石像
石像の震えは、次第に激しくなっていった。まるで、眠りから覚めようとしているかのように、ゆっくりと、しかし確実に動き始めたのだ。その動きは、鈍重で、威圧感に満ちていた。ギルドマスターは、緊張した面持ちで、私の演奏を見守っていた。 私の奏でる旋律は、聖域全体に広がり、石像に直接働きかけているように感じられた。それは、単なる音楽ではない。聖域と、石像、そして、私自身を繋ぐ、強力な力だった。 旋律が最高潮に達した時、石像は大きく揺れ動き、地響きのような音が響き渡った。そして、石像の目が、ゆっくりと開かれた。 その目は、まるで古代の王のように、威厳に満ちていた。しかし、怒りや憎しみは感じられなかった。むしろ、静寂と、深い悲しみを感じさせた。 「…貴様ら…何者だ…」石像から、低い、重厚な声が響き渡った。それは、まるで、何千年も眠り続けていた魂が、ようやく目覚めたかのような声だった。 「我々は、賢者の血を求めて、この聖域に来た者です」ギルドマスターが、勇気を振り絞って答えた。「あなたを敵とするつもりはありません。ただ… 賢者の血が必要なのです」 石像は、しばらく沈黙した。そして、ゆっくりと、首を横に振った。「…賢者の血…か… それは、この聖域の禁忌… 容易には、与えることは出来ぬ…」 「しかし、あなたも、この聖域を守る存在だと伺っています」私は、石像の目を見据えて言った。「私たちは、あなたを敵対するつもりはありません。この世界、そして、あなた自身の平安のために、賢者の血が必要なのです」 石像は、再び沈黙した。その沈黙は、長く、重く、私達の心を圧迫した。 そして、数分後、石像は口を開いた。「…ならば、試練を受けよ… 試練を乗り越えた者のみが、賢者の血を得る資格がある…」 石像の言葉と共に、聖域の奥深くから、不気味な光が放たれた。それは、試練の始まりを告げる、不吉な兆候だった。




