館長
石畳の道をゆっくりと歩みを進めると、図書館が見えてきた。重厚な木の扉は、何百年も風雨に晒されてきたかのような古色を帯びている。扉の脇には、小さな窓あり、そこから薄暗い内部を覗き込むことができる。埃っぽい空気が漂っているのがわかる。深呼吸をして、私は扉をノックした。コツコツと、静かな音が響く。しばらくすると、中から低い声が聞こえた。「...誰だ?」 「蜜珠と申します。図書館長様にお会いしたいのですが」と、私は丁寧な口調で答えた。扉の向こうから、かすかな物音がしたあと、ゆっくりと扉が開かれた。現れたのは、予想通り、白髪蒼々とした老齢の魔法使いだった。鋭い眼光が、私をじっと見つめている。彼は、背筋を伸ばし、威厳に満ちた様子で言った。「蜜珠...か。噂には聞いておる。不死の冒険者、と」 「噂ほど大した者ではありません」と、私は軽く笑って答えた。「ただ、古代の魔法文明に興味がありまして...」
「古代の魔法文明...か」老魔法使いは、私の言葉を遮るように、顎を触りながら言った。「ならば、禁書を見せても良い。だが、その知識は、容易に扱えるものではない。責任を負えるか?」彼の言葉には重みがある。単なる好奇心で覗けるようなものではない、と彼は言っているのだ。私は、静かに彼の目を凝視した。「責任はもちろんです。私はその知識を正しく理解し、適切に活用いたします」と、私は真剣な表情で答えた。老魔法使いは、しばらく私の顔を見つめていた。やがて、彼の唇がわずかに動いた。「...わかった。ついて来い」彼は扉の奥に消えていった。私は、彼の後を追いかける。図書館の内部は、想像以上に広大で、無数の書棚が迷路のように連なっている。独特の、古い紙の匂いが鼻を突く。