第11話:英雄か災厄か、ゆかり評議会の開催
──帝都、王城の奥。
選ばれた十二名の諸侯・公爵・王族による臨時戦略会議が招集されていた。
議題はただひとつ。
“香風の戦姫”ユカリ=カザミを──どうするか。
「二度の軍事的勝利。王命への抗戦。
にも関わらず、民衆からの評価は“救世主”に等しい」
「国外勢力との接触も確認されている。“帝国の密使”が彼女の軍に合流したという報告も」
「彼女の存在は、もはやただの追放令嬢ではない。
国家そのものを揺るがす“象徴”となっている」
王族席に座るクラウディオ王子は、腕を組み、静かに言った。
「我らがすべきは、“排除”か“受容”か──
どちらも、遅すぎれば国そのものが割れることになる」
重苦しい沈黙が落ちる中。
観察官ロウ・ヴィスベルクが、ゆっくりと口を開いた。
「私は、“対話の余地”を残すべきだと考えます。
彼女は未だ、自ら戦争を望んだことは一度もない」
「だが、事実として軍を持ち、勝利しているのだ」
「……ならば我々の誤解こそが、戦争の原因だったということでは?」
この問いに、誰も即答できなかった。
「彼女を“災厄”と断じる前に、
なぜ“英雄”として民が信じるに至ったか──
まずはそれを直視すべきでしょう」
──そしてその頃。辺境の屋敷。
「…………」
ゆかりは一人、縁側で空を見上げていた。
ここ最近、表情の裏にうっすらと疲れがにじんでいる。
「……うちのせいで、どんどんおかしくなっていっとる気ぃする」
「誤解も、増えれば増えるほど、ほんまにしんどいわ……」
その背後に、ラフィーナが座った。
「でも……しんどいって、止まることじゃないんでしょ?」
「え?」
「戦姫様は、何度もしんどいって言ってるけど、
そのたびに、みんなが動いて、助かって、笑ってる」
「うちが笑われてるだけやろ……」
「ちがいます。笑わせてるんです。無自覚に。
たった一言で、皆の力が引き出されてる。
……それって、すごく“希望”っぽくないですか?」
「…………」
しばしの沈黙の後、ゆかりは目を閉じ、ひとつ息を吐いた。
「……ほな、もうちょい頑張ろか」
「はい!」
その夜。
ゆかりは軍団幹部を集め、短くこう告げた。
「たぶん、うちらは“もっと巻き込まれる”。
けど、うちは逃げへん。せやから──これからのこと、一緒に考えてほしい」
グレイは静かに頷き、ラフィーナは目を輝かせ、
新加入のミリアムもふっと微笑んだ。
「誤解が積み上がったら、それが“伝説”になる。
ならば──あなたは、その伝説の主役であるべきです」
──こうして、
香風の戦姫軍は、“自らの存在意義”をはじめて問い直す時を迎えた。
次に迫るのは、王国からの「最終通達」。
だがそれは、思わぬ“招待状”という形で届くことになる。




