巨大な瞳
ウィルムの巨大な瞳は、私の奏でる旋律に吸い込まれるように見えた。その目は、怒りに満ちていたものの、徐々に穏やかさを増していくのが感じられた。 巨大な体からは、かすかな熱気が立ち昇り、周囲の岩肌を温めている。 その熱気は、まるで、古の時代の息吹を運んでくるようだった。
旋律はクライマックスへと向かう。複雑な音階が絡み合い、宇宙の調和を奏でる壮大な調べは、ウィルムの魂に直接語りかけているようだった。 竪琴から放たれる光は、ますます強くなり、ウィルムの鱗を照らし出した。 その鱗は、まるで宝石のように輝き、様々な色の光を反射していた。
演奏が終わると、静寂が訪れた。ウィルムは、私のすぐ前に鎮座し、その巨大な頭部をゆっくりと動かし、私を見つめている。その視線には、もはや怒りはない。 代わりに、深い悲しみのようなものが感じられた。
しばらくの間、沈黙が続いた。 風の音、遠くで聞こえる鳥のさえずりだけが、静寂を破っていた。
そして、ウィルムは、ゆっくりと口を開いた。 その声は、山脈の岩を震わせるような、低く重厚な響きを持っていた。
「…なぜ…こんなものを奏でる…?」
ウィルムの声は、驚きと、困惑が混ざり合ったものだった。 それは、まるで、何千年もの間、誰にも理解されずに生きてきた孤独な魂の吐露のようだった。
「私は…創世の言葉を探しているのです。そして…その言葉の一部が、あなたの中に眠っているのだと感じています」 私は、落ち着いて答えた。 無限本に書かれた記述、アトランティス文明の遺物、そして、図書館長や歴史家の失踪事件…全てが、このウィルム、そしてこの旋律と繋がっていると感じていた。
「…創世の言葉…か…」ウィルムは、ため息をついた。「遠い昔…その言葉を聞いたことがある…気がする…」
その言葉に、私は、かすかな希望を感じた。 ウィルムは、創世の言葉について知っているのかもしれない。そして、それが、ウィルムの涙、そして、図書館長や歴史家の失踪事件の謎を解く鍵となるのかもしれない。
ウィルムは、再び私を見つめた。 その視線には、まだ警戒心が残っていたものの、それ以上に、好奇心と、わずかな信頼が感じられた。
「…涙を…くれるか…?」 ウィルムの言葉は、まるで、問いかけではなく、懇願のように聞こえた。 その声には、深い悲しみと、絶望が滲んでいた。




