エピローグ
最終話です。
それから。私は伽羅を献上するにあたり王家への仲立ちをお願いする事でお父様と和解した。
練り香の売上とお父様からの融資(これはビジネスへの投資だ、と言われたわ)で蒸留器や燃料を調達してケイティ、アンナをはじめとした領民達と調香の配合に試行錯誤した。持ち運びに便利な線香も作ったわ。
スカイスクレイパー公爵家から仲介された商会の手数料や容器の費用がじりじり高くなって悩んでいたら。
アンジェリカから、なぜか鼻息荒く「お姉様ご所望の有能な人材です!」と王弟殿下のご子息のリチャード様を紹介されたの。以前から砂漠の国や東の国と交易を進めていたリチャード様は有能なビジネスパートナーになったわ。
センスのある容器を作る職人を紹介頂いたし。何よりリチャード様が連れてきた調香師の協力もあって、三年後にわが国初の香水の開発に成功したの。
他国には無かったイランイランやジャスミンを使った香水や線香は我が国の輸出商品の一つになったわ。
ラミー織もアルウッド領の主力産業の一つに育ち。
私はその功績もあってアルウッド伯爵に陞爵した。びっくりね。
アンジェリカは地獄の後継者教育をやり抜いた。そして、持ち前の美貌とセンスと社交力で見事、王妃様のお気に入りになった。
王妃様の親戚筋のハートフォード公爵家の三男を紹介して頂いて婚約したの。相性が良かったようで二人で仲良くスカイスクレイパー公爵家後継者として励んでいるそう。
あ、言い忘れたわ。アンジェリカは社交界の華として若きファッションリーダーとして認められつつあるのよ。あの子が公爵家の後継者になって良かったわ。やっぱり適材適所ってあるわね。地味な私ではできなかった事よ。
私はというと。最近、リチャード様に何かと構われている。
仕事と称しては頻繁にアルウッド領に来られるし。たまに王都の夜会に参加するとずっと側にいるし。
シゴデキ官僚をヘッドハントしてくれたり、近隣国で流行っている香水をサンプルだとおっしゃってプレゼントして頂いて助かってはいるけど。
なにこれ。王家のハニトラ?それともおもしれー女扱いなの?
―――王家としては香料事業は取り込みたいでしょうしね。それにレイモンド王子の事があるから。良い方だと思うのだけど、まだ信じきれないのよ。
私ね。今、アルウッド領の皆とわちゃわちゃ仕事するのが楽しくてたまらないのよ。一生やっても飽きないと思う。
伯爵家の跡継ぎ?元々従属爵位だし、アンジェリカの子どもが継げば良いじゃない?
何れにしても婚約者はお断りだわ!
最後までお読み頂きありがとうございます。




