消え去る
化身が消え去ると同時に、泉の水はゆっくりと透明度を取り戻していく。黒い瘴気は消え去り、代わりに清らかな香りが漂ってくる。枯れ果てていた植物も、再び生命力を取り戻し、緑色に輝き始める。聖なる泉は、その名の通り、再び聖なる場所へと戻ったのだ。
「やったわ、ミタム!深淵の呪いを打ち破ったのね!」サクラが喜びの声を上げる。彼女の顔にも、安堵の色が浮かんでいる。私は竪琴を下ろし、サクラに微笑みかける。
「ああ、これでエメラルドシティも救われるだろう」と私は答える。
しかし、安堵も束の間、泉の中心から再び異様な気配が漂ってくる。水面が激しく波打ち、黒い影が蠢き始める。
「まだ何かいるのか…?」私は警戒し、竪琴を構え直す。
サクラも魔法の杖を握りしめ、臨戦態勢に入る。
泉の中から現れたのは、小さな水晶だった。しかし、その水晶は、先ほどの深淵の呪いの化身よりも、さらに濃い瘴気を纏っている。水晶はゆっくりと空中に浮き上がり、私たちを見つめる。
「深淵の呪いは…終わらない…」水晶から低い声が響く。それは、まるで深淵そのものが語りかけているかのようだった。
「何…?」私は戸惑う。深淵の呪いは、先ほどの戦いで完全に消滅したはずではなかったのか?
「あれは…深淵の呪いの核…!」サクラが叫ぶ。「あれを破壊しなければ、深淵の呪いは再び力を取り戻してしまうわ!」
私は水晶に向かって、アトランティスの竪琴を奏でる。聖なる旋律が水晶にぶつかり、瘴気をわずかに押し戻す。しかし、水晶は微動だにしない。それどころか、さらに瘴気を増幅させているようだ。
「無駄だ…貴様の力では、私を止めることはできない…」水晶は嘲笑する。
私は歯を食いしばり、竪琴を奏で続ける。しかし、水晶の力は、私の想像を遥かに超えていた。私は徐々に疲弊していき、旋律も弱まっていく。
「ミタム…もう無理しないで…!」サクラが心配そうに私を見る。
私はサクラに首を横に振る。「諦めるわけにはいかない…エメラルドシティを、そしてこの世界を…深淵の呪いから守らなければ…」
私は最後の力を振り絞り、アトランティスの竪琴を奏でる。それは、私の魂の叫びであり、世界への祈りだった。
水晶は、その旋律にわずかに震え始める。そして、小さなひび割れが入り始める。
「今だ、サクラ!」私は叫ぶ。
私は杖を構え、詠唱を開始する。それは、これまでで最も強力な魔法であり、深淵の呪いを完全に消滅させるためのものだった。
私はサクラの言葉を信じ、水晶に最後の旋律をぶつける。




