図書館長の住居
ギルドマスターと共に、私たちはまず図書館長の住居へと向かった。既に警察、いや、この世界では冒険者ギルドの調査隊が現場検証を終えた後だったとはいえ、空気は重く、静まり返っている。残されたのは、粉々になった水晶玉の破片と、幾つか散乱した古びた書物だけだった。ギルドマスターは、一つずつ丁寧に破片を拾い集めながら、呟いた。「…まるで、何者かに急襲されたようだな…」
私は、残された書物に目を向けた。それらは、図書館長が長年研究していた魔法の文献や、歴史に関する古文書だった。しかし、それらの中に、何かが足りない気がした。何か重要な手がかりが、この場所から消されているような感覚が、私の心に広がる。
「ミタム…何か、感じるか?」ギルドマスターが、私の様子を伺うように問いかけてきた。私は、頷いた。
「…何かが、隠されている…この場所に、何かが、残されている…」
私は、部屋の隅々まで注意深く観察し始めた。壁の材質、床板の隙間、家具の配置…全てに、私の目は光っていた。すると、書棚の背後、壁と書棚の僅かな隙間を見つけた。私は、慎重に書棚を動かそうとしたが、重くて動かない。
「ギルドマスター、手伝ってください」
ギルドマスターは、私の言葉にすぐに反応し、私と共に書棚を動かした。その奥には、小さな隠し扉があった。扉を開けると、薄暗い地下へと続く階段が現れた。
「…これは…」ギルドマスターは、驚きを隠せない様子で、階段を指さした。
私は、懐中電灯を取り出し、階段を下り始めた。ギルドマスターは、私の後をついてくる。地下空間は、湿気が多く、独特の臭いが漂っていた。そして、その奥には…
地下空間の奥には、小さな部屋があった。部屋の中央には、石の祭壇のようなものが置かれ、その上に、小さな木箱が置かれていた。木箱は、古びてはいるものの、丁寧に作られており、何やら重要なものが保管されていると直感的に感じた。
「…これは…」ギルドマスターは、息を呑んだ。
私は、慎重に木箱を開けた。中には、一枚の羊皮紙が折り畳まれて入っていた。羊皮紙を広げると、そこに描かれていたのは、複雑な魔法陣と、アトランティス文字で書かれたメッセージだった。
「…これは…時間転移装置の…起動方法か…」ギルドマスターは、震える声で呟いた。羊皮紙には、装置の起動に必要な手順、そして、必要な魔物の素材が記されていた。その中には、ウィルムの涙と、既に手に入れている古代遺物の一部が含まれていた。
「…つまり…図書館長は、この装置を使って、どこかへ行った…そして、歴史家も…」私は、そう確信した。 この羊皮紙は、図書館長が失踪した理由、そして、仮面の人物たちの目的を示唆している。この先にあるものは、想像を絶する危険を孕んでいるかもしれないが、私の探求心は、今まさに、新たな高みに達しようとしていた。




