エメラルドシティの城壁
エメラルドシティの城壁を抜け、私はサクラと共に聖なる泉へと急ぐ。城壁内の喧騒が遠ざかり、徐々に静寂が広がる。普段は市民の憩いの場であるはずの道も、今はどこか重苦しい空気に包まれている。
「何かがおかしいわね…」サクラが小さく呟く。
私も同じように感じる。空気が淀み、肌を刺すような感覚がある。周囲の草木も、どこか生気を失っているように見える。
やがて、聖なる泉が見えてくる。しかし、その光景は、私が想像していたよりもずっと深刻だった。泉の水は、まるで墨汁を流し込んだかのように黒く濁り、底が見えない。周囲には、異様な植物が群生し、禍々しい瘴気を放っている。その瘴気は、空気を震わせ、周囲の生命力を奪っているようだ。
「これは…酷い…」私は言葉を失う。
「まるで、深淵の呪いが再び現れたかのようだわ」サクラは、深刻な表情でそう言う。
泉のほとりには、エメラルドシティの兵士たちが数人立っている。彼らは、瘴気を防ぐために、特別なマスクを着けているが、その表情は疲弊し、不安げだ。
「ミタム様、サクラ様、お越しいただきありがとうございます」兵士の一人が、私たちに気づき、敬礼する。
「状況を教えてください」私は尋ねる。
「はい。泉の異変は、数日前から始まりました。最初は、水が少し濁る程度でしたが、日に日に悪化し、今では、ご覧のありさまです。原因を特定しようとしましたが、瘴気が強く、近づくことすら困難です」兵士は、困り果てた様子でそう説明する。
私は、泉の近くまで歩み寄り、その状態を詳しく観察する。水面からは、絶え間なく瘴気が立ち上り、鼻を突くような悪臭を放っている。また、泉の底からは、微かに不協和音が聞こえてくる。
「この不協和音…以前、水晶玉から感じたものと似ている」私は呟く。
「もしかしたら、深淵の呪いの影響が、まだ残っているのかもしれないわね」サクラはそう言う。
私は、アトランティスの竪琴を取り出し、聖なる旋律を奏で始める。竪琴の音色は、瘴気を打ち払い、泉の周辺に一筋の光をもたらす。しかし、瘴気はすぐに再び勢いを増し、竪琴の音色を打ち消してしまう。
「このままでは、埒が明かない…」私は、別の方法を試す必要があると感じる。私は、「創世の言葉」を使い、泉の浄化を試みることにする。
私は、「創世の言葉」を唱え始める。言葉は、空気を震わせ、泉の周辺に古代の力が満ち溢れる。しかし、泉の瘴気は、その力に抵抗し、浄化を拒む。
「くっ…」私は、力を込めるが、瘴気の抵抗は激しく、浄化は進まない。
私は、深淵の呪いの影響が、予想以上に根深いことを悟る。このままでは、エメラルドシティ全体が、深淵の呪いに飲み込まれてしまうかもしれない。
私は、サクラに告げる。「サクラ、私は、泉の深淵を直接調査する必要がある。何かあっても、私を援護してほしい」 サクラは、迷うことなく頷く。「ええ、わかったわ。ミタム、あなたの背中は、私が守る」 私は、深呼吸をし、覚悟を決める。泉に飛び込む。




