指示
ギルドマスターの指示により、残りの部下たちが時間転移装置の準備を急いでいる。彼らの動きは、焦燥感と恐怖で淀んでいる。私も、心臓の高鳴りを抑えきれない。時間転移装置の起動は、これまで以上に危険な行為だ。失敗すれば、この世界全体が、あるいは宇宙全体が、時間軸の歪みに呑み込まれる可能性がある。無限本に書かれた手順をもう一度確認する。ウィルムの涙、古代遺物の一部、そして賢者の血。全ての材料は揃っている。しかし、それだけでは足りないものがある。それは、確かな知識と、正確な手順への理解だ。少しでも間違えれば、取り返しのつかない事態になる。
「…準備は…整いました…」ギルドマスターの声が、かすかに震えている。彼の顔には、恐怖と決意が入り混じった表情が浮かんでいる。彼は、時間転移装置の制御盤の前に立っている。彼の手に握られた、起動スイッチは、まるで運命の糸を握っているかのようだ。
私は、無限本を胸に抱え、時間転移装置を凝視する。その複雑な機械仕掛けは、まるで生きている生物のように、脈打っているように見える。装置から発せられる、かすかなエネルギー波動が、私の体に伝わってくる。それは、時間そのものの流れを感じさせるような、不思議な感覚だ。
「…では…」ギルドマスターは、深呼吸をして、スイッチに手を伸ばした。その瞬間、影が動き出した。まるで、私たちの行動を察知したかのように。影は、今まで以上に速く、激しく動き回り、部下たちを襲い始める。私は、古代魔法で影を攻撃するが、効果は薄い。影は、時間そのものの歪みであるため、通常の魔法ではダメージを与えることができない。
「…このままでは…間に合わない…」ギルドマスターは、絶望的な声で叫んだ。彼の顔は、青ざめている。
私は、状況を判断する。時間転移装置を起動させるには、影を完全に阻止する必要がある。しかし、今の状況では、それは不可能に近い。私は、ある決断を下した。
「ギルドマスター!装置を起動させてください!私が、影を引きつけます!」
私の言葉に、ギルドマスターは驚いた表情を浮かべた。「…何を言っているんだ!?」
「時間転移装置は、時間を操作する力を持っています。影は、時間の歪みです。ならば、その歪みを、装置の力で吸収するしかない!」
私は、無限本を強く握り締め、影に立ち向かう準備をする。これは、最後の賭けだ。私の命、そしてこの世界の命を賭けた、最後の賭け。




