薄明りの書斎
薄明かりの差し込む書斎で、私は無限本を前に座っている。遺物は、私のすぐ手の届くところに置かれている。 滑らかな表面からは、微かに温もりを感じ、時折、かすかな振動が指先に伝わる。まるで、脈打つ生命体のように。無限本に書き込まれた文字、遺物から発せられる微振動、それらが互いに共鳴し、複雑に絡み合う感覚が、私の全身を満たしていく。
数時間、いや、もしかしたら数日、あるいは数週間が過ぎたのかもしれない。時間の感覚は、この研究に没頭するうちに、曖昧になっていく。 無限本に記されたアトランティス文明の記述、ウィルムの鱗の幾何学模様、オークの牙の傷跡…それらを遺物から感じる振動と照らし合わせ、私は様々な仮説を立て、検証し、また否定していく。
ふと、書斎の窓の外から、何かが近づいてくる気配を感じた。警戒しながら窓に近寄り、外を見下ろすと、一人の女性が立っているのが見えた。 彼女は、黒いローブを身につけ、フードで顔を隠している。その姿は、どこか神官を思わせる神秘的な雰囲気を漂わせている。
一瞬、警戒心が強まった。しかし、彼女の醸し出す気配には、敵意は感じられない。むしろ、静かな、そしてどこか物憂げな雰囲気が漂っている。
私は窓を開けた。「もしもし?何か用ですか?」と声をかけると、彼女はゆっくりとフードを下ろした。 見慣れない顔だ。しかし、彼女の瞳には、深い知性と、何かを深く理解しているかのような、静かな自信が宿っていた。
「蜜珠様…でしょうか?」彼女の低い、落ち着いた声が、夜の静寂を切り裂く。「私は、あなたが探しているもの…創世の言葉の一部を、知っている者です。」
私は驚きを隠せない。「あなた…一体?」
彼女はゆっくりと、そして慎重に話し始めた。「私は、この世界の…創造の、一部を担っている存在です。あなたは、長く、そして孤独な旅を続けてきたと聞きました。創世の言葉…それは、この世界、そしてあなた自身の存在の謎を解く鍵となるでしょう。しかし、その力は、恐るべきものです。あなたには、その力を制御できるだけの力があるでしょうか?」
彼女の言葉は、まるで深淵をのぞき込むような、重く、そして魅力的な響きを持っていた。 私は、彼女の言葉に、確かな真実を感じていた。 しかし、同時に、彼女の言葉に隠された危険性も、はっきりと理解していた。 この出会いが、私の研究、そして私の未来をどのように変えるのだろうか。まだ、何も分からない。だが、私は、この女性と、この世界の謎について、語り合わなければならないと感じている。




