風が唸る
風が唸り、地響きは私の鼓膜を震わせる。崩れ落ちる山肌から舞い上がる塵埃が、夕焼け空を赤黒く染めている。ギルドマスターは、私の傍らで、慎重に周囲を警戒している。彼の表情は、いつもの陽気さとは程遠く、真剣そのものだ。
「ミタム…あの記述…本当に大丈夫なのか?」
ギルドマスターの声は、不安を隠しきれていない。彼の不安は、私自身の不安と重なり合う。アトランティス文明の古代儀式…それは、無限本に記された、ほんの一節に過ぎない。その儀式の内容は曖昧で、具体的な手順は記されていない。必要な魔力、正確な知識…それらは、私にも、ギルドマスターにも、まだ完全には理解できていない。
私は無限本を再び開く。薄汚れた紙面には、複雑な図形と、それらを繋ぐ幾何学模様が描かれている。まるで、宇宙の構造図のようでもある。そして、その傍らには、音符のような記号が並んでいる。アトランティス文明の楽譜…だと、無限本には記されていた。
「あの楽譜…それが、創世の言葉を制御する鍵だと…」
私の呟きは、風音に消されそうになる。しかし、ギルドマスターは、私の言葉をしっかりと聞き取っているようだ。彼は、私の不安を理解しつつも、私に寄り添うように、ゆっくりと頷いた。
「ならば…やってみよう。ミタム。君を信じている。」
彼の言葉は、私の心に温かい光を灯す。彼の信頼、そして、共にこの危機を乗り越えるという決意。それは、私自身の決意をさらに強くする。
私は、無限本に書かれた楽譜を、注意深く確認する。その音符は、通常の音楽とは異なる、不思議な響きを持っている。それは、宇宙の法則を反映した、神聖な旋律のように感じられる。
私は、深呼吸をする。そして、アトランティス文明の竪琴を取り出す。ウィルムの涙から得た知識、そして、無限本に記された情報。それらすべてを、この竪琴の演奏に込める。
私の指が、琴弦に触れる。




