星一つ
意識が戻ったとき、私は漆黒の空間を漂っていた。星一つ見えない、無限の闇。先程の宇宙空間とは全く異なる、圧倒的な静寂が私を包み込む。 しかし、闇の中に、かすかな光が見える。それは、まるで、希望の灯火のように、ゆっくりと近づいてくる。光が近づくにつれて、その正体がわかる。それは、巨大な、そして美しい翼を持つ存在だった。漆黒の羽根は、闇に溶け込むように、そして時折、虹色の光を放つ。
「…貴方は…?」 声は、私の心の中に直接響いてくるように感じた。言葉ではなく、感覚として、理解できたのだ。
「私は、この宇宙の守護者の一人だ。貴方の奏でる音楽に導かれ、ここに来た」
守護者…宇宙の守護者? 私の竪琴の演奏が、この存在を呼び寄せたのか? 驚きを隠せない。
「貴方の奏でた旋律は、宇宙の歪みを感知した。そして、その歪みの原因である、この闇の裂け目を修復するために、私が現れたのだ」 守護者は、巨大な翼をゆっくりと広げ、闇の裂け目を指差す。そこには、確かに、空間の歪みを感じさせる、不自然な裂け目がある。
「修復…どうすれば?」
「貴方の持つ、創世の言葉の力が必要だ。その力を使って、この裂け目を塞がなければならない」
創世の言葉… 私は、アトランティス文明の竪琴を手に取る。 今まで、数えきれないほどの試練を乗り越えてきた。創世の言葉の力を理解し、アトランティス文明の竪琴を操り、宇宙の交響曲を奏でることで、幾度となく世界を救ってきた。 だが、今回は違う。この闇の裂け目は、これまでとは比べ物にならないほど、巨大で、そして、恐ろしい。
「…わかりました。私が、この闇を消し去ります」
守護者は、静かに頷く。 「だが、油断は禁物だ。この闇は、想像をはるかに超える力を持っている。貴方のすべての力を注ぎ込まなければならないだろう」
私は、深呼吸をする。 不死の身体を持つ私にとって、死の恐怖はない。 だが、この闇を前に、初めて、強い緊張感を感じている。 この闇の裂け目…この宇宙の傷を癒すために、私は、私の全てを捧げる覚悟だ。
竪琴の弦に触れると、私の指先に、宇宙のエネルギーが流れ込んでくる。 私は、今まで以上に、真剣な表情で、竪琴を奏で始める。 創世の言葉…宇宙の法則… 全てを込めて、この闇を消し去るための、旋律を奏でる。 そして、その旋律は、この無限の闇に響き渡っていく。




