。」

「そうだな、何から話すか。」




 1947年北京

「被告金壁輝を死刑に処す。」

ここは上海軍事裁判所。金壁輝、日本名川島芳子に判決が下った。

「待ってくれ!!僕は日本人だ!!」

芳子には3つ名前があった。日本名川島芳子、漢名金壁輝、そして本名愛新覚羅顕シ。

芳子が生まれたのは300年続いた清王朝を治めてきた愛新覚羅家、つまり王女であった。しかし芳子が産まれてすぐに清王朝は滅んだ。6才の時に父と親友であった日本人の養女になった。芳子は養父からもらった名前だ。日本人川島芳子として日本で育つも王朝復活の夢を諦めきれず女を捨て、男装の麗人と自ら名乗った。やがて成人すると日本軍の幹部達と交流するようになった。

「大陸に新国家を作る。命令に従えば清王朝を復活させてやる。」

そう耳元で囁かれた芳子は軍の仕事を引き受けるようになった。時には人だって殺した。全ては清朝復活のためだ。

 日本軍が建国した新国家満洲国には従兄弟の溥儀が皇帝に即位した。清朝は栄華を取り戻したかのように思えたが溥儀は日本軍の言いなり。実質皇帝は溥儀ではなく日本軍だった。

芳子は軍に直談判したが聞き入れてはもらえず邪魔になった芳子を消そうした。

「裁判長、僕は日本軍に利用されただけです!!僕は被害者です!!」

日本軍から見放され中国人からは裏切り者扱い。戦後芳子は国を裏切った売国奴として裁かれる事になった。芳子の死刑判決に法定中に歓喜の声が響く。

「そんなに僕が憎いか?」

芳子は傍聴人達を睨見つける。

「そんなに僕を殺したいなら今この場で殺せばいいだろ?!なあ?」

芳子は傍聴人1人1人に問いかける。

「被告人、静粛に。」

芳子は看守に取り押さえられ法廷を後にする。

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