新たな魔物
図書館長とギルドマスターの計らいで、私は新たな魔物の生息地へと向かう。ギルドから提供された馬車は、悪路にも耐える頑丈な造りだ。ギルドマスターは同行を申し出てくれたが、私は丁重に断った。この魔物、そしてその魔法の力は、私自身の研究に繋がる重要な情報源だ。邪魔はしたくない。 馬車は、森の奥深くへと進んでいく。周囲は、濃い霧に覆われ、視界はほとんど利かない。空気は、湿り気を帯び、どこか不気味な雰囲気に満ちている。時折、不穏な音が聞こえてくる。獣の咆哮か、それとも… 数時間後、馬車は目的地に到着した。そこは、深い谷の底にあった。谷底には、巨大な樹木が群生し、不気味な静寂に包まれている。空気が重く、魔法の力が渦巻いているのが感じられる。 ギルドマスターが事前に設置した結界の痕跡を確認し、私は慎重に谷底へと降りていく。霧の中を進むと、遠くから奇妙な光が確認できるようになった。近づいていくと、その光源が明らかになった。それは、新たな魔物だった。 その魔物は、巨大な翼を持つ、鳥のような姿をしている。しかし、その体は、鱗で覆われ、鋭い爪と牙を持つ。そして、その体からは、アトランティス文明のエンチャントと酷似した紋様が、複雑に刻まれている。魔物は、時折、その紋様から光を放ち、周囲の環境を操っているようだった。地面が揺れ、樹木が倒れる。 私は、遠くから魔物を観察する。その行動パターン、魔法の力の発動方法、そして、紋様の意味を分析する。無限本を取り出し、綿密なメモを書き留める。ウィルムの鱗やオークの牙の研究で培ってきた観察眼と分析能力が、今、最大限に発揮されている。 数時間後、ギルドマスターから連絡が入った。「ミタムさん、状況はどうですか?危険な状況であれば、すぐに撤退してください。」 私は、冷静に状況を説明した。「魔物は、強力な魔法の力を操りますが、まだ攻撃的な行動は確認していません。しかし、その魔法の力は、アトランティス文明のエンチャントと非常に似通っています。直接観察することで、そのメカニズムを解明できる可能性があります。」 ギルドマスターは、私の判断を尊重してくれた。「分かりました。しかし、危険を感じたら、すぐに撤退してください。あなたの安全が最優先です。」 私は、再び魔物に向き合った。夜が迫り、霧は更に濃くなっている。しかし、私の探究心は、夜闇を打ち破る光のように、強く輝いている。




