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異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです

「あ゛~、あのクソ上司……っ。なぁにが『お局と新人ちゃんの間を取り持ってくれないと困る』よ!こっちも業務があるってのに!」


 三十路ジャスト。ストレスMAXの独身OL・如月茉莉(きさらぎまり)は、帰宅ラッシュの時間から大きく外れた電車の中で、周囲の客に聞こえない程度の声量で独り怨嗟の声を吐き出した。


 と、いうのも。ことはひと月ほど前にさかのぼる。

 しばらく前に事務のおば様が退職なさったのをきっかけに、上司が事務員を募集したのだが、それでやってきた新人ちゃんがまぁなかなかに気が強い。


 上司は、お局の姐さんに社保についての事務処理を習ってほしいと言うだけ言って後は放置。

 現在社保関係はお局の姐さん一人でやっているから、新人ちゃんに教えるのにもタイミングってもんがある。

 だから新人ちゃんには、その時間が取れるまで「この本読んで勉強しといてね」と言って書類を渡したら、「私に仕事をさせないつもりですか?ハラスメントですか?」といきなり右ストレートをぶちかました。

 すぐさま喧嘩のゴングが鳴り響き、姐さんも姐さんで気が強いから「じゃあ昨日教えた事務処理やれば?」とジャブを打つ。

 それに新人ちゃんは「あなたは来て二日目なのに完璧に仕事がこなせるんですか?指導も仕事ですよね?」とカウンター。


 結局、来て三日目だと言うのに新人ちゃんは上司に「お局さんが仕事くれないのでお仕事ください」と、社保の勉強をせずにデータ入力の仕事をもぎ取っていた。


 

 そして冒頭のセリフに繋がるのだ。

 上司に呼び出されたと思ったら、「採用したばかりの子がいなくなると、次の募集を上がかけてくれないかもしれないから、君が頑張って間を取り持ってくれないと困るよ」ときたもんだ。お前がやれ。

 

 しかし、悲しいかな私は雇われの身。上司の命令には逆らえずにお局と新人ちゃんがぶつかるたびに仲裁をし、自分の仕事は業務時間外にやらざるを得ない。

 結果、帰宅ラッシュから大きく遅れてのご帰宅と言うわけだ。唯一の救いは家が郊外にあるので電車の座席に座れることくらいだろう。



「はー、何もかも投げだしたぁい……」


 座席の背もたれにもたれかかって脱力し、再び一人そう口に出した瞬間。ピカリとお尻の下が輝いた。



◆◆◆◆◆



 座っていた席が急に消失し、ドタッ!という鈍い音と共にしたたかに腰を固い地面に打ち付ける。

 痛みに呻く私とは裏腹に周囲ではなんか知らんが人が沸き上がっていた。


「成功です!聖女様の降臨です!」

「おぉ!この方が今代の聖女か!」

「やった……っ。これで家に帰れる……っ」

「やはり我々の魔法理論は間違っていなかった……っ!」


 誰一人としてこちらを心配する様子がない周囲の人間の声に、ここ最近ストレスマッハだったこともありブチリと頭の中で何かが切れた。


「ちょっと黙ってくれない!?こちとら腰をしたたかに打ち付けてあわやぎっくり腰の危機なんだけど!?」


 途端に静まり返る人間たち。よくよく見ると、一体どこのナーロッパだと突っ込みたくなるような服装をしていた。

 しかし、今はそんなことはどうでもいい。本当に腰をやったかもしれない。三十台になるとそろそろ腰に来る歳なんだぞ!特に日中ずっと事務仕事で座ってるとね!!

 筆舌しがたい痛みに脂汗を浮かべていると、ようやく私の様子に気が付いた彼らが慌てだした。


「申し訳ございません、聖女様。大切な御身を傷つけてしまい。立てそうですか?」

 

 不意に近づいてきた優男風の男に声をかけられ首を振る。

「これ絶対腰やりました。動いたら本格的にやばいです」

「なるほど。私にしてほしいことなどはございますか?」

「冷やしてほしい……、アイシングで、何とかマシになれば万々歳です……」

「なるほど、わかりました」


 そう言うと、男は私の腰に手を添え「『氷よ』」とつぶやいた。

 するとどういうことだろうか。服越しに感じていた男の手の温もりは、まるでアイスノンを当てられたように冷たくなっていた。



 痛みと理不尽への怒りの中。私は完全に理解した。



『異世界転移だ、これ』


 何もかも投げ出したいとは言ったが、違う。こういう意味じゃない。



◆◆◆◆◆



 あの後、痛みが少しマシになったタイミングで、ずっと私の腰をさすってくれていた男性にそっと抱えられて私は医務室に運ばれた。

 そこで医者に「急性腰痛症ですね。治癒魔法かけておきますね~」と軽い調子で治された。魔法ってすごい。


「あの……、どなたかは存じませんが、助けていただきありがとうございます」

「いえいえ。こちらこそ、聖女様を急に呼び出してしまい、かえって怪我を負わせてしまい申し訳ございません」

「いえ。……あの、ちなみに、その聖女って、何ですか…………?」


 よくわからないマジカルパワーで呼び出されたことは、この短い間で理解したくないが、理解した。

 人の手が急に冷え、ぎっくり腰が一瞬出直るなんて魔法以外考えられない。

 特にぎっくり腰は急になるから、本当に羨ましい。できれば私も覚えたい。


 私の問いに、やけにきらびやかな衣装を身に纏った男性はにっこりと穏やかな笑みを浮かべ、私に向かって手を差し出した。


「国王陛下からご説明いただきますので、どうぞお手を、聖女様」


 美形の笑みはいっそ怖い。有無を言わさぬ笑顔の圧に、私は素直に頷いた。



 さきほど私が召喚された部屋から医務室までの道は痛みのあまり覚えていないが、彼曰く国王陛下がいらっしゃる部屋までの道は怖気づきそうになるほど絢爛豪華なものだった。


 シミ一つない壁紙に、よくわからないレリーフの彫刻された柱。恐ろしく写実的な絵画の数々。光を受けてきらめきを反射するシャンデリア。

 助けてくれた男性の腕に手をのせて歩く私の前後には護衛騎士が付き、警護に当たっている。

 それとは別に、要所要所の扉の前にも騎士がおり、私たちの姿が目に入ると一糸乱れぬ動きで敬礼をする。

 

 正直言って、居心地が悪い。

 事務職何て、せいぜい月収数十万だ。手取りになるともっと下がる。

 そんな一般小市民が、控えめに言っても顔のいいナイスミドルにエスコートされ、護衛されたら申し訳なさが先に立つ。

 


「聖女様、いかがなさいましたか?」

「あ、いえ……。あの、どうか聖女様と呼ぶのをやめていただけませんか?私はこれまで一般人として生きてきましたので、どうにも居心地が悪くてですね……。良ければ如月とお呼びいただければと思います」

「かしこまりました、キサラギ様。女性に先に名乗らせてしまい申し訳ありません、私はレオニス・アヴェルシュ・イグナートと申します。どうぞレオニスとお呼びください」

「はい、ありがとうございます、レオニス様。でしたら私のことも茉莉と呼んでください」


 恐らく身分の高そうなレオニス様を名前で呼ぶに、自分は名字で呼ばせているのがいたたまれずにそう申告すると、彼はにこやかに頷いた。

 

「では親しみを込めてマリと呼ばせていただきますね」

「え、あ、はい」

 

 でも呼び捨てにされるとは思わなかった。しかしよくよく考えてみれば、おそらく位の高いこの人が様付で呼ぶ方が珍しいのだろう。


「マリは、急にこのように呼び出されたと言うのに随分落ち着いていらっしゃいますね。理由をお聞きしても?」

「そう、ですね。理由と言うほどではないのですが、こう。突然のことに驚く前に腰の痛みが……」

「なるほど……、重ね重ね申し訳ありません」

「いえいえ!レオニス様にはむしろお手を煩わせてしまって申し訳ないぐらいです。それに、こういう異世界転移のお話は最近私の世界で人気だったんです。それで、混乱よりも『ああ、お話でよくある』っていう感想が先にきて。そのおかげで比較的落ち着いていられたんだと思います」

「なるほど?」


 レオニス様とそんなことを和気あいあいと話しながら、たどり着いたのは、先ほどまでの廊下で見かけたどの扉よりも立派なものだった。



「兄上。聖女、マリ・キサラギ様をお連れしました」

「入れ」


 兄上!?と驚く間もなく扉が召使の手によって開かれて、私は呆然とレオニス様のことを見上げることしかできなかった。


「さぁ、マリ。兄上、国王陛下がお待ちですよ」

「国王陛下がお兄様なのですか??」

「ええ」


 つまり、つまりはだ。散々砕けた敬語で話していたこの相手は、位が高いどころかほとんどその頂点に位置している…………。


「王族だったんですか!?」

「ええ。尤も、陛下にはすでに王太子殿下がいらっしゃるので私が玉座に着くことはあり得ませんがね」

「いやいや、だとしても王族ですよね!?え、あの、本当に申し訳ございません。王族の方に私ぎっくり腰の付き添いさせたってことですよね??」


 慌てる私をよそに、レオニス様は手を引いて王様の座るソファの向かい側に私を座らせた。


「では、私に負い目を感じていらっしゃるなら、どうか我々の話を聞いていただけますか?」


 もちろんです。と頷く以外に道はなかった。



◆◆◆◆◆



「えーと、つまり。この世界には瘴気があって、その瘴気を浄化できるのが聖魔力を持つ聖女だけで、あの魔法陣はこの国から一番近い場所から聖女を呼び寄せるものだと??」

「左様」

 

 レオニス様に兄上と呼ばれた王様が鷹揚に頷く。


「もちろん、他国も同じような魔法陣を使用しますので、王宮にはそういった魔法をふせぐ魔法がかけられています」

「つまり、私にはずっと王宮にいてほしいってことですか?」

「いいえ。転移魔法を防ぐ腕輪をつけていただき、国内を巡行していただき、瘴気を払っていただきたいのです」

 ニコニコと笑顔を絶やさないレオニスさんの横で、王様が満足げに頷いている。





「マリはこの世界ではなく別の世界からいらしたのでしょう?この世界の常識を何も知らないのであれば、庇護するものが必要でしょう。呼び出してしまった我々が庇護致しましょう」


 レオニスさんのその言葉に、くいっと国王陛下の眉毛があがる。

「別の世界だと?」

「ええ。なんでも、”お話”でよくあるそうでなので、すぐにこちらの状況を理解していただけました」

「”お話”で、なぁ」

 何とも含みを持たせた二人の会話に、一体それのどこにひっかかっているのかがわからず内心首をかしげる。

 すると、そんな私に気づいたレオニスさんが、笑みを深めた。


「あぁ、すみません。難しく考えないでください。要は、マリを聖女として呼び出してしまった責任を取り、我々王家が後ろ盾になるということです。その代わりと言ってはなんですが、マリには聖女としてのお役目をできる範囲で構いませんのでこなしていただけないかと」

「なるほど。保護を受ける代わりに聖女としての職務を果たせばよろしいのですね」

「理解が早くて助かります。ひとまず、マリには王太子殿下の婚約者として城にとどまっていただきたいのです」


 その言葉に、ぎょっと目を剥く。

「え、あの。王太子殿下って今いくつなんでしょうか。王族の、それも後継者であればすでに結婚されているのではないんですか」

「甥、いえ。王太子殿下は現在十六歳で在らせられます。婚約者候補はいますが、正式な婚姻はまだ結ばれておりませんよ」

 あたまによぎる”未成年淫行罪”の文字。一瞬思考が止まったものの、いやいやと小さく首を振る。


「申し訳ないのですが、私の国では成人が十八歳でして。それ以下の子供と大人が交わることは犯罪なのです」

「……なるほど、文化の違いですね。では、王太子殿下が十八を超えるまでは婚約、という形ではどうでしょう」

「その……、さすがに一回り以上年下の子供を夫とするのは私の倫理観的に厳しくて……」

「ひとまわり……、とはマリの国の言葉でしょうか?」


 あぁ、そういえばここは異世界か。干支を基準にした『ひとまわり』なんて表現は伝わらないのか。


「失礼しました。十二歳をひとまわり、と表現するんです。私は今年三十です。十六の子供を伴侶とは申し訳ないのですが受け入れられません」

「……とてもお若く見えますね」

「人種柄なんです」

 一体私はいくつに見えていたのだろうか。

 レオニスさんの隣で国王陛下もさりげなくではあるものの、まじまじと私のことを観察していて居たたまれない。


「では、陛下。兄上の側妃という立場はいかがでしょうか」

 そんなことを考えている私に、レオニスさんからまたまたまさかの言葉が飛び出した。

 あぁ、でも。そうか。王族なら、側室の一人や二人いてもおかしくないのか。

 確かに、レオニスさんの隣の陛下はなかなかのナイスミドル。

 レオニスさんもそうだけど、彫りが深くて精悍な顔つきをしていらっしゃる。

 でも。


「あの、国王陛下は既婚者ですよね?その、三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、その価値観に馴染みがなく……。他所様の夫婦関係に踏み入ることへの忌避感があるので、できれば遠慮したいです」

「なるほど……。文化の壁ですね」

「はい、文化の壁です。否定するわけではないのですが、私には荷が重く……」

「ああ、いえ。でしたら、残る王族は私しかいないのですが……」


 恐らく、聖女を国に取り込む手っ取り早い方法が婚姻なのだろう。

 レオニスさんが嫌なわけではないけれど、できれば婚姻自体を遠慮したい。


「申し訳ございません。やはり、聖女の役職は受け入れますが、結婚は遠慮したく思います」

「……私ではマリのお眼鏡にかないませんか?」

 しゅんと垂れた犬耳の幻覚が見える。

 レオニスさんはたぶん四十代くらいでしょう?それなのになんでこんなにあざといんだろう。

 でも、論点はそこではないのだ。


「王族の方の結婚って、一般市民との結婚とは意味が異なりますよね?」

「……そうですね。貴族、特に王家には義務がありますから」

「……私の世界には『君主は国家第一の下僕』という言葉があります。国家繁栄のためならば、大なり小なり私的な部分を犠牲になさいますよね?今回みたいな婚姻はもちろん、子供を政略の犠牲にすることもあるでしょうし、逆に自分が犠牲になることも。幼い頃から帝王学を学び、そう在れと教育を受けて育ったのであればともかく、三十年イチ小市民として生きてきた私には荷が勝ちます」

 


 考えてみてほしい。

 この世界はナーロッパ。中世ヨーロッパとよく似た異世界である。

 着るものひとつとっても、女はコルセットを締め上げ、数キロの重さのあるドレスを毎日着る必要がある。

 ドレスは用途に応じて着替える必要があるので、その数キロの服を、人の手を借りて何度も着替える。それだけでも憂鬱だ。

 その上、貴人は基本的にお世話されることも仕事に入る。トイレに風呂に寝室に、と人がいたのでは碌に休めもしない。

 しかも、女性の靴は基本ヒールだ。腰を締め上げ、数キロの服をまとって、ヒールで足を酷使する。

 いったいなんの苦行だろうか。

 仕事中でさえぺったん靴を履いているのに、毎日ヒールは耐えられない。


 舞踏会と言えば聞こえはいいけれど、あれは政治の場でもある。

 でも、王族と結婚すればそういう場に赴く公務として赴かなければならないだろう。

 今更ダンスを習ってそれを楽しめるような年齢でもないし、パーティーなんて苦痛でしかない。


 さらに、王族とは国のトップなので、もちろんそれ相応のマナーが求められる。

 テーブルマナー程度ならば、何とかなるかもしれないけれど、王国の細かな暗黙の了解や貴族特有の言い回しを完璧に覚える必要がある。

 十代の若い脳みそならまだしも、三十代の凝り固まり始めた脳にそれは酷だ。


 つまり、荷が重い。この一言に尽きるのだ。



 それらをかいつまんでレオニスさんに切々と訴えると、国王陛下もそろって少し困った顔になる。


「贅沢な生活には惹かれないと?」

「それに伴う責務とを天秤にかければ、申し訳ないのですがマイナスにしかなりません」

 国王陛下からの言葉に恐る恐る、しかしきっぱりとそう答えると、レオニスさんが『思いついた!』とでも言いたげに目をきらめかせる。




「では、私の愛人はいかがでしょう?」


「はい?」

「おい、レオニス」

 思ってもみなかった言葉に、陛下と言葉が被ってしまった。


「いやいや、兄上もマリもどうか話を聞いてください。つまり、我が国としてはマリを保護する大義名分のために婚姻もしくはそれに準ずる地位を得たい。しかし、マリは貴族となるのは遠慮したい。そうですね?」

 端的にまとめられたレオニスさんの言葉にうなずくと、にこりと笑みが深まった。


「まず、マリにお伝えしておきたいのが、私は王位継承権の都合で結婚をしていません。さらに、子供をつくる義務もないのでこの先結婚するつもりもありませんでした。ここまではよろしいですか?」

「イケメンなのにもったいない……」

「いけめん……?」

「あ、いえ。なんでもないです」

 思わず口からこぼれた私の言葉にレオニスさんが首をかしげたので慌てて顔の前で手を振った。


 それにしても、なるほど。貴族ならば血を残すことも義務だけど、逆にお家騒動になりかねないならその血を残さないことも義務なのか。

 王弟陛下でしかもこれだけ格好いいのだから、若い頃はさぞモテていただろうに。いや、なんなら今も人気がありそうだ。

 おかしな方向に思考がとびかけたが、続きを話すレオニスさんの声に思考が引き戻される。


「私の妻となれば王家の一員になりますのでもちろん責務が発生します。そこで、公妾制度です。公に認められた愛人のようなものなのですが、扱いとしては準王族となりますので、兄上が望む通り王家がマリの正式な後ろ盾になれます。そして、準王族なので、王家の公務は基本的に発生しませんし、家名もキサラギのままとなります。マリの望みも満たすいい案だと思うのですが、どうでしょう?」

「なるほど……?」


 レオニスさんの言葉を信じるのであれば、たしかにこの辺りが落としどころなのだろう。

 国王陛下の顔を窺いみると、あちらはその案で納得しているようでじっと私の顔を見つめている。

 しかし、愛人。……愛人かぁ。

 答えに困っている私に、レオニスさんはソファから立ち上がり私の側までくると、膝をつく。

 呆気にとられて固まる私の手を取ると、かさついた私の指先に一つキスを落とした。



「マリ。どうか私の恋人になってください」


 息をのむほどに美しい笑みと、大人の魅力あふれる色気に自分の頬が熱を持つ。

 真っ赤になっているであろう顔のまま、私はレオニスさんの言葉に頷いた。




 如月茉莉、三十歳。どうやら聖女召喚された異世界で、王弟陛下の愛人になるようです。

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