視線が交わる
ギルドマスターの視線と私の視線が交わる。沈黙が、研究室の荒廃した空間をさらに重くする。埃の舞う空気の中、アトランティス文明の謎、異次元への扉、そして時間軸の歪み…数々の断片が私の脳内で混沌と渦巻く。無限本は、その重みを感じるかのように、私の手にずっしりと響く。
「…さて、どうしますか?」ギルドマスターの声は、静かで、しかし確固とした意志を含んでいた。彼の言葉は問いかけでありながら、既に決意を秘めているようにも聞こえた。
私はゆっくりと立ち上がり、散乱した書物の中から、一枚の羊皮紙を拾い上げた。それは、他の書物とは異なり、綺麗に保存されていた。指先でそっと触れると、かすかな温もりを感じた。羊皮紙には、精緻な図形が描かれており、幾何学模様と、見慣れない文字が複雑に絡み合っていた。
「これは…アトランティスの文字…でしょうか?」ギルドマスターは、近づいてきて、羊皮紙を覗き込んだ。彼の知識の深さをもってしても、この文字を解読するのは容易ではないらしい。
「おそらく…です」私は羊皮紙を無限本に近づけた。すると、無限本のページが一枚めくり上がり、羊皮紙と同様の図形が、より詳細な解説と共に現れた。無限本は、まるでこの羊皮紙の情報を待ち受けていたかのように、素早く反応した。
解説によると、この図形は、アトランティス人が使用していた「時間転移装置」の設計図の一部だという。異次元への扉を開くための儀式と、この装置は密接に関連しているらしい。しかし、その装置の起動方法、そして、その危険性については、記述が途切れており、詳細は不明だった。
「時間転移装置…ですか…」ギルドマスターは、息を呑んだ。「もし、これが本当に機能するなら…危険すぎる…」
彼の言葉に、私は同意する。時間軸の歪みは、想像を絶する事態を引き起こす可能性がある。しかし、この装置こそが、図書館長と歴史家失踪事件の鍵を握っているかもしれない。アトランティス文明の後裔、仮面をつけた人物たちが、この装置を求めているのは間違いないだろう。
私は、無限本に記された断片的な情報を基に、装置の起動に必要な手順を推測し始めた。複雑な数式、特定の魔物の素材、そして、何より重要なのは、「創世の言葉」の一部を奏でること。
静寂の中、私とギルドマスターは、それぞれに思いを巡らせていた。この危険な道を進むのか、それとも、ここで引き返すのか。この決断が、私たちの運命、そして、この世界の未来を左右するだろう。




