聖域
聖域の入り口は、まるで巨大な怪物の口のように、暗く深く裂けていた。冷たい風が、岩壁の隙間から吹きつけ、肌を刺すような感覚があった。ギルドマスターは、懐から小さなランプを取り出し、火を灯した。その微かな光が、薄暗い空間を照らしてくれる。
一歩足を踏み入れると、辺りは不気味な静寂に包まれた。鳥のさえずりも、風の音も、何も聞こえない。ただ、自分の心臓の鼓動だけが、耳に響いている。空気は重く、圧迫感を感じた。これは、単なる自然現象ではない。何か、この聖域全体を覆う、異様な力が働いているのを感じた。
「…気をつけろ、ミタム」ギルドマスターの声が、静寂の中で、ひときわ大きく響いた。「この聖域には、強力な魔力が満ちている… 油断は禁物だ」
私は、彼の言葉に頷き、周囲を警戒しながらゆっくりと歩を進めた。足元は、崩れかけた岩と、苔むした石で覆われていた。一歩間違えれば、奈落の底に転落しかねない。ここは、危険と隣り合わせの場所だ。
しばらく進むと、奇妙な植物が目に入った。それは、まるで人間の指のように、細長く伸びた植物で、地面から這い上がっていた。その植物の先端は、鋭く尖っており、触れると危険を感じた。ギルドマスターは、それを避けるように合図をした。
さらに進んでいくと、壁に奇妙な模様が刻まれていることに気づいた。それは、アトランティス文明の文字と酷似していた。しかし、完全に一致する訳ではない。一部の文字が異なっていた。もしかしたら、アトランティス文明の派生、あるいは、関連した別の文明の文字なのかもしれない。
「…これは…」ギルドマスターが、その模様を指さしながら呟いた。「アトランティス文明の文字に似ているが… 一部が違う… 何かの暗号か…?」
私は、その模様を注意深く観察した。その模様は、複雑で、一見すると無秩序に刻まれているように見えるが、何か法則性が隠されている可能性を感じた。不死の私でさえ、その奥深さには圧倒されるものがあった。
「…少し調べさせてください」そう言うと、私は模様に手を触れた。すると、私の指先から、微弱な光が流れ出し、模様を照らした。その瞬間、私の脳裏に、大量の情報が流れ込んできた。それは、まるで、模様が語りかけてきたかのような感覚だった。
その情報は、この聖域の歴史、そして、賢者の血についてのものだった。賢者の血は、この聖域の奥深く、眠る賢者の墓に存在するらしい。しかし、その墓には、強力な守護者が存在するという。そして、その守護者と対峙するには、特別な方法が必要らしい…
この聖域は、ただ危険な場所ではない。アトランティス文明の謎、そして、賢者の血を得るための試練の場でもあるのだ。




