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蜜珠の禁書  作者: mutuminn
2部
16/255

自分の住処

図書館を後にして、私は自分の住処へと戻った。それは、古びたながらも趣のある小さな小屋で、長年の冒険で集めた様々な品々が散乱している。埃っぽい空気の中、私はオークの牙を手に取った。ギルドマスターから提供されたそれは、鋭く尖った形状をしており、未だ生々しい生命力を感じさせる。ウィルムの鱗の研究で得た知見を活かし、今度はオークの牙に焦点を当てて研究を進めることにした。


まず、無限本を開き、新しいページを用意する。ペンを走らせ、オークの牙の形状、大きさ、重さ、そして、その表面の細かな凹凸などを詳細に書き込んでいく。拡大鏡を使って、表面の紋様を丹念に観察する。ウィルムの鱗とは異なる、より原始的で力強いエネルギーを感じ取る。


数時間後、私はあることに気づいた。オークの牙の表面には、微細な傷が無数に刻まれている。一見するとランダムに見えるそれらの傷だが、よく見ると、一定のパターンを形成しているように思えた。それは、まるで、何らかの言語で書かれた暗号のようなものだ。


古代語の解読スキルを駆使し、傷のパターンを解読しようと試みる。ウィルムの鱗の時とは異なるアプローチが必要だと感じた。これは、より直接的な、力強いメッセージが込められているように思えたからだ。


日が暮れ、夜が更けていく。私は、オークの牙の謎に挑み続けた。そしてついに、夜明けが訪れる直前、私はその暗号を解読することに成功した。


傷のパターンは、オークの社会構造、そして、オークたちの歴史を記した、一種の記録だった。驚くべきことに、オークたちの祖先もまた、古代魔法文明と深い関わりを持っていたことが判明した。


その日の午後、私は図書館長を訪ねた。「図書館長、オークの牙の研究に新たな展開がありました。牙の表面の傷を解読した結果、オークの祖先も古代魔法文明と関わりを持っていたことが分かりました。」


図書館長は、私の報告に静かに耳を傾けた後、ゆっくりと頷いた。「なるほど…オーク、ウィルム…そして、人間。様々な種族のルーツに、古代魔法文明の影が潜んでいるとは…ミタム、君の研究は、この世界の歴史を塗り替える可能性を秘めている。」


彼の言葉は、私の胸に重く響いた。この発見は、単なる古代魔法文明の解明にとどまらない。それは、この世界の歴史、そして、そこに住まう全ての生き物のルーツを解き明かす、壮大な冒険の始まりだったのだ。

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