朝日
朝日が差し込む書斎を後にし、私は再び古びた図書館へと向かった。図書館長である老魔法使いは、私を暖炉のある書斎へ招き入れた。芳醇な木の香りが漂う空間で、私は昨夜書き終えたばかりの、古代魔法文明に関する記述をまとめたページを彼に手渡した。
「館長、ご覧下さい。この禁書から得られた知見です。」
老魔法使いは、細かな字で埋め尽くされたページを、老眼の目を細めながらゆっくりと読み進めていった。時折、彼は深く頷いたり、眉をひそめたりしながら、真剣な表情で内容を理解しようとしていた。長い沈黙の後、彼はゆっくりとページを閉じ、私の方を見た。
「……これは…驚嘆すべき発見だ。蜜珠殿。貴殿の蓬莱人の血筋と、並外れた知性、そして、この二千年の歳月で培われた知識の蓄積がなければ、決して成し得なかった偉業だろう。」彼の声には、驚きと敬意が混じっていた。
「しかし…」彼は言葉を続け、少し憂慮の色を帯びた表情になった。「この古代魔法文明の力は、想像をはるかに超えるものだ。その潜在能力は計り知れないが、同時に、制御不能の危険性も孕んでいる。貴殿の再生能力も、その危険性を増幅させる可能性がある。」
私は、館長の懸念を理解していた。古代魔法文明の技術は、確かに世界を変えるほどの力を持つが、その力は両刃の剣でもある。
「承知しております。その危険性も、十分に認識しております。しかし、この知識を闇に葬り去るべきとは思いません。正しく理解し、制御する方法を見つけ出すことが、私の責務だと考えております。」
「そうか…。」館長は静かに頷いた。「貴殿の決意は理解した。だが、決して一人だけで抱え込んではならない。もし、困難に遭遇したら、いつでも私を頼るのだ。」
彼の言葉に、私は安堵感を覚えた。孤独な研究ではなく、信頼できる協力者がいる安心感。この知識を正しく扱うためには、多くの助けが必要になるだろう。 この図書館、そしてこの老魔法使いは、私にとってかけがえのない存在となるだろう。 私たちは、静かに、しかし力強く、古代魔法文明の謎を解き明かしていく決意を固めたのだった。